第260話
「春名ーー! 何してんだーー!」
いつの間にかログインしていた颯音に呼ばれ、クモガネとアカガネに共鳴を解除してもらい地上に降りた。
「遅かったな。どんだけ休んでいたんだよ」
「冬真兄と少し話していたんだよ。夕飯何がいいとか、ゲームのこととか。それより、なにしてたんだよ?」
「うーん、最初は散歩? だったけど、いつの間にか競争に発展したんだ」
「楽しそうだなぁ。あ、そうだ。出てて来い、ヒスイ! ギン!」
颯音は二体の狼を呼び出す。
「お前たちも遊んで来い」
「「ワフ!」」
二体の狼はふわっと浮き上がり空を駆け、コガネたちと遊び始める。
家のドアが開く音がして振り向くと、緑色の物体を抱えた海都が戻ってきた。
「海都、孵化したのか?」
「おう。無事にな」
「なんの話……えええ! ちっこいのがいる! 海都の新しい仲間か!」
「うっさい。まだ寝てんだから静かにしろ」
「あ、ごめん……」
颯音は口を塞いで黙った。
俺は小さい声で海都に尋ねた。
「名前はもう付けているのか?」
「リュウテイって名付けた」
「リュウオウの次はリュウテイか。いいんじゃない? またかっこいい姿に進化すればいいな。そう言えばさ」
孵化したリュウテイを見て思い出したことを颯音に尋ねた。
「颯音もモンスターの卵を手に入れていたよな? あれ、どうしたんだよ」
「色々あってまだ孵化させてないんだよな。今空いてるしやってくる」
「俺の次に春名が使う予定だけど」
「え、そうなの?」
「俺のは普通のやり方じゃ孵化できないのをさっき知ったから先使っていいぜ」
「そう? んじゃ行ってくる」
颯音は駆け足で家に入っていった。
「キュウ?」
「おはよう、リュウテイ」
目を覚ましたリュウテイを地面に置くと大きな欠伸をした。
俺はしゃがんで撫でていると、ウトウトしだして寝てしまった。
「寝ちゃった……抱っこしていいか?」
海都は頷き、俺はそっと抱き上げた。
「大きさ的にコガネに近いから軽いと思ったけど、意外と重いんだな」
「蜘蛛とドラゴンじゃ比較対象にならない」
「それもそうだな」
そんな話をしていると遊び疲れて降りてきたコガネたちが集まってくる。
コガネとクモガネがじっと抱っこしているリュウテイを見ているのに気が付く。
『その子、新しい仲間?』
「リュウテイは海都の仲間だよ」
『『ふーん。そうなんだ』』
コガネとクモガネは今度は海都をみる。
「あ……春名、リュウテイを返してもらっていいか?」
「? わかった」
寝ているリュウテイを海都に返すと、すかさずコガネとクモガネが胸の中に飛び込んできて、互いに睨み合う。
『もう子供じゃないんだから、クモガネ行くよ』
『ハルナはみんなのだから独り占めしないの』
クモガネはアカガネに、コガネはヒガネに連れて行かれた。
入れ替わりにウシャスラの背に乗ったニアが来て受け取った。
『ハルナ……ねむい……』
遊び疲れたのか眠そうな目をしている。
「おやすみ、ゆっくり休んで」
優しく撫でてからニアを戻した。
「じゃあ家に居るからなんかあったら呼んでくれ」
コガネたちと別れて海都とウィルと一緒に家の中に入ると、椅子に座っている颯音がいた。
「どれくらいで孵化しそうなんだ?」
「あと三十分ぐらいかな」
「三十分かぁ……兄ちゃんとの外食あるし、どっか行くのも微妙だな。孵化するまで拠点で時間を潰すか」
「あの! 樹海のボスモンスターの話が聞きたいです!」
「了解。じゃあなにから話そうか……」
俺と颯音と海都はそれぞれの視点からの話を聞かせ時間を潰した。
「そろそろ時間だな」
颯音の後をついて行き、孵化装置が置かれている部屋に入った。
颯音は装置の蓋を開け、手を伸ばし産まれたての子を抱き上げてみんなに見せる。
黒くて艶のあるモフモフの子犬だった。
「子犬?」
「ブラックウルフだって。じゃあお前の名前は……コクヨウ。よし、コクヨウに決めた」
「ワフ!」
コクヨウって名付けられた子狼は元気に返事をした。
時計を見ると丁度いい時間になっていた。
「無事にコクヨウも孵化したし、俺たちは一旦帰るよウィル。話の続きはまた今度な」
「わかりました」
コガネたちを戻してから俺たちは遅れないようにログアウトした。
読んで頂きありがとうございます!
今年最後の更新になります!
次回の更新は1/4日以降になるかと!
それでは、早いですが良いお年を!