第185話
部屋を出て、リビングに来た俺はお湯を沸かした。
その間にスマホを開いて颯音が言っていた情報を調べることにした。
公式サイトによると、来週のアップデートで颯音が言っていた一度キリの転職リセットが実装されるみたい。
他のアップデート内容はイベントの知らせと新しいエリアのと新しい種族のNPCの追加。
イベントの詳細内容は土曜に発表するみたい。イベントというとクラン戦かな。それだったらグレンさんと同盟を組むの丁度よかったと思う。
それよりも、新しいエリアの追加と種族の追加だな。新しいエリアは太陽がなく月が浮かんでいる常夜エリア。このゲームに夜はないからちょっと楽しみ。
そして、新しい種族の追加。追加されるのはドワーフ族、エルフ族、人魚族、獣人族、竜人族、悪魔族の計六種族だ。どういう感じに追加されるのかはまだ詳細はなかったけどこれも楽しみだな。
「お、丁度お湯が沸いた」
カップ麺の蓋を開けお湯を注ぎ、三分待ってから少し遅めの昼飯を食べる。
食べ終わってから直ぐにログインし、颯音にメッセージを飛ばす。だけど、直ぐに返事が返ってこない。レベル上げしてんのかな?
まぁいいや。組合所に行こう。……海原エリアの組合所に行こう。
街の中心にある転移門を潜って海原エリアに転移して、下層にある組合所に向かった。
組合所について列に並び順番待ちをしていると声を掛けられ、振り向くとカスティさんが立っていた。
「カスティさん、どうも」
「こんにちはハルナ様。今、よろしいでしょうか」
「今ですか? あー……はい、大丈夫です」
もうすぐで順番が回ってくるけど俺は頷いた。
「では、こちらに」
列を離れ、カスティさんの後ろをついて行って部屋に入る。
意外と部屋は大きくてテーブルの上には沢山の書類が積まれていた。
「お座りください」
俺は腰を下ろす。向かい側にカスティさんが座る。
「それで、用件とは?」
「いえ、用件はないのですが……」
俺は頭を傾げる。
「本日は転職のご用件でお越しですよね?」
「え、ええ……なんでカスティさんがそのことを?」
「ハヤト様が言っていましたので」
「ああ、なるほど」
カスティさんは立ち上がり部屋に置かれているサッカーボールぐらいの水晶を持ち上げ俺の前にあるテーブルに置く。
「ハルナ様、プレイヤーカードの提示お願いします」
「はい」
俺はプレイヤーカードをカスティさんに渡した。
受け取ったカスティさんは水晶にプレイヤーカードを翳す。
「転職可能なジョブは改造盾士かインセクトテイマーになります。どちらになされますか?」
「改造盾士でお願いします」
「畏まりました」
カスティさんは水晶に手を翳す。
「お待たせしました。ハルナ様、こちらの転職石に手を触れて頂ければ改造盾士に転職します」
「わかりました」
俺はカスティさんに言われた通りに触れてみる。すると、目の前にウィンドウ画面が出現する。
変形盾士→改造盾士に転職。
レベル50→レベル1にリセット。
SPはリセットされ合計ポイント[100]。
以上のことがウインドウ画面に書かれていた。
「無事に転職されましたか?」
「あ、はい。無事になりました。ありがとうございましたカスティさん」
「いえ、お仕事ですから」
「あの、ここでSPを振ってもいいですか?」
「はい、構いません。私は仕事をしておりますで」
カスティさんは立ち上がって書類が積まれているテーブルの方に行き椅子に座り、書類を取り仕事を始める。
「えっと、ここってカスティさんの執務室?」
「はい、そうですけど」
カスティさんは即答する。
「カスティさんの仕事の邪魔になっちゃいますし、他のところでやりますよ」
「ハルナ様がここにいても仕事の邪魔にならないので、お構いなく」
「お構いなくって……」
俺は溜息をつく。
「邪魔になったら言ってくださいね」
「……」
カスティさんは仕事モードに入ったのか黙々と仕事をしている。俺の声が全然届いていない。
まぁ静かにしてますか。
俺はカスティさんの仕事を妨げにならないように静かにSPを振る。
「げっ……【エキストラトランス・レゾナンス】にSP[50]も使うのかよ……しゃーない」
俺は【エキストラトランス・レゾナンス】にポイントを振って取得。
残りのポイントは何故か取れるようになった防御力を上げる【プロテクト】の上位スキル【フォートレス】と魔法防御力を上げる【バリア】の上位スキル【セイントウォール】、範囲防御スキル【ラウンドシールド】の上位スキル【ラウンドフォース】。
単発ヘイトを集める【挑発】と範囲ヘイトを集める【咆哮】。
一日一回、十秒間どんなダメージも無効にする【パーフェクトガード】。
状態異常の抵抗力を上げる【ロイヤルガード】と範囲指定の【ロイヤルフォース】。
味方のダメージを一部肩代わりすることが出来る【庇う】を各[5]ずつ振った。
あとは【潜水】と空中で動きやすくなる【空中移動】を[1]ずつ振る。
これでいいかな。残りのポイントは保留だな。
「カスティさん、俺はそろそろ帰りますね」
「……」
返事がない。凄い集中力だ。
「カスティさんー」
「あ、はい。なんでしょうか?」
カスティさんの顔の前で手を振っているとようやく気づいてくれた。
「俺、そろそろ帰りますね。あ、これお礼です」
俺はインベントリから苺のショートケーキを取り出す。
「友人のお店の奴なんですけどよかったら食べてください」
「ありがとうございます……」
「それじゃお仕事頑張ってください」
俺はお辞儀してから部屋を出て、組合所を後にする。
もう一回、颯音にメッセージを送ると直ぐに返事が返ってきた。拠点にいるってことで俺は拠点に転移した。