第172話
コガネたちとヒスイとギンは外でリュウオウと一緒に遊び始める。
俺と颯音と海都、モレルさんとルーシャさんの五人は家の中に入って床に座る。
モレルさんが部屋の中をきょろきょろしながら言う。
「家具全然ないよね」
「みんないると狭い……拡張出来ない?」
「拡張するための木材がないからな……」
「じゃあ集めにいこう」
「特に予定ないし俺はいいですけど。二人はどうする?」
俺は颯音と海都に尋ねた。
最初に答えたのは颯音だ。
「ごめん、俺はちょっと行きたい所あるからパス」
「リュウオウのレベル上げに専念したいから俺もパス」
「お、了解」
「じゃあ私とルーシャとハルナ君で木材集めだね」
「じゃあ先に行くね」
そう言って颯音は立ち上がってヒスイとギンの元に行く。
「春名、船を借りてもいいか?」
「いいけど、海原エリアでレベル上げするなら髑髏の形をした大岩には近づくなよ」
「なんかあるのか?」
「海賊ってモンスターが湧くんだよ。相手にするの面倒くさいんだよ。それに、船を壊しかねない」
「わかった」
家の外に出るともう颯音の姿はなかった。もう行ったのか。
俺はコガネたちを戻してから、浜辺に行き、インベントリから船を取り出した。
海都に船のマニュアルを渡す。
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けて~」
海都を見送ってから俺はコガネたちを戻す。
モレルさんが聞いてくる。
「木材ってことは樹海エリアで集めればいいんだよね?」
「木が多い所なら樹海か沼地かな」
沼地か……色々あってスタッグビートルのテイムを後回しにしてるな。あいつにも会いたいし今度一人の時に行こうかな。
「沼地……行きたくない」
ルーシャさんは嫌な顔をする。なんかあったんだろう。
「材料集めに行ったときにね、モンスターに泥まみれされたの」
「モレル! 言わないでよ……!」
「あはは……それなら樹海にしますか」
転移装置を使い俺たち三人は樹海エリアの街に転移した。
外に行くための門で警備をしているヴェルガを見つけたので、近づいて声をかける。
「ヴェルガ、よっす!」
「ハルナ、それとお友達かな?」
後ろにいるモレルさんとルーシャさんを見るヴェルガ。
「クランのメンバーだよ」
「そうなんだ。俺もクランに入れたらな……」
「NPCは加入出来ない仕様だもんね。ヴェルガなら大歓迎なんだけど。もし、加入出来ることになったら誘うよ」
「ありがとうハルナ。これからレベル上げかな?」
俺は首を横に振る。
「拠点の拡張のために木材集めに行くんだよ」
「木材集めか。斧は持ってるの?」
「あー持ってない。やっぱり必要だったか鉱石を取りに行った時もツルハシを使っていたからさ」
「斧なら倉庫にあるから少し待ってて」
そう言ってヴェルガは一緒に警備をしている人に一言を言ってから詰所に向かう。
ルーシャさんがマントを引っ張る。
「何かあった?」
「木材を集めるためには斧が必要みたいで、ヴェルガが今取りに行ってるんですよ」
「ふーん」
「あの人って初めて街に来た時に説明してくれたNPCだよね」
「そうですね。マップの使い方わかんなくて、森の中でうずくまって泣いているモレルさんを見つけて、一緒に街に行ったときに対応してくれた人です」
「ハルナ君!? な、なんの話をしているのかな?!」
ルーシャさんは動揺するモレルさんをじっと見つめて鼻で笑った。
「ちょっと! なんで笑うのよルーシャ!」
モレルさんはルーシャさんの肩を掴んで揺らす。
「お待たせ……なんの騒ぎ?」
斧を取り行っていたヴェルガが戻ってきて聞いてくる。
「あはは……気にしないで」
俺はヴェルガから人数分の斧を受け取る。
ヴェルガの手元に斧があることに気が付く。
「なんでヴェルガも斧を持ってんの?」
「もう仕事終わるから、俺もついて行こうかなって」
「マジで! ヴェルガと行くの始めた時以来だったっけ? 楽しみだな」
「多分、足手まといになっちゃうけどよろしくね」
「足手まといってヴェルガのレベル41じゃん。十分強いよ」
「ハルナたちよりかはレベルが低いからね。そろそろ行こうか」
「お、おう。ルーシャさん、モレルさん行きますよー」
ちょっとだけ言い争いをしている二人を呼ぶ。
少し怒った様子のルーシャさんが言う。
「この人も一緒?」
「ヴェルガです。よろしくお願いいたします。」
「ルーシャ。よろしくね」
ルーシャさんとヴェルガは握手を交わす。
「モレルです。私のこと覚えています?」
「ええ、ハルナと一緒に街に来た女性の方ですよね。よろしくお願いします。」
「こちらこそ」
軽く自己紹介を交わしてから樹海に向かった。