第38話
「俺はまだ続けるけど、春名はどうする?」
時間を見るともう夜中の三時を回っていた。
普段なら寝てる時間だけど、ここまで来たら最後まで付き合うか。
「最後まで付き合うよ」
「本当か! ありがとう春名! あ、でもあんま無理すんなよ」
「わかった」
俺たちは樹海に向かう為に街中を駆けだした。
「ハルナ!」
「ん?」
門を出る寸前で誰かに呼ばれた気がして足を止めた。
「ハルナーー!」
声がする方に顔を向けるとそこには全身鎧の大盾士ベオルさんが手を振ってこちらに走ってくる。
「お久しぶりですベオルさん。今日は一人なんですか?」
周りを見てもグレンさん、エレナさん、ユリーナさんの三人の姿はなかった。
「さっきまで一緒に居たんだけどな」
「そうなんですか残念」
「そう言うハルナは一人なのか?」
「あ、俺は友達と一緒に樹海に向かうところです」
「友達? リアルのか?」
「はい。颯音ー」
俺は少し遠くで見ている颯音を手招きする。
「こちらベオルさん。クイーンアントの洞窟で一緒にパーティーを組んだメンバーの一人」
「颯音って言います」
「ベオルだ」
颯音とベオルさんは握手を交わす。
「もうベオルさんたちは新しいエリア行ったんですか?」
「ああ、海原に行ってみたんだが陸地がほとんど無くて、現状は船で移動する方法しかないのは不便だ」
「へぇー。船ってどうやって手に入れるんですか?」
「新エリアごとにはじまりの街みたいな街が存在していてそこの組合所でお金を払ってレンタルするか、自分で製作するかだな。まぁ今の所船を作れるプレイヤーはいないから前者しかない」
「船で海原を冒険……面白そう! なぁなぁ春名! 最初に行くの海原エリアに行こうよ!」
凄くキラキラした目で颯音が言う。
「うーん、特に決めてないしそうするか」
「よっしゃ!」
颯音はガッツポーズで喜ぶ。
「まぁその前にお前の装備の新調しなきゃだけど」
「そうだった!」
「素材を集めに行くのか?」
「はい。製作にサイレントバードってモンスターから取れる素材を取りに行くところです」
「そうか。暇だし手伝おうか?」
「え!?」
まさかの申し出に俺は驚いた。
プレイヤーカードの情報でベオルさんのレベルが35になっているは知っている。
高レベルの人がいれば素材回収も早くできて凄く助かるけど……
「本当にいいんですか? レベルも上がんないと思うんですけど……」
「気分転換だから気にしてないさ」
「分かりました、頼りにしてますベオルさん」
「任せろ」
一緒に樹海に行くことになってベオルさんと颯音はプレイヤーカードを交換した。
「え! ベオルさんのレベル35! すっげぇ!」
「二人もすぐに追いつくさ」
「本当ですか! しゃーやる気出てきた! 早く行こう春名! ベオルさん!」
ベオルさんが仲間になって門を出て樹海に向かう。
海原エリアで出会ったモンスターの事に着いて話を聞いていると直ぐに樹海に到着。俺はコガネとシロガネを呼び出した。
「二体目をテイムしたんだな」
「前に奪還したハニーワームが進化してハニービーになったんです。今はシロガネって呼んでます」
シロガネは飛んできて肩に捕まる。
「シロガネ、挨拶して」
「ビー!」
器用に足を上げて挨拶するシロガネ。良い子だ。
「ほう、あの時の幼虫が進化したのか……それに、コガネも大きくなったのか?」
「はい、さっき進化して」
「ほう……テイムって言うのはなかなか面白そうだな」
「春名だけずりぃ……俺も狼系のモンスターをテイムしたい!」
「運がよければできるよきっと」
「本当か?」
「多分……」
「多分かよ! そこは嘘でも言って欲しかった!」
「はいはい。それじゃ行きましょうベオルさん」
「ああ」
俺たちは樹海に突入した。
ベオルさんが先頭を進んでその次に颯音が続き最後に俺という隊列で目的地の場所に向かう。
ちなみにコガネは木を伝って付いてきて、シロガネは肩に止まったままだ。
今回はベオルさんがいることで俺は盾を弓に変え遠距離に回る。まぁ臨機応変に対応するけど基本的に弓を使う予定だ。
サイレントバードのレベルは低いしさっさと集めてしまおう。