第173話
樹海に入る手前にヴェルガが尋ねてくる。
「ハルナ、木材ってどこで取れるのか知ってる?」
「え、木だったらどこでもいいんじゃないの?」
そう答えるとヴェルガは溜息をつく。
「なんでもってわけじゃないよ。案内するよ」
ヴェルガが先導して樹海に入る。
少し歩くとヴェルガが立ち止まる。
「あそこにある木に近づいてみて」
そう言われヴェルガが指さす木に近づくと採取しますかとウインドウ画面が現れる。
「斧を持った状態で「はい」って押してみて」
「わかった」
インベントリから斧を取り出して「はい」を押すと木の幹のところが光り出す。
「光っているところに目掛けて斧を振り下ろしてみて」
俺は力いっぱいに斧を振り下ろす。幹に深々と刺さる。
もう何回かやれば倒れそうだな。
二、三回斧を振り下ろすと木はミシミシと音を立て倒れた。
倒れた木は四散して木材が転がる。
「おお、こんな感じで取れるんだ」
俺は木材を集める。
「お二人にもやり方を教えますね」
「「はーい」」
俺が木材を集めている間にヴェルガはモレルさんとルーシャさんにやり方を教える。
「それじゃ集めますか」
「「「おー」」」
俺たち四人は手分けして木材を集める。
四人でやっているおかげで一時間程で木材はかなり集まった。
積み上げられた木材を見てモレルさんが言う。
「これくらいあればいい?」
「うーん、全員分の部屋は無理だけど、そこそこ拡張できそうですね」
「そっか。とりあえずもうちょっと集める?」
「あーすいません。俺はそろそろ落ちます」
時間をみると夜の十時。特に明日予定はないけど、あんまり遅くまでやると兄ちゃんに怒られちゃう。
「モレルさんとルーシャさんに拠点改造の権利渡しておくんで、自由に改造して大丈夫なんで」
「わかった」
「ハルナ、またね」
「はい。ヴェルガも今日はありがとな。あ、斧を返し忘れるところだった」
俺は斧をヴェルガに返した
「ハルナ。今度でいいんだけどさ手合せお願いしてもいいかな?」
「いいけど……どうしたの急に?」
「なんとなくかな」
「ふーん、わかった。今度時間を合わせてやろうぜ」
「楽しみしているよ」
「じゃあ俺はこれで」
一回拠点に転移してから俺はログアウトした。
廊下に出るとリビングの明かりが付いていた。兄ちゃんいるのかな?
リビングに行くとワイシャツ姿の兄ちゃんがソファーで寝ていた。
俺は兄ちゃんの部屋に入って毛布を取り、寝ている兄ちゃんにそっと掛ける。
「ん……春名?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「……今何時?」
「十時ちょっと過ぎ」
兄ちゃんは体を起こす。
「ちゃんと部屋で寝なよ」
「……お腹空いた」
兄ちゃんの腹の虫が鳴る。
「俺も食べるから少し待ってて」
「ん」
立ち上がった兄ちゃんは椅子に腰かける。
俺は適当に冷蔵庫にあるものを使って簡単に料理を作り皿に盛った。
「おまたせ、早く食べよう」
「いつもありがとな春名」
兄ちゃんは小さく「いただきます」と言って食べ始める。
「さっきまでゲームしてたのか?」
「うん。してたけど……どうしたの? なんか疲れてるっぽいけど……仕事忙しいの?」
「そこそこな。あー俺もゲームしたいな」
「兄ちゃんもレゾナンスオンラインやればいいのに。ごちそうさまでした。先に風呂入っちゃうね」
「わかった」
自分の食器を下げて風呂場に行く。湯船に浸かりまったりする。
十分満喫して風呂場を出ていく。リビングを見ると明かりは消えていた。
兄ちゃん、部屋に戻ったみたいだな。
俺も部屋に戻って少し課題をやってから眠りに就いた。
次の日、起きてリビングに行くと朝飯が出来ていた。
まだ温かい。兄ちゃん、もう行っちゃったのか。
朝飯を済ましてからログイン。
「……家がでっかくなってるな」
昨日までこじんまりとしていた家が横に広くなっていて二階建てになっていた。
中に入ると、家具は一式揃っていて、部屋もいくつか拡張していた。
俺がいなくなってからどんだけ木材を集めたんだか。ここまでしてくれたのは予想外だけど、ありがたい。
颯音と海都はまだログインしていない。モレルさんとルーシャさんも朝だからいない。
他の人もいないし、かなり後回しにしていたことをやろう。
「よし、行きますか」
俺は転移装置を使って沼地エリアに転移した。
次回の更新は4/12に予定しております。