第164話
拠点まで戻ってきた俺は船内のソファで横になる。
「疲れた……一旦ログアウトしよう」
メニュー画面を開いて操作する。
「げっ!?」
メニュー画面に表示されている時間が待ち合わせの五分前であることに気が付いて慌てて体を起こした。
船から降り、船をインベントリに仕舞い、拠点前に置いている転移装置を振れ、樹海エリアを選んで転移した。
樹海エリアの転移門前に転移した俺は全力疾走でヴェルガの家に向かう。
少し過ぎたけど、何とかヴェルガの家に付いてドアをノックした。
ガチャっとドアが開きヴェルガが出てくる。
「はぁ……はぁ……ごめん、遅くなった。はぁ……」
「大丈夫、時間はあるから。機械を持ってくるから座って休んでて」
ヴェルガの家に入った俺はソファに腰かけ息を整える。
大分落ち着いた頃に、孵化装置を抱えたヴェルガが戻ってくる。
ヴェルガは慎重に孵化装置を床に置いた。
俺は立ち上がり駆け寄る。
「これをインベントリにしまってくれる?」
「おう」
ヴェルガの言われた通りにインベントリにしまう。
「今度はその孵化装置を選択してみて」
孵化装置を選択すると、修理という文字が出てきて、さらに下の方には必要な素材が書いてある。
「必要な素材が揃えば直せるみたい。これ借りてていい?」
「もう俺はいらないから修理出来たらハルナにあげるよ」
「いいのか?」
そう聞き返すとヴェルガは頷く。
「ありがとう、大事に使うよ」
「今度は何を孵化せるんだ?」
「ドラゴンだよ」
そう言うとヴェルガは驚く。
「ドラゴン!? 凄いじゃなかハルナ! でも、そうしたらインセクトテイマーじゃあなくなっちゃうね……」
「俺じゃねーよ。友達がだよ」
「あ、そうなんだ」
何故か安堵するヴェルガ。
「もう、ここまで来たら虫以外をテイムする気はないよ」
「そうか……あ、そろそろ仕事行かないと」
「わかった。じゃあ俺はこれで帰るよ。あ、そうだ。ドラゴン孵化させたら見せにくるよ」
「ふふ。楽しみにしてる」
ヴェルガと別れてから俺はログアウトした。
ヘッドギアを外して、枕の近くに置いているスマホを手に取る。
海都に修理が必要だけど借りたことをメッセージで伝える。
「お腹空いた……」
小腹が空いたのを感じた俺はキッチンに行く。冷蔵庫から適当なものを取り出して電子レンジで温める。
チンと電子レンジが鳴り、蓋を開けようするときにインターホンが鳴る。
「誰だろう……」
今日は誰かくる予定もないし、兄ちゃんから荷物が届くとも聞いてない。
俺は慎重に玄関に向かっているとスマホが鳴る。画面を見ると、颯音から「春名、家にいる?」とメッセージが来た。
返信すると「開けて」っと直ぐに返信が来た。
俺は溜息を零してから玄関のドアを開けた。
「颯音、くるなら事前に……って海都も一緒かよ」
玄関を開けると颯音と海都が立っていた。
「春名、あがってもいい?」
「どうぞ。部屋で待ってて」
「お邪魔します」
「お邪魔します」
颯音と海都は俺の部屋に入っていく。
俺は少しだけ冷めた昼飯を持って部屋に行く。
部屋に入ると二人とも床に腰かけていた。
俺を見て颯音はが言う。
「お昼まだだったの?」
「さっきまでゲームしてからな。てか、なんの用だよ」
スマホを見ながら海都が言う。
「偶然、颯音とばったり会ってな。そしたら、颯音が「春名の家に行こうぜ」ってなって」
俺は颯音をじっと見る。
「ご、ごめん……まずかった?」
「別に」
そう言い俺は昼飯を食べていく。
「お、孵化装置借りられたんだ。なんの素材が必要なんだ?」
海都が尋ねてくる。
「鉄と金のインゴットと水晶を必要数手に入れれば修理出来る」
「鉄と金のインゴット……どこで手に入るんだ?」
「多分だけど、鉄鉱石と金鉱石を精錬して作るんだと思う」
颯音が言う。
「鉱石なら多分火山だよね。水晶も火山かな?」
「かもな」
「しばらくは素材集めか。あ、そうだ。アトラさんに素材が余っているか聞いてみるのはどうかな?」
「誰?」
頭を傾げる海都。
「颯音の防具を作った人だよ」
「ああ、なるほど。職人なら素材持ってそうだな。よし、その案でいこう」
そう言って海都は立ち上がる。
「じゃあ後で合流な」
「了解!」
返事した颯音も立ち上がる。
「え、もう帰るの? てか、話だけならうち来なくてもよかったじゃん!」
「「確かに」」
俺は呆れて溜息を零す。
「家に着いたら連絡する」
「じゃあね春名」
二人を見送ってから俺はベッドで横になる。そして、眠気に襲われていつの間にか眠っていた。
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