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第23話

 気配を遮断した俺は先行して偵察。


「いた」


 曲がり角の先にポーンアント二体と、初めて見るビショップアント一体を見つけた。

 事前にグレンさんからここに出てくるモンスターの詳細を教えて貰った。

 ビショップアントは見た目はポーンアントに似ているけど違いは魔法が使えるだけ。それさえ気を付ければいいそうだ。

 少し離れた後方にいるグレンさん達に手で合図を送ると頷き返してくる。

 ソウルをほんの少しだけ消費して遠くからビショップアントに矢を当てる。


「キシャ!」


 ビショップアントと共にポーンアントが向かってくる。よし、上手く釣れた。


「コガネ頼む」


「シュ」


 コガネが天井に糸をつけ、俺ごと上に引っ張る。

 ビショップアントたちは俺に気づかないで通り過ぎていく。そして、ゆっくりと音を立てずに降りた。

 ソウルを今度はさっきよりも多めに消費して放つ。

 ビショップアントの頭部に命中してゆっくりと振り返り俺の方を見た。


「キシャアア!」


 ビショップアントがまた指示を出してポーンアントが俺に向かって突撃してくる。作戦通り!


「【連撃の型・風車】」


 油断しているビショップアントの後ろから一気に近づいたグレンさんがスキルを使い柔らかい関節を攻撃してビショップアントの体勢を崩した。

 その直後ビショップアントに向かって火の玉が数発命中して燃え上がりビショップアントを倒した。

 虫系のモンスターは総じて火属性の攻撃に弱い。ここはある意味エレナさんが無双が出来る場所ってことだ。MPが尽きたら終わりだけども。

 司令塔であったビショップアントが早々に倒したおかげでポーンアントを楽に倒せた。


 しばらく進むとせっせと何かを咥えて運んでいるポーンアントたちの隊列を見つける。一心不乱に何処に向かっているんだろう……とりあえずグレンさんに報告だな。

 俺はポーンアントたちに気付かれないように音を立てずに立ち去る。戻った俺は報告をした。


「どうします?」


「行ってみるか」


「わかりました。案内します」


 グレンさんたちを連れてポーンアントたちの後そっとあとを追った。

 何度か道を曲がってようやくポーンアントたちは部屋みたいなところに入っていた。

 ポーンアントたちがいなくなってから部屋に潜入した俺達は異様な光景に息をのんだ。

 部屋の床全体に白い塊が隙間なく置かれていて時々白い塊は発光している。調べてみると全てがアントの卵だとわかった。


「何この部屋……気持ち悪い……」


 エレナさんは顔を真っ青にしながら言う。

 虫は苦手じゃないけど、流石にこの量は俺も気持ち悪いと思う。


「そうだな、さっさと――」


「シュ!」


 頭の上に乗っていたコガネは器用に糸を使って天井に伸ばし勢いをつけて向う側に飛んで卵が無い所に着地。俺は思わず拍手してしまう。


「シュ!」


「……え、ちょまっ!」


 向う側にいるコガネが糸を飛ばして俺を一気に引っ張る。上手く着地出来なかった俺は地面に激突した。


「いてて……何するんだよ……」


「シュ」


「ん?」


 コガネが足で指す方を見ると一つだけ隔離されているのを見つける。近づいて確かめるとクイーンビーの卵だった。 

 ようやく目的のものを見つけて俺は胸を撫で下ろした。


「おーい、ハルナ! 大丈夫かー!」


 反対側にいるベオルさんが呼び掛けている。


「大丈夫です! クイーンビーの卵を見つけたんで回収したら戻ります!」


「そうか!」


 ベオルさんにはそう言ったもののどう回収しようか……インベントリには……入らないか。

 持っていくしかない?

 持ち上げようと卵に触れると発光し始めた。


「え……!」


 だんだんと光が強くなっていき殻に罅が入っていく。そして、一段と強い光を放ちパリンっと音が鳴った。

 徐々に光が収まっていくと卵があった所には卵はなくなっていて、代わりに白い幼虫がいる。もしかして、孵化しちゃった……?

 名前をみるとハニーワームと表記されている。完全に孵化しちゃってるなこれ。


「これどうすんだよ……クイーンビー怒んないかな」


「シュ?」


 そんなの知らないと言ったげにコガネが鳴いた。


「キュ?」


 クイーンビーの幼虫は俺の事を見上げてゆっくりと俺の方に動き出した。

 幼虫だからか歩くのが遅いな。俺は優しく幼虫を持ち上げた。


「怒らせちゃったら、その時は謝ろう。とりあえず、クイーンビーの所に届けよう。コガネ、皆んなの所に戻ろう」


「シュ!」


 コガネが先に戻ってから俺とハニーワームを引っ張った。


「なんか……増えてるな」


 グレンさんに指摘されて俺は思わず苦笑いをした。


「孵化しちゃいましたけど目的は達成しました」


「そうか。俺たちも大分レベル上がったし、帰還するぞ」


 べオルさん、エレナさん、ユリーナさんの三人は頷いた。

 部屋を出ると洞窟全体に金切り声が鳴り響く。


「なに今の……」


「わかりません……皆さん大丈夫ですか?」


 ユリーナさんが異常がないか確かめると皆んな頷き返した。


「な、なんだこの光は!」


 部屋中のアントの卵が一斉に光を放ち出す。


「グレンさん! 部屋中の卵が孵化します!」




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― 新着の感想 ―
[一言] なんかエイリアンみたいな展開になってきたぞΣ(-∀-;)
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