第34話
ログインすると街の中心から伸びている列が視界に入った。この列の人たちはもうレベル20なんだな。
その光景をみていた颯音が呟く。
「俺たちも早く行きたいな」
「俺はもうすぐで行けるけど」
五人組の盗賊との戦闘で俺はもうすぐレベル20になる。コガネはレベル21で進化条件はまだ達成していない。あと少しみたいだからできれば今日中には達成させたいけど、無理強いもよくないし気長にやろう。
ちなみにシロガネはレベル5まで上がって新しいスキルはなし。
「さ、レベル上げに行こう!」
「はいはい」
俺と颯音は人波を逆らって門に向かいそのまま森に向かった。
森の入り口に着いた俺は足を止めた。
「なんか雰囲気変わってない?」
「確かに……前はどちらかというと森林だったけど、今は樹海って表現があってる気がする」
アップデート内容には名前が変わることしか書いていなかったはず。てことは、知らせがないアップデートか。
周りを見ると俺と同じく戸惑っている人たちがちらほらと見かける。すると、パーティーの一つが樹海に入っていくと、それに釣られて他の人たちも入っていく。
「春名、俺たちも行こう!」
「わかった。その前にコガネ、シロガネ」
俺は二体の仲間を呼び出す。
呼び出したコガネは頭に乗っかり、シロガネはマントのフードの中に入った。
シロガネの行動は意外だったけど、重くないから気にしないことにした。
樹海に足を踏み入れてみるとそこはまるで別世界だった。
大木のせいで日の光があまり入らないのか薄暗くじめっとしていて太い幹の道がかなり入り組んでいた。
「以前の面影一切ないのな」
「ここまで変わってるなんて……コガネ悪いけど木の上から状況を見たいから【共鳴】を使って欲しい」
「シュ」
頷いたコガネは光の粒子になり武器に吸い込れ特殊な革手袋に変わる。
「シロガネ、すぐ戻ってくるから颯音とお留守番してて」
「ビー」
シロガネはフードから飛び出し颯音の回りを飛び回る。
俺はワイヤーを伸ばして太い枝に括り付けて一気に上昇。そのまま絡み合う枝を掻き分け大木の頂上に辿り着くとインベントリから双眼鏡を取り出して辺りを見渡した。ちなみにこの双眼鏡は颯音に街案内した時に購入したものだ。
双眼鏡越しに見えたのは崖は消え去りどこまでも樹海が続いていた。
そのせいで丘は隠れどこにあるか見えない。それと、クイーンビーが居る大木も分からなくなってしまった。
完全に新しいフィールドだ。困ったな……
『ハルナ! 後ろ!』
「え?」
後ろを振り向くと巨大な鳥の顔がすぐ近くまで迫っていた。
俺は咄嗟に腕を十字に構え衝撃に備えたけど上空にぶっ飛ばされた。
「やばっ!?」
俺はワイヤーを伸ばして近くの枝に括り付けて無理やり方向を変えて絡み合う枝の中に飛び込んだ。
『ハルナ! 怪我は!?』
木を背に呼吸を整えているとコガネが声を掛けてくる。
「体力が半分くらい減ったけど大丈夫」
『そう……油断し過ぎ!』
「そう言われてもな……羽ばたきしている音が全然しなかったんだよな」
俺は身を潜めて襲ってきたモンスターを確認する。
体格がかなり大きい鳥のモンスターの名前はサイレントイーグル。レベルは30……高レベルだな。名前からして音を消すスキルを持ってそうだ。
サイレントイーグルは上空をぐるぐると旋回したあと遠くの方に向かって飛んでいった。
「いつか倒してやるからな。戻ろうコガネ」
後ろ姿のサイレントイーグルに向かって俺は宣言してから颯音の所に戻った。
木の上から降りるとコガネが武器と分離して頭の上に乗る。
俺を見つけたシロガネが飛んできて体をこすりつけてきた。
「ただいま、シロガネ」
「ビー」
「おかえり春名。どうだった?」
俺は上で起こったこと見たものを話した。
「なるほどな。そのクイーンビー探すときは俺も手伝うよ」
「そん時は頼むわ。こっちはなんか問題はあった?」
「ゴブリンが数体襲ってきたけど、シロガネと一緒に蹴散らしたぜ」
颯音の話しを聞いてシロガネのステータスを見るとレベルが上がって6になっていた。
「よくやったぞシロガネ」
俺はシロガネの頭を撫でて褒めた。
「そろそろレベル上げ行こうぜ」
「はいはい」
颯音に催促され樹海の奥に俺たちは進んだ。