第195話
「おお、すっげぇ威力だな」
直撃したリッチロードの体力が半分以下になっている。
アインたちの共鳴技、ラストリゾート。各それぞれの魔法を使わないと発動しないちょっと変わった共鳴技。まぁ威力が強い分、各魔法も一日一回までの制限付きだけどな。
三位一体ならぬ六位一体……なんてな。
「もう春名は盾士を名乗んない方がいいと思う」
「改造盾士だからセーフ。それよりもウィルは?」
白い手で捕らえられていたウィルは床に倒れていた。さっきの魔法でウィルに絡まっていた白い手が剥がれたのだろう。俺は急いでウィルの元に駆け寄る。
「ガアアアアア!」
突然、リッチロードが雄叫びを上げると怒り狂った赤い瞳を俺たちに向けてくる。
「攻撃が来るぞ!」
リッチロードが杖を掲げる。
すると、リッチロードの足元から大きな口が現れ一瞬でぱくりとリッチロードを食べてしまった。
バリバリと音が聞こえてくる。マジで……?
「リッチロードが食べられたんだけど!? ボスモンスターが食べられたんだけど?」
「落ち着け颯音」
慌てふためいている颯音を落ち着かせていると、リッチロードを丸呑みした奴が姿を見せる。
銀色の肌にギザギザした鋭い歯に大きな背ビレ。リッチロードを食べたのは物凄く大きな鮫だった。
咀嚼音が消えるとダンジョンをクリアしたファンファーレが流れだす。
「あれでクリア……なの? 納得行かないんだけど!?」
「まぁまぁ」
クリアしたら外に出るための魔法陣と報酬の宝箱が出現するはずなんだけど現れない。それに、大きい鮫も消えないで宙を泳いでいる。
「ん? 崩れてる?」
パラパラと瓦礫が降ってきて、見上げると船が崩壊し始めていた。
「ウィルを回収してくる」
駆け寄った俺はウィルを起こす。
「……ハルナ、さん?」
「大丈夫か?」
「うん、平気」
「立てるか?」
ウィルは立ち上がり、歩き出すと苦痛な表情になって足を押さえている。足を痛めたのかな。
「さっさと乗れ」
「うん」
ウィルを背負って立ちあがると颯音が大声で叫ぶ。
「春名! こっちに階段が!」
「おう! 走るからしっかり掴まっていろよ」
「ハルナさん、ウォルはどこ?」
「そう言えば……」
リッチロードとの戦闘ですっかり忘れていた。
「ウォル! どこにいるんだー!」
「ウォルー!」
俺とウィルは名前を呼ぶもウォルから返事はなかった。
明らかに落ち込むウィル。
「春名! そろそろ行かないと!」
「直ぐ追いつくから先に行っててくれ」
「……早く来いよ」
そう言って颯音は階段を駆け上がっていく。
「あんま長くいられないけど、ギリギリまでウォルを探すぞ」
「ハルナさん……うん!」
部屋を後にして廊下に出ると空中を漂っている巨大な鮫が動き出した。
巨大な鮫は大きな口を開きながら迫ってくる。ウォルを探している暇がないな。
「みんな、足止めを頼む」
コガネたちは球体と一体になりながらそれぞれスキルを発動して鮫を妨害する。
だけど、鮫はコガネたちの妨害を気にせずに突っ込んでくる。
俺は足を止めウィルを降ろして、お姫様抱っこをする。
「ちょっと飛ばすからしっかり掴まっていろよ」
ウィルにそう言ってから俺は赤と白の翅を展開して飛び立つ。
長い廊下をひたすらに飛んで逃げるているけど、鮫を振り切れないでいる。超しつこい。
「ハルナさん、僕を置いて逃げて」
ウィルが小声で言ってくる。
「ウォルは僕一人で探すから、ハルナさんは――」
「ウィル、ここまで付き合ったんだ。最後まで付き合うよ。その前にあの鮫を……あれ?」
後ろを振り向くと鮫の姿がなかった。撒けたか?
『ハルナ! 下!』
コガネから言葉で俺は咄嗟に【ラウンドフォース】を使い下からの鮫の攻撃を防ぐ。
「サンキュー、コガネ」
『まだ油断しない! 前から来るよ!』
前方に視線を向けると、同じ姿の鮫が一体俺に突撃してくる。
そのせいで、【ラウンドフォース】に罅が入る。
「ハルナさん! 後ろにもう一体!」
後ろを振り向くと三体目の鮫が突撃してくる。あれを食らったら確実に割れる。
「【共鳴技・フロンドアンドフロスト】!」
【ラウンドフォース】を壊れる前に共鳴技をぶっ放し、爆炎が辺り一帯に広がる。
俺から離れた鮫たちは一つの場所に集まりだすと、合体して物凄くデカくなった。
「嘘、だろ……逃げるぞ!」
ウィルを抱えて逃げようとしたが、尋常じゃない速さで鮫は近づいてきて、逃げる隙も無く俺たちは飲み込まれてしまった。