第175話
スタッグビートルワームのハガネも仲間にしたしさっさと去ろう。
長居してたら魔女やらヒドラに会う可能性もあるしね。
「クモガネ、アカガネ、クロガネ。拠点に帰――」
「きゃあああああ!?」
遠い方から女性の悲鳴が聞こえてくる。
『ハルナ、助けに行こう』
「お、おう」
『ほら、クモガネとクロガネも行くよ』
アカガネの指示に従ってクモガネとクロガネは【共鳴】をしてからアカガネも【共鳴】した。
白と赤の翅を展開して急いで向かった。
「お、いたいた」
上空から探していると巨大な紫色の蜘蛛に追い詰められている二人組の女性プレイヤーを見つけた。
アシッドポイズンスパイダーか、レベルは40か。
あのレベルのモンスターに追い詰められているということは、あの二人はレベルが低いのか、相性が悪かったのどっちかだな。
まぁその前に助けないとな。相手が虫系ならなんとかなるだろう
俺はアシッドポイズンスパイダーと二人の間に降りる。
「だ、誰!」
武器を向けてくる二人組。そりゃあね、知らない人が間に入ったら警戒するよな。
「助けに来たんで静かにしてもらえます?」
少し高圧的に言うと二人は静かに頷いた。
『あんた誰?』
アシッドポイズンスパイダーの声が聞こえてくる。虫系限定だけど【念話(蟲)】ってスキル便利だな。
「えっと、俺の言葉がわかりますか?」
『……私の言葉が分かるの?』
驚いた様子のアシッドポイズンスパイダー。
「まぁそう言うスキルを持っているんで……」
『だったら話がはやいわ。そいつらが私の巣から奪ったモノを返して!』
「それを返したら帰ってくれます?」
『ええ』
俺は二人に視線を向ける。
「あの、巣から取ったモノを返してくれたらに巣に戻るって言っているんで返してもらっていいですか?」
「い、いやよ! せっかく苦労して手に入れたのに返すわけないじゃん!」
俺は溜息をついてからアシッドポイズンスパイダーに聞く。
「何を取られたんですか?」
『大きいダイヤよ』
「ダイヤか……」
俺は黒い球体と一体になっているクロガネに尋ねる。
「クロガネ、ダイヤって作れる?」
『……作れるけど。安くないわよ』
「うっ……俺が叶えられる範囲でらなんでも一つ言うこと聞くから頼む」
『その言葉忘れないでね』
そう言ってクロガネは【共鳴】を解除。肩についている鉱石がボロっと落ちる。
俺は鉱石を拾い上げて調べると、ダイヤモンドだった。
クロガネのスキル【鉱石錬成】はクロガネが摂取した鉱石を生成することが出来るスキルだ。
「これで足りるか?」
『へぇー。その子、凄いスキルを持っているのね。でも足りないわ』
「え……」
クロガネに視線を送るとにらみ返された。
俺は必死にお願いして、クロガネは折れてくれて再びダイヤモンドを作ってくれた。
あとで何を要求されるかすっげぇ心配だけど。
「こ、これで十分か?」
『ええ! これで十分だわ!』
嬉しそうにダイヤモンドを抱えてアシッドポイズンスパイダーは帰って行った。
これで一件落着かな。
「あ、あの!」
振り返りと何か言いたそうな表情の二人組。
クロガネを抱えて白と赤の翅を展開して飛び去った。
『お願いは何にしようかな~』
腕の中でクロガネが怖いこと呟く。
「もう一度、言うけど俺が出来る範囲でだからな」
『分かってるわよ』
『クロガネ、楽しそうだね』
「そうだな」
アカガネの言葉を俺は苦笑交じりで答える。
『ハルナ、あの蜘蛛を仲間にしない?』
クモガネが予想外の提案をしてくる。
「あいつをか? うーん、別にいいけど……場所わかる?」
『コガネを呼べばわかると思うよ』
「そうなの? 分かった」
俺はさっきのところに飛んで戻る。
うーん、さっきの人たちはいないようだな。
地上に降りた俺はコガネを呼び出す。
『ここは……あのしわくちゃがいたところ?』
「しわくちゃ? あ。魔女のこと? そいつならいないぜ」
『じゃあなんで僕を呼んだの?』
俺はコガネにこれまでの経緯を話す。
『ふーん』
そう言ってコガネは歩き出した。
「あ、ちょっと待てよコガネ!」
俺は急いでコガネの後を追った。