第26話
――ピピピピ。
スマホでセットしたアラーム音が鳴り響く。
「う……ん」
手を伸ばして俺は音を消して瞼を閉じた。
「春名。いい加減起きないと遅刻するぞ」
ドア越しに兄ちゃんが呼び掛けてきて俺は重たい瞼をあけて近くにあるスマホを見る。
「やっば! もうこんな時間!」
慌てて起き上がった俺は速攻風呂場に行き急いでシャワーを浴びて、部屋に戻った俺は制服に着替え朝飯を食べにリビングに向かった。
「兄ちゃん、おはよう」
「おはよう。ゆっくり食えよな」
「時間ないから無理!」
「もしかしてだけど、春名徹夜したのか?」
そう言われて俺の口が止まる。
「ごめん兄ちゃん。止めるタイミング無くて気が付いたら四時だったんだ……」
「全然寝てないじゃないか。大丈夫なのか?」
「うーん、多分寝ちゃうと思うけど頑張って授業中は起きるよ」
「そうか。ごちそうさま」
先に食べ終わった兄ちゃんが食器を流しに置く。
「あんま無理するなよ。先に家出るから鍵閉めよろしく」
兄ちゃんは俺の頭を撫でてから玄関に向かった。
「待って! 俺も一緒に行く!」
残りの朝飯を流し込むよう食べ終え鞄を持って兄ちゃんと一緒に家を出た。
走ったおかげでギリギリ滑り込みセーフ。遅刻にはならなかったけどかなり疲れた……
俺は机に突っ伏した。
「春名がギリギリで来るなんて珍しいね」
前の席の立川颯音が話しかけてくる。
颯音は小学校からの付き合いがある幼馴染だ。
「ゲームで徹夜しただけ」
「へぇー。春名とは長い付き合いだけど、ゲームでそこまでハマってるの初めてみた。なんてゲーム?」
「レゾナンスオンライン」
「ああ、前に言ってたやつか。ヘッドギアが高くて断念したんじゃなかったの?」
「兄ちゃんに誕プレで貰った」
「冬真兄から? 羨ましい!」
「成績が落ちたら没収されるけどね」
「冬真兄らしいね」
ガラガラと教室ドアが開き先生が入ってくる。
「後でゲームの話聞かせて」
「分かった」
それから睡魔に耐えながらも授業を受けてようやく昼休みが来た。
やっと昼休み……ギリギリまで寝よう。
兄ちゃんが作ってくれた弁当を食べないで机に突っ伏し瞼を閉じた。
「寝るの早っ! どんだけ眠いんだよ」
「……うるさい」
「はいはい。静かにします」
まだまだ教室は煩いけど、俺は気にせずに眠りにつく。
「――名」
聞き覚えのある声が俺の名前を呼んでいる気がする。まだ寝たいのに誰だよ……
「春名! そろそろ時間だよ!」
目を覚ました俺はしばらく目をパチパチさせて颯音をみた。
「先生くるから起きなよ」
「ん……眠い……」
俺は大きい欠伸をして体を伸ばして眠気を飛ばす。よし、残りの授業も頑張ろう。
――キーンコーンカーンコーン。
「今日の授業はここまで」
日直の子が号令をかけて先生は教室を出ていく。やっと授業が終わった! あとHRやって帰れる!
直ぐに担任がきて珍しく短めなHRが終わり俺は帰る準備を始める。
「もう帰るの? どっか寄ってかない?」
「うーん、今日はパス」
「俺よりもゲームを選ぶのかよ!」
「こっちとら眠いんだよ! じゃあな」
俺は急いで自転車置き場に向かった。
自転車の籠に鞄を入れ跨る。
「相変わらず足速過ぎ」
颯音が追いついてきた。
「颯音が遅いんだよ」
「俺は普通ですぅー。そんなことよりも、途中まで一緒に帰ろうぜ」
「はいはい」
俺は自転車から降り、自転車を押して駅まで颯音と一緒に帰る。
その間、颯音に色々聞かれて面倒くさかったけど全部答えた。
気が付けば駅についていた。
「話聞いていたらやりたくなってきたなぁ~。春名が本当に羨ましい」
「颯音の母さんに話してみたら?」
「うーん、やってみるよ。それじゃまた明日」
「おう」
颯音を見送ってから自転車に乗り帰路に就く。
「ただいま。 ……兄ちゃんはまだか」
自室に入り鞄を机に置いて制服を脱いで部屋着に着替える。
「ん?」
スマホが鳴り画面を見ると兄ちゃんから帰りが遅くなるメッセージが届いた。
夕飯いるか聞くと要らないって返ってきた。自分の分だけさっさと作ろう。
冷蔵庫にある残り物を適当に温め夕飯を食べる。部屋に戻った俺は少しベットに横になって目を瞑った。
「全然寝れない……」
さっきまで眠たかったの眠気がどっか行った。
スマホの時計を見るとまだ夜の七時か。少しだけゲームやるか。
ヘッドギアを装着して俺はゲームの世界にログインした。