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第263話

「グレンさん、エレナさん。お待たせしました」


 外に出ると地面に倒れ込んでいる海賊たちが視界に入る。二人も倒さずに体力を残しているな。


「おう。そっちも終わったようだな」


「こいつらは警備隊に渡せばいいとして、子供たちはどうしましょうか」


「その子たちはなんなの? もしかして、誘拐されたとか?」


 エレナさんの鋭い考えに俺は頷く。


「親御さんのところに送り届けたいけど……」


「俺たちじゃ限界があるぞ」


「そうですよね……」


「警備隊を呼ぶついでに聞いてくるわ。その間、子守り頼むぞハルナ」


「あ、はい。行ってらっしゃい」


「ほら、エレナも行くぞ」


「えええ!? 一人で行きなよ!」


 そう文句を言いながらもエレナさんはグレンさんについて行った。

 後ろを振り返ると子供たちはへたり込みお腹を抱えていた。そして、ぐうっと可愛い音が聞こえてきた。

 俺はインベントリから串焼きが沢山入っている袋を取り出した。


「いい匂い……」


 涎を垂らして子供たちが見てくる。


「はい、みんなの分あるからちゃんと分けろよ」


「うん!」


 子供たちに渡すとちゃんと分け合って串焼きを美味しそうに食べる。

 食べるペースが速いな。結構お腹空いていたんだな。


「まだまだあるから、ゆっくり食えよー」


 子供たちは夢中で食べていて俺の声が届いていない。まぁ足りなかったら俺のところにくるでしょ。

 そこら辺に転がっている海賊たちを一か所にまとめて、近くの建物を背に座ると、隣にウィルも腰かけた。


「ハルナさん、この街以外に街ってあるんでしょうか」


「うーん、無いと思うけど、ウィルの件もあるしな。俺らプレイヤー側が見つけられていないだけで実はある!ってな感じかな」


 実際はまだ実装されていないだけだと思うけど。


「てか、その質問してくるってことは子供たちとなんか関係している感じなの?」


「はい……こことは違う街から連れてこられたそうです」 


「なるほどな」


「あの子たちは家族の元に帰れるといいけど……」


「きっと帰れるよ。ウィルも」


 少し寂しいそうなウィルの頭を撫でると子供たちが駆け寄ってくる。


「お兄ちゃん! お肉おかわり!」


「はいはい」


 群がる子供たち一人一人に串焼きを上げると俺が持っていた在庫はなくなってしまった。また買い行かなきゃな。

 子供たちと遊んでいると警備隊を連れてグレンさんとエレナさんが戻ってきた。


「待たせたな、ハルナ。事情を説明したら子供たちの世話も警備隊がしてくれるそうだ」


「よかった……」


 安堵していると警備隊の一人、少し装備が豪華な人が前に来る。


「警備隊隊長のスーヴェニアだ。此度は街に侵入した海賊の撃退感謝する。誘拐された子供たちは我らにお任せを。海賊たちを連れて行け」


 隊長が指示を出して海賊たちを連行していく。


「では、子供たちを」


「あ、少しだけ時間をください」


「わかった。準備が出来たら声を掛けてくれ」


 俺は子供たちを呼び集める。


「あの人たちが家に送ってくれるって」


「「本当!?」」


 子供たちは俺の言葉を聞いて喜んでいると、一人の子供が呟く。


「もうお兄ちゃんにはあえないの?」


 どういうか考えているとウィルがその子の前でしゃがんで言う。


「いつになるか分からないけど、今度は僕の方から会いに行くよ」


「本当? やくそくだよ」


「うん、約束……」


 ウィルと茶髪の子供が指切りを交わすと、その光景を見ていた他の子たちも指切りを交わしたく列が出来る。

 終わったのを見計らって隊長に話しかける。


「お待たせしました。子供たちのことをよろしくお願いします」


 子供たちが去っていくのを見届けるとエレナさんが言う。


「グレン、そろそろログアウトしないと明日遅刻するよ~」


「え、もうそんな時間か……ハルナ、明日の打ち上げパーティーはお前の所の拠点で大丈夫でも構わないか?」


「あ、はい。大丈夫かと」


「よし、決まりだ。それじゃあ先に落ちるぞ」


「またね~ハルナ、ウィル」


 グレンさんは急いでログアウトして、エレナさんも後を追うようにログアウトした。

 俺はまだログインしているモレルさんとルーシャさんに明日のことをメッセージで伝えた。

 颯音と海都には後で連絡しよう。


「俺たちも帰るか」


「そうですね。帰りましょう、僕たちの家に」


 桟橋に歩いて行き、そこで船を取り出して、ゆっくりと海の景色を見ながら拠点に向かった。



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