第179話
遊び疲れた俺は家の外壁にもたれ掛かる。
「はー……疲れた。あいつらスタミナあり過ぎ」
俺の右隣に颯音が来て腰を下ろした。
「春名、話があるんだ」
「話?」
俺は頭を傾げる。
「実はさ、福引で旅行券が当たったんだよ」
「へぇー、すげぇじゃん! どこに行くんだ?」
「ハワイだって」
「ハワイか~いつから?」
「今週の土曜日」
「急だな。じゃあしばらくはログインできないな」
颯音は首を横に振る。
「俺は行かないよ。両親だけで行くんだよ。海外にはいってみたいけど、課題があるから残ることにしたんだよ」
「本当は?」
「あっちに行っても暇だし、ゲームしたい」
「颯音らしい」
「疲れた……!」
疲れた様子の海都は俺の左隣に座る。
「なんの話してたんだ?」
「颯音の両親が旅行に行く話。それで?」
「あ、うん。それで、両親がいない間、冬真兄の許可が取れたらでいいんだけど春名んち泊ってもいいかな?」
「何日泊まる気?」
「五日間なんだけど、無理かな?」
「五日? うーん、聞いてみないとなんとも」
「なぁそん時は俺も泊りに行ってもいいか?」
「海都も? うーん、兄ちゃんが良いって言ったらな」
俺は立ち上がる。
「そろそろ落ちるよ。みんな、戻るよ」
俺はコガネたちを順番に戻していく。
後ろから颯音が話しかけてくる。
「今日はもうログインしないの?」
「課題終わらせるから今日はしないかな」
「え! ズルい!」
「……なにがずるいんだよ。それじゃあな」
全員を戻してからログアウトした。
「ふー。もう三時か……よし、兄ちゃんが帰ってくる前に終わらせよう」
ベッドから降りた俺は早速課題に取り掛かる。
「ただいまー」
課題がもう少しで終わるタイミングで兄ちゃんが帰ってきた。
筆を止めて部屋を出る。
「兄ちゃん、お帰り~」
「ただいま。今日はゲームしてないのか?」
「さっき……でもないけど、早めに切り上げて課題をやってたんだよ」
「そうか」
「兄ちゃん疲れてる? 疲れてんなら夕飯作んの代ろうか?」
目の下の隈を見て俺は兄ちゃんに提案した。
「……頼む」
「了解。出来たら呼ぶから、それまで寝てて」
「わかった」
自室のドアを閉めてからキッチンに向かった。
「さて、何を作ろうか……」
冷蔵庫を開けて何を作ろうか考え込む。
兄ちゃんに少しでも元気になってほしいな。よし、決めた。
俺は時間をかけてカレーを煮込む。その間にとんかつを作る。
揚げ終わったとんかつの油を切っている間に兄ちゃんの部屋に向かう。
「兄ちゃんー」
ノックをしても兄ちゃんからの返事はなかった。
「兄ちゃん? 入るよ……」
ゆっくりドアを開ける。部屋は暗くて兄ちゃんの寝息が聞こえてくる。
俺は兄ちゃんの体を揺すって声をかけるけど、兄ちゃんは起きる気配がない。しゃーない。このまま寝かせておこう。
部屋をそっと出て、兄ちゃんが起きて直ぐに食べれるように皿にカレーも盛り、とんかつを上に乗せてラップする。
自分の夕飯を食べ終えた俺は部屋に戻って課題を再開する。
「終わった……!」
課題が終わり伸びをしているとドアがノックされ、申し訳なさそうな表情で兄ちゃんがドアを開けて顔を出す。
「春名……すまん……」
「気にしなくっていいよ兄ちゃん。もう食べた?」
「ああ、ごちそうさま。美味かった。ありがとう春名」
「よかった」
「じゃあ課題頑張れよ」
「あ、兄ちゃん!」
部屋を出ていきそうな兄ちゃんを呼び止める。
「今週の土曜からなんだけど、颯音の両親が海外旅行に行くんだって」
「そうなんだ」
「なんか颯音は行かないっぽいみたいで、その間うちに泊まりたいって。あ、海都も泊まるんだけど、いいかな?」
「何日泊まる予定なんだ?」
「五日ぐらいだって」
「親御さんの許可があるなら構わないさ」
「本当! ありがとう兄ちゃん」
「話はそれだけか?」
俺は頷く。
「じゃあおやすみ春名」
「おやすみ」
ドアが閉まり、俺は颯音と海都にメッセージを送った。
課題をしまい、ベッドの上で時間を潰していると睡魔に襲われ、いつの間にか眠っていた。




