第20話
モンスターを倒してレベル上げつつ、ソウルを溜めることに夢中になっていたら昼の三時手前になっていた。
「コガネ、そろそろ帰ろっか」
『お腹空いた! ハルナ串焼き食べたい!』
「はいはい」
武器と離れたコガネは俺の頭に乗っかったくる。
「コガネ、その状態だとやっぱ喋れないんだよね?」
「シュ」
コガネは頷いた。
この状態でも喋れたらいいけど、まぁいいか。
街に戻った俺は最初に組合所に行って、大量にあるゴブリンの素材と今回手に入れたモンスターの素材を全て換金した。
一気に換金したおかげで懐が潤った。
組合所を出た俺はいつもの串焼き屋に向かったけどまだ準備中。様子を伺っていると店主と目が合い手招きされた。
「悪いな、すぐ焼くから少し待ってくれ」
「おじさん、俺達の事は気にしないで。あ、なんか手伝えることがあったら手伝いますよ?」
「手伝い……あ、そうだ」
店主は木箱の蓋を開けガサゴソと中を漁り、茶色の蓋つきの瓶を取り出した。
「やっぱり少なくなっているな」
「それなんですか?」
店主が蓋を開けて差し出す。俺はスプーンで掬い口に入れた。
「甘い……蜂蜜ですか?」
「そうだ。ラルメリアの花から作られた蜂蜜だ。これを取って来て欲しい。お前さんレベルはいくつだ?」
「レベルは13です」
「そのレベルなら大丈夫だろう。花粉団子を持ったハニービーを倒せば手に入るぞ」
「なるほど。その、ラルメリア?の花ってどこにあるんですか?」
「森の奥に群生している。白い花だから直ぐにわかる」
白い花? あれかな?
「分かりました。行ってきます」
「気を付けてな」
コガネを連れて再び森に向かう。
マップを開いて目的地に向かうけど、今回はモンスターとの戦闘避けるために、コガネのスキル【共鳴】を使ってもらって特殊な革手袋に変えてもらって木の上を伝って移動する。
「ここだと思ったけど、全然咲いてないないね」
『奥にあるんじゃない?』
「行ってみるか」
丘を進んで行っても白い花は一向に見えてこない。もう少し進むと再び森に入ってしまう。この奥に無ければ諦めて帰ろう。
「やっぱない……どこにあるんだろう……」
『ハルナ、モンスターがきた』
コガネに言われ俺は茂みに隠れるとブンブンと羽音が聞こえる。
黄色と黒の縞々模様が特徴的なサッカーボール並みの大きさの蜂の姿したモンスター――ハニービーが飛んでくる。
『ハルナ。あのモンスター追い駆けて』
「了解」
ハニービーに気付かれないよう気配を遮断して木に登ってしばらく追跡すると沢山のハニービーが現れて一点に向かって飛んでいく。そして、あの日みた白い花が咲き乱れている場所に出た。
ハニービーたちは白い花に集って花の蜜を集め始める。
『蜜飲んでくる!』
武器と分離したコガネはハニービーに紛れて蜜を飲み始めた。
ハニービーたちはコガネをちらっとみるけど、興味が無いみたいで一心不乱に蜜集めする。
この状況でハニービーたちに攻撃してもいいのかな……
「ん?」
そんなことを思っていると背中が押されて気がして振り向くとハニービーがぶつかってきた。
「ビー?」
そっと横に移動すると何事もなかったかのようにハニービーは花に一目散に向かっていく。攻撃されなかったな。それに、敵意も感じなかった。
花粉団子を持ったハニービーを倒せば手に入るって言ってたけど、交渉もありなのかも。やってみるか。
さっきぶつかってきたハニービーに近づき俺は話しかけた。
「あのさ」
「ビー?」
頭を傾けるハニービー。
「ラルメリアの花から作った蜂蜜、余ってたらでいいんだけど分けて欲しんだ。あ、無理なら無理で諦めるよ」
ハニービーは俺の顔をみてから、他のハニービーの下へ飛んでいき何か話している様子。すると、ハニービーたちは一斉に飛び立ち、森の奥に消えていった。言葉が通じたのかな?
しばらくするとハニービーたちが帰ってきて葉っぱで作られた四角い入れ物をどんどん置いて行き山積みになっていく。中を見るとキラキラ光るどろっとした液体が入っていた。
試し舐めてみると中は蜂蜜だった。
「こんな沢山……貰ってもいいの?」
「ビー!」
一番先頭にいたハニービーが頷く。
「嬉しいけど、少しだけ貰うね」
葉っぱで作られた四角い入れ物を数個インベントリに入れ、残りはハニービーたちに返す。
「よし、ありがとな。なんかお礼したいけど……俺今なんもないしな……そうだ。なんか困ったこととかある? あるなら聞くよ!」
ハニービーたちは顔を見合わせ二体のハニービーが俺の腕を引っ張り、残りのハニービーたちに背中を押され俺は森の奥に連れてかれた。