第33話
――ピンポーン。
チャイムの音で目を覚ました俺はスマホを手を伸ばし時間を見た。朝の九時……
結局昨日は夜中二時までやって、その後ログアウトして兄ちゃんに朝飯いらないってメモも残して直ぐに寝たけどまだ寝たい。
荷物が届くかどうかは兄ちゃん言ってなかったし、誰だよ朝から……
玄関に向かおうとベットがから降りると玄関が開く音がする。兄ちゃんが出てくれたみたいだし寝よう。
俺はベッドに横になり瞼を閉じた。
「春名、客だぞ」
渋々瞼を開けベットから起きてドアを開けた。
「あ、はよー春名。凄い寝癖だな」
そこには夜中まで一緒に遊んでいた颯音の姿があった。
俺は無言で閉めベッドに飛び込んだ。
「春名、無言で閉めるのは酷くない?」
扉を少し開け顔を覗かせる颯音に睨んだ。
「颯音、朝飯は食べたのか?」
「うん。食べたよ」
「パンケーキ食べるなら作るけど食うか?」
「え、良いの! やった! 冬真兄の作るのどれも美味いから楽しみ!」
「春名も食べるなら起きろよな」
二人は部屋を出ていく。俺は軽く溜息をついてから起き上がり洗面所に向かって顔を洗って寝癖を直してからリビングに向かった。
兄ちゃんはキッチンに立ち颯音はソファで座っている。俺は颯音の隣に座った。
「こんな朝に来るなよ……」
「あはは……ごめん。ちょっと昨日の興奮が収まんなくて来ちゃった」
「あっそ」
テレビを見ながら待っているといい匂いが漂ってきた。
「出来たぞー」
俺と颯音はテーブルの方に移動して出来立てのパンケーキを食べた。
作り終わった兄ちゃんは部屋に戻っていった。
「春名、今日大型アップデートのメンテあるの知ってた?」
「へぇー、メンテあるんだ。何時から?」
「十二時から夜の六時までだったかな。新しいエリアが増えるって」
「ふーん」
そう言いながら片手でスマホを弄り調べる。
増えるエリアは海原、雪原、火山、沼地、砂漠の五つのエリアだ。それに伴って今までの所を樹海エリアって名前に変わるようだ。それと、それぞれのエリアでしか出てこないモンスターも追加されるみたい。早く行ってみたいな。
各エリアの行き方は、街の中心に転移門が設置されるようでそれを使ってそれぞれのエリアに行けるらしい。ただ、レベル20からの制限があるから最初から行けない仕様。俺はもう少しで行けるけど颯音はまだ行けないな。まぁゆっくりでいいか。
「新しいエリア早く行きたいな」
「そうだな。で、それまで何すんだよ」
颯音は立ち上がり玄関に向かって鞄を抱えて戻ってきた。
「春名、勉強教えてほしい」
「嫌だ」
俺は即答する。
「お願い! 一生のお願いだから! 次の期末テストでいい成績を取んないと没収されちゃうんだよ!」
興奮して来たのは嘘でこっちが本命か。
「なるほど……大変だな。頑張れ」
「そんな!」
颯音は突然土下座をし始める。
「嘘を言ったのは謝ります。だからお願いします。勉強を教えてください」
俺は軽く溜息を吐く。
「わかったよ。ただし、教えるのは得意な教科だけだからな。後は自力でやれよ」
「ありがとう、春名!」
「抱きつくな!」
抱きつく颯音を引き剥がす。
「道具持ってくるから準備してて」
「おう!」
俺は食器を下げて部屋に戻って勉強道具一式持ってリビングに戻って勉強を始める。
色々と颯音に質問されながらも黙々と勉強をしていると時間が大分経っていてメンテが終わる一時間前だった。
俺はペンを置いて背伸びをする。
「夕飯作るけど食べて行くか?」
「あ、うーん……ちょっと電話してみる」
「了解」
俺はその間に勉強道具を部屋に片付けてからキッチンに立つ。冷蔵庫を開けて鶏むね肉を見つけた。
今日は唐揚げでいいかな。
「春名、夕飯食べて行くよ」
「はいよ」
夕飯を作っていると兄ちゃんも部屋から出てきてテーブルに着く。
出来上がったのを運び三人で夕飯を食べる。
「颯音、明日も休みだし泊まって行けば?」
食べていると兄ちゃんが颯音に泊って行くか提案する。
「良いの! 母さんに聞いてみる!」
颯音は電話しに席を離れた。
「後で布団出すから運んでおいて」
「はーい」
颯音は直ぐに戻ってきて嬉しそうな顔をしていた。
泊まり決定だな、これは。
食事を終えた俺は兄ちゃんの部屋から布団一式を運び床に置く。広げるのは寝る時でいいか。
「春名、春名。じゃーん!」
颯音は鞄からヘッドギアを取り出して見せてくる。
「用意周到だな」
「一つのゲーム機から二人までは同時にログイン出来るから時間あればやりたいと思って持ってきてたんだよ」
「それじゃ風呂入ってからやるか」
「おう」
さっさと風呂を済まして俺と颯音はログインをした。