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第190話

 しばらく進んで行くとモンスターが湧かないエリアを見つけて小休止することにした。


「ハルナ、ここ終わったらおめぇと一回戦いんだけどよ」


 予想通りの事をトオルさんが聞いてくる。

 このエリアに着くまでに結構な頻度でトオルさんが視線を送ってくるのはなんとなく気が付いていた。

 いつか言われそうだなって思っていたけどこのタイミングか。


「進化の石全部やるからさ、やろうぜ」


「俺から申し込むから待ってくださいトオルさん」


「全然来ないじゃんかよ……」


「俺だって色々やることがあるんですよ」


 深いため息を零すトオルさん。どれだけ俺と戦いたいんだよ。


「てか、海都とか颯音とかと戦ってみればいいじゃないですか」


「そいつらともやるつもりだ。その前にお前とだよ」


「だってさ海都」


「いやいや、俺じゃトオルさんに敵わないって。一気に距離を詰められて負ける未来しか見えない」


 そう話題を振ると海都は全力で否定する。


「海都が本気出せば勝てんじゃね?」


「な、なんのことかな?」


「別に~」


「よし、そろそろ行くぞ。時間もそんな無いしな」


「そうですね」


 俺たちは安全エリアを出て先に進んだ。


「……あの、なんか聞こえませんか?」


 立ち止まったミライさんは俺たちに聞いてくる。

 耳を澄ますと子供が泣いているような声が聞こえた。


「十中八九、罠だと思うけど行きますか?」


「モンスターばっか倒してるし、行ってもいいぜ」


「トオルさんいるし、どっちでもいいぜ」


「皆さんの意見に合わせます」


「トオルさんいればどうにかなるし、行きますか」


「おい、俺任せかよ。自分の身ぐらい自分で守れよな」


「わかってますって」


 声がする方に進んで行くと段々と声が大きくなっていく。

 ――ピキっ。

 振り向くとミライさんはガラスの破片を踏んでしまったようだ。


「ご、ごめんなさい……」


 ミライさんが小声で謝る。

 それと同時に泣き声が止んだ。

 俺たちは慎重に泣き声が聞こえていた部屋に入って、俺は【蛍火】を使って部屋を明るくする。


「ひっ!」


 部屋の隅で怯えている子供を見つける。少し埃をかぶっている茶色の髪の毛。服装はあっちこっち汚れているけど、どことなく高そうな服を着ている。それよりも一番気になったのは子供の頭にある獣の耳だ。


「こ、こっちこないで!」


 子供は泣きながら叫ぶ。

 俺はしゃがみ子供と同じ目線になる。


「君、怪我とかない?」


「え……? 人間……?」


「大丈夫か――」


 突然子供が抱きついてきて俺は体勢を崩す。


「弟を! 弟を助けて!」


 子供は泣きながら懇願してくる。


「落ち着けって。えっと、俺は春名。君の名は?」


「ぼ、僕は、ウィル……」


「ウィル君だね。弟君の名前は?」


「ウォル……」


「ウィル君、君はどうしてこの幽霊船にいるんだ?」


「幽霊船? ここは豪華客船だよ?」


「え」


 後ろで聞いている三人に視線を向けると、お前がやれとアイコンタクトしてくる。


「そ、そうなんだ。それじゃあこの船がこんな惨状になった理由を聞いてもいいかな?」


 ウィル君は頷き、ゆっくりと話してくれた。


「僕とウォルは両親の目を盗んで船を探検していたんだ。充分探検して帰ろうとしたら、船が大きく揺れていつのまにかモンスターが出現したんだ」


 ウィル君の表情が段々と暗くなっていくも話しを続ける。


「僕はウォルの手を掴んで必死に走ったけど、逃げている他の乗客に巻き込まれて、僕は……ウォルの手を離しちゃったんだ……」


「そうか。話してくれてありがとな」


 頭を撫でるとウィル君は大粒の涙を流して泣き出した。

 しばらく泣き続けたウィル君。泣き疲れたのか安心しきったのか分からないけどウィル君は俺に抱きついて眠ってしまった。


「起きそうですか?」


 ミライさんが小声で聞いてくる。


「起きそうにないかな。ここは俺に任せて先に行ってください」


「わかった。一応こっちでも探しておくわ。早く来いよ」


「わかりました」


 トオルさん、海都、ミライさんは部屋を出て行く。

 ウィル君が起きるのを待っていると部屋にスケルトンが数体入ってきて、息を殺して物陰に隠れた。


「う……ん、ハルナ……さん?」


 目を覚ましたウィル君の口を塞ぎ小声で言う。


「モンスターいるから、少し静かに」


 ウィル君は頷く。

 スケルトンは少し部屋を見渡してから去っていく。

 俺とウィル君は息を吐いた。


「去ったようだな。もう動けるか?」


「うん。大丈夫」


「よし、ウォル君を探しに行こうか」


「うん!」


 俺たちは立ち上がってスケルトンたちが行った方とは逆の道の方に進んだ。



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