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第196話

『父様! 母様!』


 ウィルの声が聞こえ、目を開けると豪華な部屋で綺麗で優しそうな女性とイケメンな男性が椅子に座っていた。

 俺は辺りをキョロキョロ見渡す。

 ……ここ何処だ? 確か鮫に飲み込まれて……てことは胃袋の中って気がしない……


『ウィル、静かに。ウォルが起きちゃうでしょう?』


 女性の腕の中には小さな赤ちゃんが気持ちよさそうに寝ている。あれがウォルか? 顔が全然見えない。

 ウィルは音を立てないように女性に近づいて寝ている赤ちゃんの顔を覗き込む。

 男性がウィルのことを抱き上げて膝の上に乗せ、頭を撫でる。


『ウィル、弟ことしっかり守ってやれよ』


『うん!』


 仲睦まじい家族だな。これってウィルの記憶だよな。いくつの時だろう。俺が出会ったウィルは少し身長が伸びていたし、少し前の記憶か。

 そんなことを思っているとシーンが変わり今度は本棚が沢山ある部屋になる。そこにはウィルの面影がある青年が読書していた。


『兄様、こんなところにいたんだ』


 ウィルにそっくりな子供がドアを開け部屋に入ってくる。すっげぇ似てる。誰だろう。


『どうかしたのかウォル』


 このウィルにそっくりな子供がウォルってことは、読書しているのがウィルなの? え、どういうこと? 


『兄様に稽古をつけてもらいたくて』


 ウィルは本を閉じて立ち上がり、本棚に戻す。


『わかった。先に行ってて』


『はーい』


 ウォルが嬉しいそうに部屋を出ていく。

 そんなウォルの後ろ姿にやれやれとした表情をするウィル。

 ウィルが部屋を出ていくとまたシーンが変わる。灰色の空、ザーザーと大粒の雨が降り続いている。室内から外になったな。

 ウィルとウォル、それにメイドから執事までが墓石の前に集まっている。


『父様……母様……』


『ウィリアム様』


『……わかってる』


 ウォルとメイドを一人置いてウィルたちは去っていく。

 断片的な話しか聞いていないけど、どうやら二人の両親が亡くなったようだ。

 雨が止むと景色が変わった。


『ウォル待ってくれ!』


『……』


 ウィルの言葉を聞かずにウォルは出ていってしまう。

 ウィルは後を追わず部屋に行ってしまう。急すぎて展開に追いつかないんだけど……

 更にシーンが変わる。


『ウォル……なんで……』


 台の上には身に付けている装備が壊れ、右腕を失って横たわっているウォルがいた。

 あのシーンからこれかよ……

 ウィルの肩に手を置こうとしたらまたシーンが変わり、廃墟の教会みたいな建物の中に立っていた。

 天井はなく真っ赤な満月が夜空を不気味に照らしている。


『神よ……悪魔でもいい……』


 後ろからウィルの声がする。振り向くと真っ赤な色の魔法陣の上でウィルは祈っていた。その先には祭壇みたいのあり、その中心には白い布で包まれてるものが置かれている。


『僕を……あの頃に戻してくれ!』


 ウィルの願いが通じいたのか、ウィルの目の前に禍々しい姿をした者たちが溢れる。そのうちの一体が黒い指輪をウィルに差し出すと、ウィルは躊躇することなく指輪を嵌めてしまう。

 すると、魔法陣が赤く光り黒い霧が発生して教会ごと飲み込まれた。

 気がつくと俺は豪華客船のホールにいた。


『兄様! この料理美味しい!』


『そうだね』


 テーブルを囲ってウィルとウォル、それと両親の四人で食事をしている。幸せそうなウィルの姿にいたたまれなくなって顔を背けると、俺の目の前に幽霊の少年……ウォルが姿を見せる。


「ウォル……なんだよな」


『僕はウォルであって、ウォルじゃない』


 不敵に笑うウォルの隣に二体の鮫が現れる。


「さっきの鮫……そいつらはお前の使い魔だったのか」


『使い魔じゃないよ。こいつらは僕の一部だよ』


「そうかよ……!」


 俺は武器を構える。


「え、武器が出ない……?」


 念じても武器は一向に出てこない。


『無駄だよ。ここではなにも出来ない――』


 上の方からドンドンと叩く音が聞こえ見上げると、段々と叩く音が強くなっていきパリンと割れ、コガネたちが飛び込んできた。


『『『ハルナ!』』』


「ちょ、待っ!?」


 コガネたちは俺に落ちてきて下敷きになってしまった。


「お、重い……」


『ハルナ無事!?』


『どっか怪我してない!?』


 コガネとシロガネが慌てた様子で聞いてくる。


「俺は無事だから――っておい、アオガネ!?」


 アオガネに体を持ち上げられて背中に乗せられた。


『こ、ここ、安全だから』


『なにボーっとしているの』


 アオガネが頬をすりすりしてきて、クロガネが顎で挟んでくる。


『主を守れ!』 


『『『了解!』』』


 隙をついて攻撃してきた鮫をいち早く見つけたアインは他のビートル隊に指示を出して攻撃を防ぐ。

 反撃にクモガネとアカガネが攻撃をするが鮫は躱していく。

 俺の隣に来たクモガネが言う。


『ハルナ、あいつを倒せばいいんでしょう?』


「多分な」


 武器を念じてもやっぱり出てこない。

 アカガネが聞いてくる。


『どうかしたの?』


「この中だと武器が出せないみたいなんだ」


『それじゃあ共鳴技使えないの!』


 驚くコガネ。


「一斉に共鳴が出来ないだけで、共鳴技は使えるよ。昔はそうだっただろう? 忘れたのかコガネ」


『え、あー……そうだっけ?』


「たく。さっさとあいつを倒してウィルを助けてここから出るぞ」


 コガネたちは頷く。


『そのウィルはどこにいるのよ』


「あ」


 クロガネの指摘で気が付く。


「おい、ウォル! ウィルはどこにいんだよ!」


『兄様は夢を見続けている。僕を倒せたら教えてあげるかも』


 ウォルの姿が鮫の姿に変わっていき、三体の鮫は一つになり俺を飲み込んだでっけぇ鮫になる。

 グラトニーフォルネウス。ボスモンスター、レベルはもちろんカンストの50。

 初見の時はなんも表記出なかったのに、死王リッチロードを食ったからか? まぁそんなことはどうでもいい。直ぐに助け出すから待ってろよウィル。



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