第3話
ゴブリン二体を倒したことでレベルが上がりレベル2になった。それとSPが[2]手に入った。
SPとは新しいスキルを習得する時と今持っているスキルを強化する時に消費して使うポイントだ。
スキル関係はメニュー画面にあるスキルツリーって所から割り振れる。とりあえず【トランス】に[1]振って、残りは新しいスキル【バリア】に振って習得した。
【バリア】は二十秒間魔法防御力を上げる効果だ。これで、魔法系の攻撃も防げるようになるだろう。
SP振りしながら街に向けて歩いていると木の下でしゃがみ込んでいる人を見かけた。
俺と同じく初心者用の初期装備をしていて傍らに大きい筒状の大砲?みたいなものが転がっていた。よくわからない武器を持っているけど初期装備ってことは始めたばっかの人だよな。
「どうかしました?」
声を掛けるとしゃがみ込んでいた人は顔を上げた。
ショートボブのような髪形に整った顔立ち。少し大人の雰囲気がする。こういう人の事を美人って言うんだろうなと俺は内心思った。
「あ、あなたは?」
目元を見ると少し涙跡があった。
「ハルナっていいます」
「私は……モレルです」
「モレルさんですね。なにかありました?」
モレルさんは恥ずかしそうに口を開く。
「実は……迷子になってしまって……」
「あー……なるほど……マップ機能使えば街に行けると思うんだけど」
「マップ機能?」
あ、この反応は本気で知らないみたいだな。
俺は隣に座り分かりやすくモレルさんに色々と説明した。物凄く感謝されてしまった。
一人にさせるのも心配だと思った俺はモレルさんに提案した。
「俺も街に行くから一緒に行きません?」
「いいの!? わあ、心細かったから嬉しい!」
「それじゃ少しの間だけどよろしくお願いします、モレルさん」
「うん! よろしくねハルナ君!」
モレルさんは快く承諾してくれて一緒に街に向かうことになった。
隣で歩くモレルさんにさっきから気になっていることを尋ねた。
「その肩からかけているのって武器ですよね?」
「これ? うん、私の武器。試作品大型銃って言うんだ」
「試作品大型銃?」
初めて聞く名前に思わず復唱してしまう。
「簡単に言ったら持ち運びできる大砲かな」
「大砲なんだ、それ……」
大砲を片手に持ってる美人って……なんか凄いな。
「持ってみる?」
「え、それじゃ……重っ!!」
女性のモレルさんが軽々に持っていたから大丈夫だろうと思っていたけど全然持ち上げられなかった。
「よく持てますね、これ……」
「多分、私のジョブ……砲撃士のおかげかな」
よいっしょっと声を出して軽々と持ち上げるモレルさんを見て少しだけ落ち込んだ。
「あ、ハルナ君! 森抜けますよ!」
モレルさんが指差す方を見ると草原が広がっていた。
「もう少しみたいだから、行こうハルナ君!」
モレルさんに手を引かれ俺達は街に向けて走り出した。
しばらく走ると街の外壁が見えてくる。
人が並んでいる列を見つけ、俺とモレルさんは最後尾に並んだ。
前方を見ると俺と同じく初期装備のプレイヤーも並んでおり、他には大きいリュックサックを背負っているNPCや荷馬車に乗っているNPCなど様々な人達がいた。
モレルさんと話しながら順番を待っているとようやく俺達の番が回ってきて門兵の所に行く。
「ようこそ、はじまりの街へ! プレイヤーの方達ですね。こちらをどうぞ」
若めな門兵の人からカードみたいなのを渡された。
受け取るとカードは光の粒子になり体に取り込まれた。
様子を見計らって門兵が口を開く。
「今、渡したのはプレイヤーカードと言います。他の人に自身のステータスやスキルを見せることが出来るカードです。勿論、見せたくない所は隠すこともできますのでそこは安心してください。それと、お互いにプレイヤーカードを交換するとフレンド登録が行われログイン状況も確認できますし、遠く離れていてもメッセージを送ることもできて、パーティーも組めます。また、フレンド登録した人とパーティーを組んでいる間はお互いの所を行き来が出来るようになる転移が使えます」
「なるほど」
「説明は以上になります。他に聞きたいこととかありますでしょうか?」
「俺は特にないです」
「私も特にないかな」
「他にも分からないことがあればいつでも聞きに来てください!」
仕事熱心な門兵に一礼してから俺とモレルさんは街に入った。
木造の建物が建ち並ぶ街中、零時前なのに結構なプレイヤーがいた。
その時、モレルさんに肩をトントンされた。
「ハルナ君、今日はありがとね。おかげで助かったよ」
「ううん、気にしないで。それじゃ俺、そろそろログアウトしますね」
「うん、わかった。あ、ハルナ君! 私とフレンド登録しない?」
「俺とですか? 構いませんけど」
「やった! はい、これ私のプレイヤーカード」
モレルさんのプレイヤーカードを受け取り、俺のプレイヤーカードをモレルさんに渡した。
「それじゃまた」
モレルさんに手を振って俺はログアウトした。