第187話
「今、海賊狩りって言った?」
「言ったけど?」
「……マジで言ってる?」
「大マジだよ。船長を倒さなければ無限湧きするんだろう? レベル上げにもってこいだろう」
「そりゃあそうだけども、俺のレベル分かってる? 1だよ? 速攻殺されるわ!」
「コガネたちレベル高いし、大丈夫だろう。うん。ほら、行くぞ」
「その自信はどこからくるんだよ!」
俺は溜息をつく。
「行ってもいいけど、自分のことは自分で何とかしろよな」
「了解」
海都はインベントリから船を取り出して船に乗り込んだ。
俺は操縦室に向かい、船を自動操縦にする。
髑髏の形をした大岩は海原エリアにランダムで生成される。運良く見つかればいいけど。
「お帰りー」
船内に戻ってくると海都はソファーでくつろいでいてリュウオウは窓から外の景色を見ている。
「リュウオウ、泳ぎたいなら行ってもいいぞー」
「ガウ!」
リュウオウは後部デッキに走り出してそのまま、海にダイブしていく。
「一人にして大丈夫なのか? ここら辺大分レベル高いぞ?」
「水中だとリュウオウが本領発揮するから大丈夫だ」
「へぇー、それなら」
俺はアオガネを呼び出した。
「アオガネ、リュウオウと一緒に行動しててくれないか?」
『ぼ、僕でいいの? 他の子に頼んだ方が……』
「アオガネが最適なんだよ。頼んだぞアオガネ」
『う、うん……頑張ってみる……』
アオガネも海にダイブする。
『ハルナ! リュウオウのことは任せてくれ!』
やる気満々のアオガネから念話が飛んでくる。
海中に入ると性格が変わるのまだ慣れないな。
「なんかあったらすぐ呼べよ、アオガネ」
『わかった』
アオガネとリュウオウが海で遊んでいるのが窓から見える。
「念話便利そう……俺もリュウオウと話したい!」
「あと……一、二回進化すれば取れるんじゃね? 俺と颯音もそんな感じだったし」
「あーー髑髏の大岩見つかんないかな~」
「海都の運次第」
「春名の運も追加で」
「ふざけんな」
海都とくだらない話しを繰り広げるも船は海原を進んで行く。
そうして一時間ぐらい彷徨ってようやく髑髏の大岩を見つけた。
「やっと見つけた。突撃するぞ」
「ちょっと待った」
「なんだよ……」
「直ぐに戻ってくるから一旦ログアウトするわ」
「は? これからだっていうのに……」
「直ぐ戻ってくるから」
俺はそう言ってログアウトした。
ヘッドギアを外して廊下に出る。兄ちゃんはまだ帰っていないな。
リビングに行った俺は夕飯いらないとメモを残して部屋に戻り、再度ログインした。
「お待たせ」
「早っ! 本当に直ぐに戻ってきたな。じゃあ近づくぞ」
「おう」
船はゆっくり動きだし、髑髏の大岩に近づいていく。すると、髑髏の目が緑色の光を放つ。
どんどん霧が濃くなっていき、霧の中から不気味な大型客船が出てくる。
「な、な……あれ……海賊船、じゃねぇよな……?」
海都は少しビビっているようだ。
俺は船を確認してみると、海賊船じゃなくて彷徨う幽霊船だった。
それに、幽霊船の名前の隣にダンジョンと表記があり、同時に九十分のタイマーが動きだした。時間制限が短いダンジョンか。こういうタイプのダンジョンもあるのか。
「予想外のが出てきたな」
「このゲームの運営、やばいな」
「人集める? あんまり時間ないからそんなに集めれそうにないけど」
「うーん、俺たちだけじゃ不安だし集めよう」
「了解。あ、海都。颯音に声かけてくんね?」
「わかった」
海都がログアウトしている間に俺はプレイヤーカードでログインしている人を確認して、片っ端から誘っていく。そして、二十分後ぐらいにメンバーが集まった。
メンバーは俺と颯音と海都にモレルさんとルーシャさん。グレンさんとベオルさん、エレナさんとユリーナさんのいつものメンバー。
グレンさんのクランメンバーである、ショートヘアで眼鏡の白で統一した装備を着ているリリアスさんと、和風装備を着ていてポニーテールのミライさんの二人。
それと、暇だからと来てくれたトオルさんとアレンさんとフリッジさん。
以上のメンバーが揃った。過剰な気がするけど、まぁいいだろう。
「今日は集まって頂きありがとうございます。えーあちらが見えるのがダンジョン幽霊船になります。見た目からかなり大きいと思うし、時間がそんなにないので分かれて探索しようと思います」
「俺たちはそれでもいいぞ」
「募集主のハルナに任せる」
「問題ないっすよ」
「きゃあ、ダーリン怖い~」
フリッジさんはアレンさんの腕に掴まって怖いアピールをする。仲の良い二人だな。
「それじゃ適当に分けますか」
「俺は一人でもいいぞ」
トオルさんは一人で良いと意見を言う。
「何が起きるか分からないので複数で移動しましょうトオルさん」
「あいよ」
「はいはい! どうせならごちゃ混ぜで行かないすか?」
アレンさんがインベントリからくじ引きを取り出して提案する。
特に意見もなく俺たちはくじ引きを引き、四グループに分かれた。
Aグループはベオルさん、颯音、ユリーナさん。
Bグループはグレンさん、エレナさん、リリアスさん。
Cグループはアレンさん、フリッジさん、モレルさん。
Dグループがトオルさん、ミライさん、海都。
「ハルナ、私白紙」
「俺も」
俺とルーシャさんが引いた紙は真っ白だった。
アレンさんが言う。
「十四人だと二人余っちゃうんすよね、。だから二人だけ、バランスを考えた方が良いかなって」
「なるほど……それじゃ、俺がDグループで、ルーシャさんがCグループの方がいいですかね?」
グレンさんが答える。
「各グループにヒーラーがいるし、大丈夫だろう」
「じゃあこれで行きますか。船を近づけますね」
船を動かし幽霊船に近づけると梯子が落ちてくる。なんか怖いんだけど……
覚悟を決めて俺が先に梯子を上っていく。後ろからみんな続き、幽霊船に乗り込んだ。