第201話
猛スピードで海中を移動しているとボーンシャークの群れと遭遇した。
アオガネは躊躇することなく間を通り抜け、ボーンシャークの群れを切り刻んだ。
海中に漂うボーンシャークの素材が俺の周りに集まってきたので、回収した。
『ハルナ、モンスターが迫ってるから飛ばす』
『え、わかった。行ってくれ』
再び動き出したアオガネ。辺りを確認するとモンスターの姿が見えてくる。
『俺のスピードについてこれるもんならついてきてみろ!』
更にスピードが上がり、迫ってきていたモンスターたちを引き離した。
俺も必死にしがみつき、気が付くと街のエリア内に到着していた。
船よりも早いのはやばいな。
『アオガネ、浮上してくれ』
『わかった』
アオガネに浮上してもらうと水門の内側にいた。
水門を潜んなくても中には入れるんだな。俺とウィルは水中呼吸器を外す。
「ウィル、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。アオガネさんって凄いですね」
「さん付け……アオガネでいいよ」
『ね、ねぇハルナ……ぼ、僕が居ても平気、なの?』
そんな話をしているといつもの口調に戻ったアオガネが聞いてくる。
「テイムしたモンスターは街に入れるし大丈夫だよ。それよりも桟橋に向かってくれ」
『う、うん……』
「ウィル、フードを被ってくれ」
頷いたウィルはフードを被るが逆に耳が強調されて隠れてない。
アオガネはゆっくりと桟橋に体を寄せて俺とウィルは降りる。
「アオガネ、ありがとな」
「えっと、ありがとうございましたアオガネ」
俺の真似してウィルもお礼を言うとアオガネが頭をすりすりする。
「くすぐったいよアオガネ」
アオガネと仲良くなったようだ。これ終わったら、拠点でみんな呼び出すか。
俺はアオガネを戻してからクモガネを呼び出した。
「ハルナさん、この子は?」
「クモガネっていうんだ」
「よ、よろしくクモガネ」
ウィルが手を差し出すがクモガネはウィルの顔と手を交互に見てから何故か俺の背中に止まった。
「どうしたんだ? クモガネ」
『別に。それよりもなんで僕を呼んだの?』
「え、あ……【凍てつく鱗粉】を使ってウィルを隠してほしくて呼んだんだけど……」
『……長くは出来ないからね』
クモガネはウィルの頭上に飛び、キラキラ光る鱗粉が舞い、ウィルの姿が消えた。
クモガネの体力がゆっくり減っていく。早くいかないとな。
ウィルに後ろからついてきてもらい組合所に向かう。組合所に入ってカスティさんを探したけど見つからない。俺はカウンターに行って尋ねた。
「すいません、カスティさんいますか?」
「代表ですか? お名前伺ってもよろしいでしょうか?」
「ハルナです」
「少々お待ちください」
受付嬢は席を立ち奥に向かった。しばらくするとカスティさんと一緒に戻ってきた。
「おはようございますハルナ様。朝早くからどうかされましたか?」
「おはようございますカスティさん。ちょっとカスティさんに頼みたいことがあって」
「こちらに」
カスティさんの執務室に案内され、ウィルが入ったのを確認してからドアを閉める。
「クモガネ、もういいぞ」
合図を出すとクモガネはスキルを使うのを止めて、俺のところに飛んでくる。
俺は【治癒蜂兵】を召喚してクモガネの体力を回復させた。
「獣人族? ハルナ様、その子は一体……」
「実は……」
俺はカスティさんに事情を説明した。
その間、クモガネは俺から離れようとはしなかった。
「なるほど……私に任せてください」
そう言ってカスティさんは部屋を出ていく。
「なんとかなりそうだな」
「はい」
しばらくすると、転職した時に使った水晶を持ってカスティさんが戻ってきた。
「では、ウィル様。こちらの水晶に触れてください」
ウィルはゆっくりと手を伸ばして水晶に触れる。
水晶は一瞬だけ光って真ん中あたりからカードみたいなのが出てきて、ウィルは手に持った。
「そちらがウィル様の冒険者カードになります」
「これが僕の冒険者カード……」
「俺も見ていい?」
「あ、はい。どうぞ」
俺は隣からウィルの冒険者カードを覗き込む。
「ウィリアム・フリューゲルス。十五歳。ジョブ……召喚士?」
「召喚士はモンスターと一時的に契約し召喚を行い戦うジョブになります」
初めて聞くジョブに首を傾げているとカスティさんが説明してくれた。
「テイムとは違う感じか~すっげぇジョブだなウィル」
「そ、そうですね……あの! ハルナさん! 僕、この街見て回りたいです!」
立ち上がっていうウィルに俺は少し驚いた。
「いきなりどうしたの?」
「あ、いえ……」
ウィルは静かに座った。
「俺もウィルに案内したいけど、耳を隠す良い方法があればいいんだけど……」
「それでしたら提案があります」
カスティさんは席を立ち自分のデスクに行き引き出しを引く音がした。
戻ってくると手にはケモ耳のカチューシャがあった。なんか嫌な予感がする。