第19話
森に着いた俺は早速コガネを呼び出す。
「シュ?」
辺りをきょろきょろと見渡すコガネを抱き上げて頭に乗せた。
「今日もよろしくなコガネ」
コガネのお腹辺りから可愛い音が鳴った。
「お腹空いてんの?」
「シュ!」
コガネは凄い勢いで頷いた。
困ったな……昨日あげた分で串焼きはもうない。あるのは果物だけ。
「ごめんコガネ、今は串焼きないから果物で我慢して」
「シュ……」
コガネはため息をつくもあげた果物をむしゃむしゃと食べた。
あとで買わないとな。
コガネが食べ終わるのを待ちつつ森の中を散策しているとワイルドボアを見つけた。
俺よりもレベルが低いし、丁度いい相手だな。
「コガネ、【共鳴】をお願い」
「シュ?」
なにそれという顔になるコガネ。なんかデジャヴなんだけど。
たまたまコガネのスキルを見た時に、【共鳴】のスキルの詳細が書かれていた。
そこにはコガネと心を交わした為使用可能と書いてあったけど……なんかへこむ……
「シュ」
コガネがポンと俺の肩に足を置く。
「お前な……!」
俺はコガネのお腹を全力でくすぐった。
「シュシュシュ!?」
ほれほれ、俺を揶揄ったお返しだ。
「ブヒィィ!」
コガネをくすぐることに夢中になっていた俺はワイルドボアがすぐ近くまで来ていたことに気付くことに遅れた。
ワイルドボアの攻撃を体で食らい吹き飛ばされた。
ダメージはほとんどなかったけど油断した。
てか、コガネは……いた。
木の上でこちらを見てくるコガネを見つけて胸を撫でおろす。無事でよかった。
ワイルドボアが突進してくるを今度はちゃんと盾で受け止める。
「コガネ、今だ!」
「……」
コガネはそっぽを向いて木を登り始める。
「ちょ! コガネ!? ぐっ……! 邪魔……!」
予想外なことに力が抜け押されたけど体を捻って受け流し、盾を回転刃に変形させて首を断ち切った。
地面に転がっているワイルドボアの素材を無視してコガネの下に駆けつけた。
「コガネーー、降りてこいよーー」
呼び掛けてもコガネは降りてくる様子が無い。揶揄ったせいで怒らせちゃった?
ちょっと揶揄っただけなのに……
「コガネ、さっき揶揄ったの謝るかっらあああああ!」
足が急に引っ張られ逆さまで宙ぶらりん状態に。視線の先に直ぐに逆さまのコガネが居た。
コガネはすっごいジト目で見てくる。
「さ、さっきは本当にごめん。もうしないから、これ下ろしてえええええ!」
今度は落とされて頭を強く打ってしまう。
地面で大の字で横たわっている俺の腹の上にコガネが飛び降りてくる。
「シュ?」
反省した?って言いたげな表情で見てくるコガネ。
揶揄っただけでこんな仕返しか……もう揶揄わなないようにしよ。
「反省しました……」
「シュ」
満足気なコガネは突然体を光りだし粒子になると武器に吸い込まれていく。そして、回転刃からゴブリンシャーマンを倒した時の特殊な革手袋に変わった。
『特別に使っていいよ』
またあの時の声が語りかけてくる。
「この声、やっぱりコガネだったんだね。この状態だとコガネと話せるんだ」
『……そうだけど、なにか文句ある?』
「ないない。文句とか一切ない。むしろ、コガネと話せて嬉しいよ」
『……そっか』
ちょっとだけコガネの声が上がった気がする。嬉しいのかな。
「あのさコガネ、これって【共鳴】のスキルで合っているんだよね?」
『そうだよ。ちょっとだけハルナを認めたからね。ほんのちょっとだけね!』
「そこ強調しなくてもいいと思うんだけど……まぁいいや。ちょっとでも認めてくれたのは嬉しいし、もっとコガネに認めてもらうためにも俺頑張るよ!」
『……さっき揶揄ったよね?』
「さ、色々試したいしモンスター倒しに行こうコガネ!」
聞こえない振りして俺は立ち上がった。
「あ、素材回収してなかったな」
ワイルドボアの素材が落ちている所に視線を向けると青く光る球が浮遊していた。
あれがソウルなのかな?
触れてみるとソウルが武器に吸い込まれていくと自分の体力のバーの下にソウル[1]と表示された。
これをどんどん集めればいいんだな。よし、レベル上げ兼ねてソウルを溜めるぞ!