第180話
いつもより早く起きた俺は兄ちゃんの朝食と弁当を作りメモ紙を残してから、ゲームにログインした。
ログインして直ぐに全員を呼び出す。
「自由にしててくれみんな。部屋にいるから、なんかあったら呼んで」
それだけ言って家に入る。自室に向かい部屋の窓を開ける。風通しが良いな。
ベットに腰掛けてからハガネを呼び出す。
「おはよう、ハガネ。蜂蜜食うか?」
そう尋ねるとハガネはゆっくり頷く。
インベントリから蜂蜜を取り出して指で掬って口元に運ぶ。
「まだ食べるか?」
瓶の中が空になり食べるか尋ねるとハガネは首を横に振った。
お腹がいっぱいになったのかな。
ハガネの瞼が閉じていく。そのままハガネは寝てしまった。
寝ている間に進化項目を確認すると、すでに満足度のゲージはマックスになっていていつでも進化出来る状態。進化はハガネが起きてからにしよう。
俺はインベントリから石を四つ取り出してベッドに並べる。
「琥珀石に黒曜石、翠玉石に氷結石……」
ダンジョンで見つければいいけど時間が掛かるし運次第。トオルさんに挑んでも今の状態では勝てるか微妙だしな。
アトラさんの店にあったように他の店にあるかもしれないし探してみるのもありか。
『主?』
窓からアインとツヴァイ、ドライとフィーア、フュンとゼクスが入ってくる。
『綺麗な石ですな』
アインたちは興味深々に石を見つめる。
『主、この子は?』
寝ているハガネに気が付いたフュンが聞いてくる。
「おう、進化してから紹介する予定のハガネだ。寝てるから起こすなよ?」
ハガネの周りに集まるアインたち。
アインたちの邪魔にならないようにベッドから降りる。
「あ」
降りた拍子にベッドの上から氷結石が床に落ちてしまった。
『主、お任せを』
アインがすかさず飛び立ち床に落ちた氷結石を器用に足を使って掴む。
その時、アインから強烈な光が放たれ俺は腕で光を遮る。
目を細めてアインの様子を見ていると、みるみるうちにアインの姿が変わっていく。
「アイン?」
光が収まり、そこには茶色だった甲殻は氷のように白くなり、大きい角のほかに胸部に二本、前方に真っ直ぐ伸びる短い角が生えている姿になっていた。
名前もビートルからアイスビートルになっている。氷結石に触れて進化したのか?
レベル18になっているアインの進化先にアイスビートルはなかったはず。まさか、石で進化出来るとは……予想外だ。
『主……我は一体……』
「進化したみたいだな。おめでとうアイン」
『おお! 我が進化! 力がみなぎってくる!』
アインは窓かた外に飛び出していく。相当嬉しんだな。
『『『主!』』』
ツヴァイとドライ、フィーアとフュン、ゼクスの五体が俺に期待を込めた視線で見てくる。
こいつらも進化したいみたいだけど、残り石三つなんだよな。それに、琥珀石はハガネに使う予定だから、実質使えるのは二つだけ。
俺は溜息をつく。
ベッドの上にある石を集めて、琥珀石だけインベントリにしまう。
「今あるのはこの二つだけだ。話し合いで決めてくれ」
『『『了解!』』』
部屋の隅に五体は集まって話し合いが始まった。
「お、起きたのかハガネ」
ハガネは眠たそうな表情しながら頷く。
『『主!』』
話し合いが決まったのかツヴァイとフィーアが俺の元にやってくる。
「ドライ、フュン、ゼクス。お前たちの分も見つけるから待ってて。てか、普通に進化していいんだぞ?」
三体はいつでもビートルソルジャーに進化出来るのだ。
『いえ、我らも特殊な進化を望んでいるので』
ドライの意見にフュンとゼクスが頷く。これはトオルさんに挑んだ方が早いか? お店探しても見つかるかどうかだし……
「お前らの意思は理解した。少しだけ待っててくれる?」
頷いた三体の頭を俺は撫でた。
ツヴァイとフィーアに向き直り、石を見せる。
「選んでくれ」
ツヴァイは黒曜石を選び、フィーアが翠玉石を選び、それそれが触れると激しい光が放たれ姿が変わっていく。
俺はハガネの目を塞ぎ光を遮る。
「お、ツヴァイとフィーアも進化したようだな」
ツヴァイの甲殻は黒色に変わり、頭部と胸部にそれぞれ角が一本。胸部の角は二本がくっついたように幅広く、先がふたまたに分かれていた。
フィーアの甲殻は薄い緑色に変わり、みんなよりも短い角が二本ある姿だ。
ツヴァイはシャドービートルに。フィーアはエアロビートルに進化したようだな。
アインと同じくどちらも進化先になかった進化だ。
「おめでとうツヴァイ、フィーア」
『『感謝します主!』』
ツヴァイとフィーアが窓から飛び出していくとドライとフュンとゼクスもあとから続いく。
アカガネが審判役を務めアインとツヴァイとフィーアで競争が始まった。楽しそうだな。
「ハガネ、進化するか?」
ハガネは首が取れるんじゃないかと思うほどに激しく頷く。
「よし、じゃあ進化させるぞ」
俺は進化項目にある進化のボタンを押した。