第178話
『ハルナ早く!』
「分かってるから、テーブルを押し倒すな! 颯音、海都悪い直しておいてくれ!」
後ろからついてくる二人にテーブルを直してもらい部屋に行く。
部屋に着くと孵化装置は止まっていて蓋も開いていた。
装置の中を覗き込むと俺の予想通りスパイダーが中にいた。
「ヒガネ?」
名前を呼ぶと、ヒガネは瞼をゆっくり開け俺を見つめる。
『ハ、ルナ……? なんか大きくなった?』
俺はヒガネを持ち上げる。
『コガネも大きくなった?』
「ヒガネが小さくなったんだよ」
『え?』
ヒガネはキョロキョロと自分の小さくなった体を見渡す。
『嘘……なんで……?』
俺は動揺しているヒガネに説明した。
「ごめんヒガネ。まさかこんなことになるとは……」
『気にしないで。もう一度進化すればいいんだけだから平気平気!』
「ポジティブだなヒガネ。それじゃ改めてよろしくなヒガネ」
『うん! あんなつまらない場所から連れていってくれてありがとうハルナ、コガネ』
掌からぴょこんとコガネの上に飛び乗るヒガネ。出会った当初のコガネを思い出す。俺の頭の上で定位置だったな。今は大きくなった無理だけど。
部屋を覗き込んでいた颯音と海都が呆れ気味でいう。
「春名……テイムし過ぎ」
「どんだけいるんだよ」
「十四体」
「十四体? 俺が知らないのもいんのかよ……」
海都は苦笑した。
俺の頭に乗ってきたヒガネが聞いてくる。
『ハルナ、この人間たちは? 敵?』
「違う違う、俺の友達で仲間だよ」
『そうなんだ』
コガネとヒガネを連れて部屋を後にし、そのまま外に出た。
「ヒガネ、俺の仲間を紹介するよ」
俺はハガネ以外を呼び出す。
「みんな紹介するよ、新しく仲間になったヒガネだ」
『よろしくね』
頭から飛び降りてみんなの前にでて自己紹介をするヒガネ。
みんなから色々聞かれているけど、ちゃんと答えているな。
『クロガネ、アカガネ、ヒガネ。こっちにきて』
クロガネとアカガネ、それとヒガネをシロガネが集め、遠くの方に行ってしまう。
コガネが気になってシロガネたちのところに行くと、シロガネが怒鳴りコガネを追い返してしまった。
あーあの四体全員メスだから女子会的な感じか。そりゃコガネを追い返すな。
不貞腐れながらコガネが戻ってくる。
『ねぇハガネは呼ばないの?』
クモガネ右肩に止まって聞いてくる。
『ハガネ? あ、新しい仲間?』
話しを聞いていたアオガネが質問してくる。
「そうだよ。今回ハガネとヒガネを仲間にしたんだよ。ハガネはまだワームだから進化してからみんなに紹介するよ」
『は、早く会いたいな』
「まぁ楽しみにしててくれ。じゃあ家の中にいるからなんかあったら呼べよ」
家に入った俺は二階にある颯音と海都の部屋に向かう。
海都の部屋に行ったがいなかった。颯音の部屋の前に来た俺はノックしてからドアを開ける。
「ここにいたんだ海都」
ベットで横になっている海都と目が合う。
颯音は窓を開けて外を眺めていた。
「みんな仲良く遊んでるね」
俺も窓から外の様子を見ると、ヒスイとギンとリュウオウも混ざって遊んでいる。
ゼクスからみんな逃げているな。鬼ごっこ的なのをやっているのかな。まぁそれよりも。
「平和だな」
「平和だね」
俺は颯音に気になったことを聞く。
「あのさ、なんで俺の部屋だけ一階なんだよ」
「モレルさんとルーシャさんが一階に一部屋二階に四部屋を増設しててさ、ヒスイとギンを進化し終わって戻ってきたら部屋割りを話し合っていたんだよ。タイミングよく海都も拠点に戻ってきてさ、春名には一階を使ってもらおうってことに決まったんだよ。ただ、それだけなんだけど、二階の方がよかった?」
「いや、特に拘りないし一階でいい」
「よかった……大分部屋をアレンジしたからさ、春名が二階が良いって行ったら引っ越すの面倒くさくて」
「なんだそれ」
苦笑を浮かべているとクモガネが飛んできた。
『ハルナも一緒に遊ばない?』
「そうだな。遊ぼうか。二人も行くぞ」
「おう」
「仕方ないな」
部屋を出た俺たちはテイムしたモンスターたちに混ざり、時間を忘れるくらい遊び尽くした。
次回の更新は4/19に予定しております。