第204話
買出しを終わらせログインした途端に外で激しい音が鳴り響く。
俺は急いで外に行くとボロボロの木人に、大の字で倒れている颯音を見つけた。遠く離れた場所にウィルもいる。
ウィルのところに行って尋ねる。
「なにしてんだ?」
「ハルナさん、おかえりなさい。ハヤトさんが全力で木人と戦っていたんです」
「あいつ、木人の設定を最大にしてやっているんだよ」
「それは凄い。ハヤトさんは戦うのがお好きなんですね」
「まぁ、あいつはほっといて、ちょっと出かけてくるわ」
「はい、行ってらっしゃい」
拠点の転移装置に触れて、樹海エリアの街に転移した。
街に転移して門のところに向かい、ヴェルガを探す。
「いた。ヴェルガー」
門の端の方で警備しているヴェルガの姿を見つけて声をかけると、ヴェルガは俺を見つけて手を振り返す。
「ヴェルガ、仕事お疲れ様。今、大丈夫?」
「少しなら平気だけど、なにか用……ってその耳どうしたんだい?」
「……え、あ!」
ケモ耳のカチューシャを付けっぱなしだったことに言われて気が付き剥がした。
「今のは忘れてくれ……話戻すけど、斧を貸してほしくて」
「斧? 木材集め?」
俺は頷く。
「家にあるから取りに行かないと渡せないんだ」
「そうなんだ。仕事いつ頃終わる?」
「なにもなければあと二時間ぐらいかな」
「それなら、適当に時間を潰している――」
――ファン、ファン。パン。パン。
突然、街の上空から壮大な音楽が流れ花火が打ち上がる。
『えーお知らせがあります。クラン、黒白がボスモンスターティターニアを討伐されました。繰り返します……』
「「うおーーー!」」
突然の知らせで街中は大騒ぎになる。
「ティターニアが討伐か。流石はプレイヤーだな。ハルナ? どうかした?」
「え、あ……何でもない」
ティターニアはボスモンスターだ。いつかは討伐される未来はあった。それは仕方ないことだけど……
「ヴェルガ、仕事だ!」
もう一人の兵が槍を構えてヴェルガを呼ぶ。
門の外を見ると一体の蜂のモンスターが街に向かって飛んできていた。
槍を構えるヴェルガの肩に手を置く。
「ヴェルガ、俺が行くよ。クモガネ、アカガネ」
『あれ? 街の中?』
『どうかしたの? ハルナ』
「直ぐに【共鳴】をしてくれ」
二体は直ぐに【共鳴】をしてくれ、直ぐに飛び出して向かった。
蜂はふらふらと飛んでいて、俺を見ると胸に飛び込んでくる。
よく見るとボロボロで体力もかなり減っていた。
「おい、大丈夫か?」
『女王に、認められた人よ……ついて、来てくれ……』
そう言ってふらふらと飛び出すが直ぐに落ち始め、手で受け止めた。
「どっちに行けばいい?」
『……あちらに』
「わかった」
蜂のモンスターが指さすをしばらく飛んでいると、降りる指示を受けて、地上に降りる。
少し回復した蜂のモンスターはふらふらしながらも飛んでいき、俺は後ろをついて少し歩くと開けた場所に出る。
樹海の中なのに明るく中央には花を模した台座があり、それを囲うように虫系のモンスターたちが集まっていた。
『お久しぶりです、人の子よ』
「え、クイーンビー?」
頭に王冠を乗せた巨大な蜂が俺の近くにくる。
『私の娘は元気にしておりますか?』
どうやらシロガネの母親のクイーンビーで間違いないようだ。
『何をのんびりと話しておるのだ!』
巨大な蟷螂が会話に割って入る。
『そうですね……人の子よ、そなたに頼みたいことがあるのです』
集まっていたモンスターたちは両脇にずれ道が開く。空飛ぶ虫のモンスターたちが何かを運んできて台座に計五個置かれた。なんだろうあれは?
近づいて確かめてみると、左からドラゴンフライの卵、レディバグの卵、マンティスの卵、グラスホッパーの卵。その四つより少し高いところにインセクトクイーンの卵と……
「え……?」
俺は目を見開いてクイーンビーに顔を向けた。
『そなたに女王様と眷族様の孵化を頼みたいのだ』
「はああああ?!」
クイーンビーからのとんでもない依頼に声を出して驚いた。