第27話
ログインした俺は頼まれた蜂蜜を届けに串焼き屋に向かう。結構時間が経っちゃったけど大丈夫だよな。
串焼き屋は少し列が並んでいるけど、大量購入は避けて蜂蜜だけ届けるか。俺は最後尾に並んで順番を待った。
「おじさん、お待たせしました」
「おお! 昨日来なかったらかなり心配したぞ!」
「すいません、時間がギリギリだったのもので。はい、これ。頼まれていた物です」
インベントリから葉っぱで出来た容器に入っている蜂蜜を数個渡す。
「おお、こんなに! ありがとよ!」
店主は嬉しいそうに受け取って木箱に仕舞った。
「ほれ、これが報酬だ」
店主はお金を渡してくるが俺は断った。
「すいません。お金はいらないので、その分串焼きをください」
「珍しい奴だな。了解した」
直ぐに店主はどんどん焼いてくれて出来立てほやほやの串焼きが入った袋を何故か三つ渡された。
そんな金額じゃなかったと思ったけど……
「サービスだ」
「おじさん、ありがとう! また来るね!」
「ちっこいのにもよろしくな!」
「はい!」
袋を抱えて俺は人波を抜けて大通りを進んで行く。
ようやく抜けて右に曲がろうとしたら人とぶつかる。
「ご、ごめんなさい!」
「お前! こんな所に居たのか!」
「はい?」
顔を上げるとそこには訓練場で出会ったガイウスさんだった。
「いくら待ても来ないと思ったら、こんなところで油を売って……訓練場に来い!」
「え、ちょっ!」
ひょいと持ち上がられ肩に乗せられた。
俺そんなに重くないと思うけど、ガイウスさん力強いな。
てか、この状況少し恥ずかしいんだけど……
「あの、ガイウスさん。俺行くとは言いましたけど、いつ行くか言ってないと思うですが……」
そう言うとガイウスさんの足が止まり俺を下ろしてくれた。
「……俺が勝手に勘違いしていたようだ、すまない」
「俺もちゃんと言ってなかったのもありますし、気にしないでください。今そんなにソウル溜まってないから数発しか撃てませんけど予定もないし訓練場行きますよ」
「おお、そうか!」
俺はガイウスさんと共に訓練場に向かった。
訓練場に着いて利用料を払おうとしたけど、ガイウスさんが迷惑をかけたからって言って無料にしてくれた。少し得した気分だ。
部屋に入った俺は前回と同じく木製の人型の的に武器を弓に変形させて数発放つ。
クイーンアントの洞窟で大分使い込んだからか補正なしでも当てれるようになったな。
「こんな感じなんですけど、どうでした?」
「なかなか面白いな。弓系のスキルは習得できるのか?」
俺は首を横に振った。
「あくまで盾職ってことなのだな。ふむふむ。色々と参考になった。ちと用事を思い出したから俺は出ていくけど、好きなだけこの部屋を使っていいぞ」
「あ、はい」
ガイウスさんは部屋を出ていく。
この部屋使っていいのか、なら色々と後回ししていたことをやろっと
「コガネ、シロガネ」
俺はコガネと新しく仲間になったハニーワームのシロガネを呼び出した。
「はい、コガネ」
インベントリから串焼きが入った袋を渡すとコガネは嬉しいそうに袋の中に顔を突っ込んだ。
コガネはこれでいいとして、シロガネも食うのかな?
試しに一本を差し出してみると匂いを嗅ぐけど食べようとしなかった。
幼虫だから食えないのかな。あとインベントリにあるのは……蜂蜜だけか。
蜂蜜をあげてみるとシロガネは美味しそうに飲んでくれた。
「美味しいか?」
「キュ」
二体が食事している間に俺はSP振りした。
クイーンアントの洞窟でレベルは17まで上がった。獲得したSPは[8]。
今回俺は三つの新しいスキルを取ることにした。
一つは相手の敵視を全て自分に向けるスキル【挑発】。これは一体にしか使えないのが欠点だけど、それを補うために広範囲にいるモンスターの敵視を全て自分に向けるスキル【咆哮】も一緒に取った。
三つ目は【鋼の体】。クールタイムが長くて効果時間が短いけど、ノックバックと引き寄せを無効化してくれるスキル。
どれもべオルさんの戦い方をみて、必要だと思ったスキルたちだ。
三つのスキルを取ったことで残り[5]。今取ったスキルに[1]ずつ振って、残りは【ラウンドシールド】でいいかなぁ。
よし、次はシロガネのステータスだな。コガネは後回しだ。
次回更新8/10予定です。