第18話
部屋に入ってみると外に繋がっていて屋内じゃないことに俺は少し驚いた。
ぐるっと囲むように柵が置かれていて、その中心に木製で出来た人形が設置してある。的みたいなものなのかな?
「待たせたな」
男性は手ぶらで部屋を入ってくる。疑問に思いながら男性の様子を見てると、男性はなにか操作をしだすと地面から横に長いテーブルが現れ、そのテーブルの上に沢山の武器が乗っていた。
近づいて見てみると俺がリストに書いたものがずらりと並んでいて、よく見るとリストに書いていないものもあった。
「あの、頼んでいない武器もあるんですけど……」
そう尋ねると男性はギロっと俺を見る。ほんとに怖いんだけど!
すると、男性は軽く溜息をつく。
「全部試せ」
それだけ言って男性はドアの方に歩いて行きその近くで何処からか取り出した椅子に腰掛けた。
え……出て行かないの? てか、見ているつもりなの?
「俺の事は気にするな」
男性は腕を組み目を瞑った。
うーん、静かにしてくれるならいいか。
俺は男性の事を気にしないことにしてテーブルの上に並べられている武器を一つ一つ試すことにした。
「全部試したか?」
全部試し終えたタイミングで男性が話しかけてきた。
「あ、はい。今終わった所です。リアルスキルが必要なのかなって思っていたんですけど、ある程度補正してくれてどれも使いやすいですね」
「命中精度上げたり、射程距離を広げたりできるスキルもあるぞ」
「そんなスキルもあるんだ。それがあればかなり遠くからでも狙い撃ちできますね」
「弓系やボウガン系を使えば習得可能だ」
「そうなんですね。うーん、でも俺使う気ないんですよね」
「……それなら、何故遠隔系の武器を試したんだ?」
少しだけ声が低くなった男性が尋ねてくる。え、なんか怒ってる?
俺はトランスシールドを展開して説明した。
「えっと、この武器のスキルで変形が出来て、今変形できるのが……」
盾を回転刃を変形させ俺は説明を続けた。
「これは近接攻撃なんで、遠隔系があればなって思って……なんですけど……」
男性はじろじろ見つめてくる。しばらく無言が続くと突然男性が笑い出した。
「なるほどな、珍しい武器を使ってんだな。そうなると弓系のスキルが習得できるか分からないな」
「ですよね。まぁ俺は盾職なんで別にいいですけど」
「ふーん。それでどの武器に変形させるのか決めたのか?」
「銃も捨てがたいけど、弓って使う機会が無いので弓でいこうかなと」
「ほう。見せてくれ」
まさか催促されるとは思わなかった。
いつかは変形させるし別に構わないか。
「分かりました」
俺は武器を構え変形する弓を想像しながら。
「……【トランス】」
手の甲にあった回転刃は姿を変え全体的に銀色で統一されていて、握る部分から二つ折りに出来る弓の姿に変わった。
スキルツリーを確認すると【トランス・スピンエッジ】の時と同じく、【トランス】から派生して【トランス・ソウルボウ】というスキルが追加されていた。
「それで、どうやって矢を放つのだ?」
尋ねられた俺は弓を構えたけど矢が出てこない。矢は別なのかな?
気になった俺はスキルの詳細を読んでみると、どうやらモンスターを倒した時に現れるソウルというものを溜めて矢に変換させてから放つらしい。
てことは、ここにはモンスターがいないから試すことが出来ないのか。
まぁこの後レベル上げ行くし、その時に確かめよう。
「すいません、モンスターを倒した時に出てくるソウルってのを溜めないと矢が放てない様で今は見せられないです」
「そうか……」
男性は少ししょんぼりをしているようだ。
「ストックできるみたいなんである程度溜まったらまた来ますよ」
「本当か! 必ず来るんだぞ!」
嬉しそうにする男性。なんだろう……第一印象は怖かったけど、この人、根は良い人なんだろけど見た目で損してそうだな。
「それじゃ、えっと……」
「ん? ああ、俺はガイアスだ」
見た目通りな名前だなと内心思った。
「俺はハルナって言います。それじゃガイアスさんまた来ますね。あ、片付けとかは……」
「ああ、それは俺がやるから気にしなくていい」
「わかりました」
ガイアスさんに会釈してから俺はドアを通って建物の中に戻りそのまま訓練場を後にする。
大分時間経っちゃったし、急いで森に行こう。