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第32話

「なんでここにクイーンアントの卵があるんだ?」


『ハニービーたちに洞窟を偵察させたらもぬけの殻で最奥の部屋にポツンと置いてあったんだって』


 それで、とコガネは続けた。


『生まれてくる子供に罪はないとクイーンビーが回収したけど孵化させる方法が分からなくてハルナに任せたいって』


「そう言われてもな……俺も分かんないだけど」


「ビィー!」


 クイーンビーはシロガネに手を振って大木に帰っていった。


『任せたって』


「そんな無茶な……」


「キュ?」


 首を傾げて見上げてくるシロガネの頭を俺は優しく撫でた。

 俺は地面に置いたクイーンアントの卵に視線を向ける。これどうやって持って帰んだよ……

 インベントリに入るか試したら難無く収納出来た。

 手で持って帰んなくて一安心。

 孵化させる方法か……全く思いつかない。ヴェルガにあったら相談してみるか。


「キュウ……」 


「どうした?」


 お腹辺りをさすって口をパクパクさせるシロガネ。蜂蜜が飲みたいみたいだな。

 ちょうど満足度のゲージもマックスになるし蜂蜜をあげよう。


「ゆっくり飲むんだよ」


「キュウ!」


 俺は腰を下ろしてシロガネを観察。満足度のゲージも順調に上がってるし待ってよ。

 いつの間にか武器から離れたコガネと一緒に見ているとシロガネは蜂蜜を飲み終わった。

 満足度のゲージもマックスになって進化という文字がでかでかと表示された。

 これで進化できるみたいだな。


「シロガネ、進化できるみたいだけどどうする?」


「キュウ?」


 ……言葉が通じてない。こういう時はコガネの番だな。

 俺はコガネに視線を向けるとやれやれと言いたげな表情でシロガネに伝えてくれて、シロガネは凄い勢いで頷いた。


「じゃあ進化させるね」


 俺はでかでかと表示されている進化を押した。

 すると、シロガネから激しい光が放たれ姿がどんどん変わっていく。光が収まると黒と黄色の腹部に左右二枚の翅を持ち、胸部には薄くて白色の毛が生えていた。

 シロガネはハニーワームからハニービーに進化して新しくスキルも覚えていた。

 使えるスキルは飛ぶことが可能になる【飛行】。低確率で相手を毒にする針を飛ばす【毒針】。近くの花から蜜を集める【蜜集め】の三つだ。

 飛ぶのにスキルが必要だと思わなかったけど、あとはなんとなく予想していたスキルだな。

 シロガネのステータスを確認していると翅を動かして舞い上がり俺の周りを飛び回った。

 お、早速【飛行】のスキルを使ったな。


「おめでとうシロガネ」 


「ビー!」


 飛びながら体をこすりつけてくるシロガネ。毛が当たってくすぐったい。

 ここでの用事も終わったし颯音の所に戻ろう。俺は颯音にメッセージを送った。


「颯音、今から戻る――」


『春名! 早く戻ってきてくれ!』


「お、おう」


 俺は急いでメニュー画面を開いて颯音のプレイヤーカードを選択して転移する。視界が一瞬暗転するとボロボロになって膝をついている颯音を五人組の男性が囲っている光景が視界に入った。


「誰だおめぇ?」


 柄の悪そうな人が尋ねてくる。盗賊って名前が見えるということはこいつらモンスターみたい存在か。

 人型なのはちょっと気が引けるけど、友達がやられては話しは別だ。


「そいつの友達ですけど? 颯音どういう状況だ、これ?」


 俺は盗賊を無視して颯音に尋ねた。


「レベル上げしてる時に急に襲われたんだ!」


「襲われたなら逃げろよな!」


「そんなことしたら今度は他の人が襲われるんだろうが! だから俺が――」


「お前がやられたらどうしようもないでしょうが……」


 俺は深く溜息を吐いた。


「俺様達を無視してんじゃねぇ!」


 五人組は武器を構え俺を囲んだ。


「ビー!」


 シロガネは鳴いて威嚇する。本気で威嚇しているんだろうけど、あんま怖くなし、寧ろ可愛いんだが。


「シロガネあんま無茶しない――」


「ビー!」


 シロガネは針を飛ばして攻撃し始めた。


「なんだこの虫は! 鬱陶しい!」


 レベル1のシロガネの攻撃は全然効いていないけど、ちょこまかと飛ぶシロガネに敵の視線が集まって隙だらけだ。

 俺は目線を颯音に向けると、察した颯音は駆け出し、盗賊の一人の横っ腹に一撃を食らわせ吹き飛ばした。


「なんだ!?」


 更に隙を晒した盗賊たちにコガネは【ねばねばの糸】を使い動きを止めた。


「みんなで総攻撃だ!」


 俺は盾を回転刃に変え一人を斬り倒し、コガネは噛みついて四つのスキルを使ってエグイ倒し方をする。

 颯音は盗賊を上空に蹴り上げ空中コンボを決めて倒す。残りの一人はシロガネと一緒に倒して盗賊たちは消滅した。


「春名!」


 俺は少しだけ力を込めて颯音とハイタッチを交わす。


「痛った! なんで力を入れるんだよ!」


「少しは反省しろ。俺が来なかったらやられてたんだぞう」


「そりゃ……そうだけど……春名は来てくれるって信じてたから」


「……」


 俺は心の底から溜息をついた。


「疲れたから帰る。コガネ、シロガネ帰るよ」


 シロガネに持ち上げられて飛び回っているコガネを呼び戻す。


「ええ! もう帰んのかよ! もう少しだけやろうよ!」


 俺は颯音の言葉を無視して街に向かって歩き出した。




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