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第257話

『オベロン、今日は何して遊ぶ?』


『うーん、日向ぼっこかなぁ~』


『また日向ぼっこ? どっか行こうよ!』


『また今度ね。はあ~……』


『もう……!』


 色とりどりの花が咲いている森の中でオベロンとティターニアにそっくりな男女に、その周りには沢山の虫系のモンスターたちが和気あいあいと集まっていた。 

 ここは昔の樹海エリアなのだろうか。どことなくアプデ前の森に似ているな。それにティターニアの衣装が白い。

 そんな光景を見ていたら、目の前が眩しくなり、場面が変わる。

 空が暗く、森の空気が重い。その中でティターニアが傷ついたモンスターたちを癒していた。


『ティターニア! 無事か……!』


 息を上げ、ひどく取り乱したオベロンがやってくる。


『私は平気よ。だけど、みんなが……』 


『悪魔どもが……! この森から追い出してやる!』


『オベロン待って!』


 ティターニアの制止の声も聞かずに翅を広げてオベロンは飛び去って行く。

 しばらくすると空が赤くなり、無数の隕石が降り注ぎ、炎が燃え広がっていく。

 隕石が止むと、雨が降り、鎮火していく。

 また場面が変わり、暗い空を見上げて不敵に笑うオベロンが立っていた。


『フッ……フッフッ……フゥーハハハ! 見タカ! 我ノ力ヲ! オオ! 無事ダッタカティターニア!』


『何をしたのかわかってるの……? 森が、皆が! 貴方の眷族も怪我したのよ?』


 疲弊したティターニアが問うとオベロンは鼻で笑った。


『フッ、アレグライデ死ヌヨウナラ我ノ眷族ハ務マラン。サテ、コノママ……』


 オベロンから黒いモヤモヤが出始める。


『オベロン……! あなた、契約したの……?』


『コノ森ノ為ダ、仕方ナカロウ……コノ、力ガ有レバ!』


 更にオベロンの黒いモヤモヤが強くなっていくのを見たティターニアは杖を構え前に立つ。


『邪魔ヲスル気カ? オ前デモ許サナイゾ?』


 オベロンが掌に力を溜める前に地面から根が伸びて絡まっていく。


『コンナモノ……ン? 何故ダ!? 何故振リ解ケナイノダ!?』


 巨大な姿の飛蝗、天道虫、蟷螂、蜻蛉が囲うように集まる。


『我ヲ封印スル気カ! コノ森ガドウナッテモイイノカッ!!』


 深く息を吸ってからティターニアは言う。


『この森は私が治める。あなたの分まで私がこの森を守る。だから、今はゆっくり寝てオベロン』 


『許サヌ……! 許サヌゾ、ティターニアァァァ!』 


 オベロンは根に巻き付かれ姿が見えなくなった。

 糸が切れたようにティターニアは倒れ込んだ。 


『ティターニア、お怪我は?』


 巨大な蜻蛉が話しかけるとティターニアは立ち上がった。


『ええ、私は……っつ!?』


 胸を抑えて膝から崩れ落ちるティターニアの衣装が黒くなっていく。 


『そのお姿は……』


『……問題ナイワ』


 そう言ってティターニアは立ち上がって、回りを見渡す。


『ディルロス、テオクエ、ヘイムンダ、ウシャスラ。力ヲ貸シテ』


『『『『森の主の仰せのままに』』』』


 五体から眩い光が放たれ、気が付くと巨樹が目の前に戻っていた。

 巨樹の根元にはオベロンの頭を膝に乗せているティターニアを見つけた。

 急いで駆け寄り、そっと近くに降り立つ。


『……ああ、ティターニアか……君には、迷惑を掛けてしまったね……』


『迷惑なんて……一度も思ったことないわよ』


『そうか……あぁ、なんだか眠くなってきたよ。また君と離ればなれになるのは嫌だなぁ……』


 オベロンの体が結晶化し始める。


『かならず傍にいる。あの頃のようにまた日向ぼっこしましょう?』


『ありがとう、ティターニア……そろそろ時間のようだ……』


 オベロンの結晶化がどんどんと進んで行く。


『人の子よ。ティターニアのことを悲しませないでくれよ』


「あんたが一番悲しませた張本人じゃないか」


『はは、痛い所をつかれたなぁ……お詫びではないが君にこれを託そう』


 オベロンから蝶の装飾が付いた指輪を受け取った。


『それじゃティターニア、僕は行くよ』


『さよならは言わないわ。また会いましょう、オベロン』


『……また君を悲しませてしまった。これは僕からの罪滅ぼしだ』


 全身が結晶化したオベロンはボロボロと崩れ、風によって舞い上がっていく。

 すると、巨樹が揺れだし、俺とティターニアは急いで離脱した。


『ハルナ、あれを見て!』


 ニアに言われ振り返ってみると、巨樹に上の方から光を帯び始めた。やがて、全体が光を帯びると、巨樹を中心に光が広がる。

 光が触れた所から木々が生えていき、元の姿に戻っていく。

 ……これがオベロンが言ってた罪滅ぼしか。

 隣を見るとニアは涙を流していた。


 ――ボスモンスターオベロンが討伐されました。討伐報酬は貢献度によりグレードがアップされます。報酬は各プレイヤーのインベントリに送られます。

 繰り返します。ボスモンスターオベロン……


 上空からナレーションの声が響き渡る。

 報酬はインベントリに送られると、確かめてみるか。

 インベントリを見ると、金は増えてて、白くて丸い物が入っていた。


「オベロンの卵……オベロンの卵!?」


 綺麗に俺は二度見した。

 説明欄を見る限り本当にオベロンの卵のようだ。

 ニアに続いてオベロンの卵かぁ……


「うおっ!」


 インベントリを覗いていたら凄い勢いでニアに肩を掴まれた。


『今、オベロンの卵って!』


「あ、ああ。多分報酬なんだと思うけど……」


『よかった……本当によかった……』


 ニアは嬉しそうな表情で涙を流した。

 少しすると、ニアの体が小さくなっていき、芋虫状態だったグリーンキャタピラーに退化した。

 丁度スキルの効果が切れたのか。


「お疲れ様、ニア。皆もお疲れ様」


「はーーるなーーー!」


 コガネたちに労いの言葉を掛けていると颯音が手を振って向かってくる。

 その後ろから他のメンバーもついてきていた。


「颯音! 報酬何だった? 俺はネックレスだった」


「俺は……今は言えないかな」


「……またチート系のアイテムを貰ったのか? 一番貢献度が高いのお前だろうし」


 呆れた口調で海都が聞いてくる。


「まぁそんなもん。てか、早くログアウトしないと」


「え? ああ! 本当だ! 冬真兄にバレたら怒られる!」


「グレンさん、打ち上げパーティーの件はまた今度でいいですか?」


「今夜ログインするのか?」


「一応はする予定です」


「それなら、そん時に決めようぜ。俺たちもログアウトしないとヤバイ」


「わかりました」


 グレンさんたちと別れ、拠点に転移してからログアウトした。



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