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第161話

 兄ちゃんを見送ってから俺は直ぐにゲームを始めた。

 街の中層にある転移門を潜り、樹海エリアに向かう。


「ヴェルガは仕事かな? 家に行ってみるか」


 いつもよりも少しだけ静かな大通りを抜け、小道に入り進んで行く。

 ヴェルガの家の前に着いた俺はドアをノックした。


「はーい」


 家の中からヴェルガの声が聞こえてきて玄関のドアが開く。


「ヴェルガ、おはよう!」


「ハルナ、久しぶり。元気にしてた?」


「うん、元気元気。ヴェルガも元気そうでよかった。ヴェルガ、今日は仕事?」


「そうだけど、何か用?」


「前にクロガネを孵化させた機械を貸してほしいんだ」


「あーあれか……」


 気まずそうにするヴェルガ。


「なんかあった?」


「あの機械さ。クロガネを孵化してからなんか壊れたみたいんだよ」


「修理とかも無理そうな感じ?」


「ちょっと見てもらっていい? プレイヤーなら直せると思うんだ」


「いいけど、仕事の時間大丈夫なの?」


 ヴェルガは家の中にある時計を見る。


「あ……ごめん。昼の一時ぐらいに家に来れる?」


「あ、うん。大丈夫だと思う」


「じゃあその時に」


「わかった。もう仕事行く?」


「そうだね、そろそろ行かないと」


「転移門まで行くから途中まで一緒に行こう」


「わかった。ちょっと待ってて」


 玄関のドアが閉まり、しばらくすると装備を身に纏ったヴェルガが出てくる。

 ヴェルガと色々話しながら大通りを進んで行く。転移門の前でヴェルガと別れて、俺は再び海原エリアに。

 特に寄り道をすることなく下層の桟橋に行き、大きくなった船を出した。


「おお、でっけぇ!」


 見た目は大体一緒だけど、大きさは倍以上になっている。

 船内に入ってみると、設備の配置とかはそこまで変わっていなかったけど、とても広くなっていた。

 これならみんなを出しても大丈夫そうだな。

 船先のデッキも前よりも広くなってるし、アオガネも日向ぼっこ出来るだろう。

 少しだけ配置が変わった操縦室にもたつきながらも、マニュアルを見ながらどうにか自動操縦にして拠点に向かった。

 拠点に着いた俺は家の前に淡い水色を放つ水晶――転移装置を設置した。


「設置は済んだし、試しに起動してみるか」


 転移装置に手を翳すと目の前にウインドウ画面が現れる。そのウインドウ画面にはエリアの名前が表示されていた。

 これで行きたいエリアを選んで転移するんだな。試しに樹海エリアに行ってみよう。

 樹海エリアを選択すると、一瞬視界が暗転し、俺は樹海エリアの転移門前に立っていた。

 転移門の前に転移するみたいだな。今度は拠点に帰ってみよう。

 メニュー画面にある拠点を選択したら、一瞬で拠点に転移した。

 うん、すっげぇ便利な装置だな。これは購入してよかったわ。

 試運転も終わったし、レベル上げに行こうか。

 どこがいいか……全員上げるとしたら樹海か海原の島だな。

 しばらく海を漂って島が見つからなければ樹海に行こうかな。

 あ、そうだコガネたちのご褒美を買わないとだな。

 俺は転移装置を使って海原エリアに飛んだ。


「あれ、やっていない……」


 ルーシャさんのお店に行くと「close」と書かれた看板がドアにかかっていた。

 ドアのところに営業時間が書かれている。どうやら十時からスタートのようだ。

 今更、開店時間を知るとは……あと一時間もあるのか、適当にぶらつくか。


「なんだこの店?」


 あまり行かない方に歩いていると暖簾が掛かっているお店を見つける。

 外から中の様子を窺うと、中は少し薄暗く、ぎっしりと本が詰まっている本棚が並んでいた。

 暖簾をくぐって俺は静かに中を見渡す。適当に一冊手に取ってみると足音が聞こえ、顔を向けると、そこには着物姿でふわふわした黒髪の中学生ぐらいの身長の人が立っていた。


「いらっしゃい。なにか探してるかの?」


 その人の頭上を見ると、オピオと名前が表示されていた。てことは、この人NPCか。


「あ、いえ……ただ、なんとなく寄っただけで。ここは何のお店なんですか?」


「ここは儂が集めた本を置いているだけの趣味の店じゃよ」


「へぇー沢山あるんですね」


「長年集めたからのう」


「長年……長年? え、おいくつなんですか?」


「はて……いくつかのう。千年越えてから数えてないから忘れたのう」


 頬をぼりぼりと掻く店主。

 見た目は子供だけど年齢が千歳以上という事実を知り俺は驚いた。




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