第17話
「春名ー起きてる?」
兄ちゃんがドアをノックして入ってくる音に目が覚める。
「兄ちゃん……? はぁ~……」
「相変わらず寝癖酷いな」
「もう……諦めてるよ」
体を起こして軽く伸びをして眠気を飛ばす。
「こんな朝早くになんかようなの?」
スマホの時間見ると朝の七時だった。
「ちょっと急用で夜まで帰って来ないから俺の分の飯作らなくていいよ」
「あ……そうなんだ。分かった」
「朝飯作ってあるから。それじゃ行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
兄ちゃんはドアを閉めていく。直ぐに玄関のドアが閉まり鍵が回る音がした。
こんな朝早くに用事ってなんだろう……まあいいか、朝飯食べて今日もやろう。
テレビを見ながら朝飯を食べて色々してからログインした。
昨日のゴブリンシャーマンを倒してレベル9まで上がってレベル10まで残り半分の状態。さっさと上げるか。
あ、その前に弓とかを試し撃ち出来る所が無いか探そう。問題なく使えれば増えた変形回数を遠隔系にしたい。
モレルさんは……いないか。あと、このゲームの知り合いはヴェルガだけか。門に居るといいけど。
人が多い門に到着した俺はヴェルガを探した。
いない、な……今日は休みでレベル上げに行っているとか? 門兵に聞いてみよう。
「すいません。今日はヴェルガは休みなんですか?」
「ヴェルガなら本日は裏門で警備にしておりますが」
裏門? あそこかな?
「分かりました。ありがとうございます」
門兵にお礼を言ってから門を後にする。マップを開きながら記憶を頼りに裏門に向かった。
「あ、いた! ヴェルガー!」
閉ざされた木製の扉の前で槍を持っているヴェルガが立っていた。
「久しぶりハルナ。コガネとも仲良くしてる?」
「うん。昨日なんてダンジョンでコガネとの共鳴技が使えたんだ」
「おお、それは凄いね」
「あ、そんことよりもヴェルガに質問あるんだけど、今大丈夫?」
「うん、大丈夫だけど」
「よかった。ヴェルガに聞きたいのは弓とか銃とかをレンタルが出来て試し撃ち出来る所があるか知りたくて」
「あーそれなら……」
ヴェルガが喋ろうとすると別の門兵が近づいてきて、ヴェルガは姿勢を正し今来た門兵と色々話し始める。俺は少し離れて様子を伺った。
話し合いが終わったのかヴェルガがこっちに歩いてくる。
「お待たせ。この後も仕事あるけど少し時間あるから案内するよ」
「え、場所教えてくれればいいのに……」
「ハルナの話聞きたいから案内させて」
「うん、わかった」
ヴェルガに今までの事を話しながら街中を歩いて行くと訓練場っていう看板が掲げられている所に来た。
「お金掛かるけど、ここで色んな武器を試し撃ちしたり、試し斬りしたり出来るよ」
「そうなんだ」
「中で受付してね。それじゃ僕はそろそろ仕事に戻るよ」
「あ、うん。ありがとうヴェルガ。仕事頑張って!」
ヴェルガの姿が見えなくなるまで見送ってから建物の中に入る。入り口近くのカウンターに顔に傷があってスキンヘッドの怖い男性が座っていた。
「えっと……」
「あん?」
「え、えっと……ここ、利用したいんですが……」
鋭い眼光を向けられてビビりながら目的を伝える。
「この紙に使いてえ武器を書きな。あと利用料も払いな」
男性から紙とペンを受け取り使いたい遠隔系の武器を思いつく限り書いてから利用料と一緒に紙を渡す。ちょっと言葉遣いは乱暴な方だけどちゃんと受付してくれてる。案外優しい人なのかな?
「……そんなに使うのか?」
「あ、はい。色々試したくて……その、ダメですか?」
男性は睨んでくる。前言撤回やっぱ怖いよこの人!
「ふん」
鼻で笑った男性は立ち上がって建物の奥にある沢山並んでいるドアの一つの前に移動した。
「中で待ってな。直ぐに用意してやる」
男性は不敵な笑みを浮かべる。物凄く帰りたい気持ちになったけど、お金も払っちゃったし行くしかないか。男性の横を通って部屋に入っていった。
次回の更新は7/27の予定です。