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第200話

 けたたましく鳴るスマホを止め、体を起こした。

 外は少し日が昇って多少明るい。

 体を伸ばしてからベッドを降りキッチンに向かう。兄ちゃんはまだ起きていないようだな。さっさとつくりますかな。


「お、はよう……」


 ほとんど作り終わる頃に兄ちゃんがリビングにやってきて少し驚いているようだ。


「兄ちゃんおはよう。もうすぐ出来るから座って」


「ん」


 兄ちゃんが椅子に座ってから目の前に朝食を並べて、自分も反対側に座って食事を始めた。


「出張ってどこ行くの?」


「秘密」


 そう言って兄ちゃんはコーヒーを啜る。

 俺は口を尖らせて言う。


「それぐらい秘密にしなくてもいいじゃん……」


「心配するな。日本の何処かにはいるさ」


「日本の何処かって範囲広過ぎなんだけど……まぁ気を付けてね。あ、お土産」


「分かってる。ごちそうさま」


 いつの間にか食べ終わっていた兄ちゃん。

 食器を流しに置いてから部屋に戻っていき、大きめのキャリーバッグを持って玄関に向かっていく。俺は食事を止めて兄ちゃんの後を追う。


「そんじゃ行ってくる」


「うん、行ってらっしゃい」


「あ。生活費、俺の部屋に置いてあるから」 


「わかった」


 兄ちゃんに手を振って送り出した。

 兄ちゃんがいないのは少し寂しいけど、まぁ明日から颯音と海都が泊まるし騒がしくなるな。戻ってきた兄ちゃんに怒られないようにしないと。

 食事を再開して兄ちゃんの分の食器も洗ってから俺はログインした。

 自分の部屋のドアを開けるとウィルは窓越しに外を眺めていた。なんか絵になるな。

 俺に気付いたウィルが振り向く。


「ハルナさん」


「よっ。なにしてんだ?」


「風が気持ちよくて外を眺めていただけです」


「そうか。ん? その服はどうしたんだ?」


 ベッドの上に沢山の洋服が置かれていることに気が付く


「ハルナさんが帰ったあと、モレルさんとルーシャさんが来て服を頂いたんです。何処に置けばいいか分からなくて……」


「クローゼット使っていいのに」


 洋服を拾い上げクローゼットにしまう。


「朝飯食べたか?」


「いえ、まだです」


「そっか。直ぐに作るから待ってて」


 キッチンにある冷蔵庫を開ける。冷蔵庫の中はぎっしりと材料が入っていた。


「おお、意外と材料あるな。モレルさんとルーシャさんが入れてくれたのかな? あとでお礼を言おうっと」


 必要な材料を冷蔵庫から取り出しているとウィルが隣にやってくる。


「ハルナさん、僕も手伝っていいですか?」


「いいけど、包丁とか使ったことあるのか?」


「あ……やったことない、です……」


「包丁の使い方は今度教えるから、ウィルは野菜を洗ってくれるか?」


「はい!」


 野菜を洗っているウィルの隣で溶いた卵をフライパンで焼く。その間にトースターでパンを焼いておく。いつのまにトースターなんか置いたんだろうな。まぁあって困らないからいいけど。


「洗い終わったら、皿に盛って」


「はい」


 焼き上がったパンとスクランブルエッグを皿に乗せる。


「盛る……」


 振り返るとウィルは盛り付け方で悩んでいる様子だ。


「適当でいいんだぞ」


「適当に……これで大丈夫でしょうか」


「おう、それでいいよ。さっさと食べよう」


 テーブルに運び朝食を食べる。って言っても俺は飲み物だけだけど。


「ハルナさんは食べないんですか?」


「ここに来る前に食べたからな。ちょっと颯音に連絡してくるから食ってて」


「あ、はい」


 俺はログアウトして颯音にメッセージを送る。五分ぐらい待っても返事が来ない。寝ているのか?

 一応電話してみるか。……出ないな。まぁいいか。

 颯音に先に行くと送信してからログインする。


「お待たせ」


「おかえりなさい」


 戻ってくるとウィルは洋服を着替えていてフード付きの腰辺りまでの丈があるマントを羽織っていた。


「颯音、まだ寝ているみたいだから俺たちだけで行こうか」


 ウィルを連れて船のところまで来て思いついたことを提案する。


「空から行くか、海から行くか。どっちが良い?」


「え、それじゃあ……海から?」


「了解。アオガネ!」


 俺はアオガネを呼び出した。


「アオガネ、街まで泳いで向かってもらえるか?」


『泳いで? うーん、だ、大丈夫だと思う』


「きつくなったら言ってくれよ」


『へ、平気だよ……』


「ウィル、これを咥えて」


 ウィルに水中呼吸器を渡して咥えてもらう。俺も咥えてアオガネの背中に乗る。

 ウィルも背中に乗ってから、ウィルを覆い被るようにする。念のために紐で括り付けておく。これで大丈夫だろう。アオガネに合図を出し、ゆっくりと潜り始めた。


「ごぼごぼ……!」


 海中の綺麗な光景に思わず見惚れたウィルはうっかり呼吸器を離してしまい慌てて息を止める。

 アオガネのスキル【水流操作】を使い、流されそうになる水中呼吸器を手繰り寄せて咥えさせる。


『しっかり掴まっていろよ!』


 性格が変わったアオガネのスピードが段々と上がってくる。俺はウィルが流されないよう腰に腕を回して固定した。



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