第171話
ボスモンスターのティターニアがいなくなってから颯音と海都の視線が刺さる。
「二人が何言いたいかわかるけど、説明はあとだ。一旦拠点に戻ろう」
俺たちはレベル上げを切り上げて拠点に戻った。
拠点に戻ってから俺はコガネたちを、颯音はヒスイとギンを、海都はリュウオウを呼び出して自由にさせる。
俺たち三人は家の中に入り適当に腰を下ろす。
「さーて、何から話そうか」
「え、そんなに長いの?」
「まぁな。この装備をくれたのもあのボスモンスターだしな」
「「はぁ!?」」
颯音と海都は声をあげて驚く。うるさくて俺は耳を塞いだ。
「ボスモンスターから装備を貰うって初めて聞いたぞ」
「うんうん。俺も初耳。そもそもボスモンスターって特殊な条件をクリアしないと出現しないはずなんだけど、あのボスモンスター……なんでうろちょろしてんのさ」
「それは、俺も知らん」
「「知らないのかよ!」」
「うるさいんだから二人で突っ込むなよ。初めて会ったときからそんな感じなんだから知るわけない」
外で遊んでいたリュウオウが入ってきて海都の胡坐の中に座る。
リュウオウに続いて、ヒスイとギンも来て颯音の周りに集まる。
そのあとから、コガネたちもやってきた。全員集まるとキツイな。
そう思いながら俺は苦笑いをした。
『なんの話をしてたの?』
コガネが尋ねてくる。
「ボスモンスターのティターニアのことを話してたんだよ」
『ふーん。そんなことよりハルナ、お菓子ないの?』
「そんなことって……あるよ」
俺は溜息をついてからインベントリから全員分の洋菓子を取り出してみんなの前に置いて行く。
海都が呟く。
「あのさ、前に春名に絡んでいた女性いただろう? その人が言ってたのってさっき遭遇したボスモンスターのことか?」
「よく覚えてたな。聞かれなかったから忘れてると思っていた」
「あんときは聞いていいのか微妙だったからな。てことは、お前が持っている特殊なスキルって」
「スキル【女皇蟲の加護】。俺が攻撃しない限り、フィールド上にいる虫系のモンスターには攻撃されない。これが俺の特殊スキルだ」
そこから俺は二人にティターニアと出会いから今までのことを話した。
「これで以上かな。なんか質問ある?」
そう聞くと颯音が口を開く。
「質問はないけど、話を聞いてるうちにボスモンスターってなんだろうってなった」
「俺も思った」
二人の意見は一緒のようだ。
「他のボスモンスターに遭遇したことないからな」
「もしさ。もし、そのボスモンスターと戦うことになったら春名はどうするの?」
颯音からの質問に俺は考えて口に出す。
「戦わない。寧ろ、助けるかな」
「春名らしいね。そん時は助けを呼べよな」
「ありがとな颯音」
「……全プレイヤーを敵に回しそうだけど、仕方ない。お前らに協力する」
「海都……そん時は頼るよ」
そんな話しをしているとヒスイとギンが家の外に出て吠える。
「ちょ、ちょっと静かにしてよ……!」
モレルさんの声が聞こえて外を見ると、モレルさんとルーシャさんがいて、気まずそうな表情をしていた。
これは二人に聞かれたぽいな。
「いつからいたんですか?」
「あはは……聞くつもりはなかったけど、聞こえちゃって」
「ハルナ、ごめん……」
「謝らないでくださいモレルさん、ルーシャさん。二人にも聞かれたら話そうと思っていたので、おかげで説明するのを省けました」
「ハルナ、私も力になる」
「あ、ルーシャズルい! 私も手伝うよ!」
「ありがとうございます、ルーシャさん、モレルさん」
「グラ!」
リュウオウが二人の前に出て元気に挨拶をする。
「「かわいい!」」
二人はしゃがんでリュウオウの頭を撫でる。
「いつの間にドラゴンをテイムしたの?」
「海都のです。テイムはテイムだけど、ドラゴンの卵から孵化させたんです」
「「へえー」」
俺の話を聞きながらもリュウオウを撫でる手は止まらない二人。
颯音がそっと呟く。
「可愛いさ重視で進化して行ったりして……」
「させねーよ! リュウオウにはかっこよく進化してもらう予定だから!」
「あ、そうだ。言い忘れていたけど、進化はリュウオウが決めるから海都はなんもできねーよ」
「初耳なんですけど!?」
「リュウオウを信じるしかないね」
海都はリュウオウを持ち上げた。
「リュウオウ、かっこいい進化してくれよな!」
「グラ!」
リュウオウは元気よく鳴いて海都の言葉に返した。