第16話
戦いが終わると両手が光りだし、光の球体が上空に昇っていく。光の球体が割れるとコガネが現れ、落下してくるコガネを俺は下でしっかりと受け止めた。
「おかえりコガネ」
「シュ!」
ゴブリンシャーマンの攻撃で体力が半分まで削れていたのに回復していて体力が全快していた。
「さっきのコガネの声?」
「シュ?」
そう尋ねると何のこと?と言いたげな瞳を向けるコガネ。本人が言いたくないなら無理に聞かないけど、初めてコガネに名前呼ばれた。ちょっとむずがゆい。
それと思ったのが僕って言ってたよな。てことは、雄? まぁどっちでもいいけど。
俺は優しく頭を撫でることにした。
「ハルナ君! さっきの凄かったよ! 何したの!」
「さっきのは……」
視線をコガネに向けてから俺は言った。
「さっきのは、スパイダースネットて言う俺とコガネの共鳴技です」
共鳴技とはこのゲーム独自のシステムで、二人以上で繰り出す必殺技みたいな合体技だ。
人同士で出来るものだと思っていたけど、まさかのテイムしたモンスターとでも共鳴技が出来るとは知らなかった。
「あれ共鳴技なんだ! 凄いな~。共鳴技ってモンスターとも出来るんだね」
「みたいですね。俺も驚いていますよ。それよりも報酬の宝箱取って出ましょうか」
「そうだね」
ゴブリンシャーマンが立っていた場所に宝箱が出現していた。
宝箱を開けると報酬金と悪鬼の心霊杖という名の武器が入っていた。
「報酬金は分けるとして、ハルナ君杖いる?」
「うーん、魔法に興味は無くはないけど、大丈夫です」
「じゃあ杖は私が貰うね」
モレルさんは杖をインベントリに仕舞う。
報酬金を分けてから俺達は部屋の奥にあった魔法陣を通ってダンジョンの外に出た。
久しぶりの外に俺は伸びをした。
「それじゃ帰りますか」
「うん」
ゆっくり街に向けて歩き出す俺とモレルさん。
「シュ!」
そんな中、腕に抱かれたコガネは口を開けてパクパクさせる。
「忘れてないよコガネ。約束だからね」
「シュ」
コガネは俺の言葉を聞いて安心したようで腕から抜け出して頭によじ登る。
「シュ!」
「早く行けって? はいはい。行きますよ。モレルさん走りましょう」
「ふふ、うん!」
行きよりも時間かからず街に戻った俺はモレルさんと別れ、串焼き屋に向かった。
「おじさん、串焼きください!」
「お、いらっしゃい! ちっこいのもいるな!」
「シュ!」
足上げて返事するコガネ。
「おじさん、沢山買ってもいいですか?」
「ん? なんでだ?」
「えっと、こいつとの約束ってのもあるけど、こいつのおかげで助かったし、ダンジョンを攻略出来たんです。だからお礼も込めてなんですけど……無理そうならいつもの量でお願いします」
「ふむ。そういうことなら沢山買っていってくれて構わねぇよ!」
「ありがとうございます!」
三袋分の串焼きの料金を渡して受け取って、店主にもう一度お礼を言ってから人気の少ない場所を探しに街を散策した。
しばらく散策すると寂れた公園みたいな場所に辿り着いた。
「静かだし、人全然いないな。ここで良いかな」
少しボロボロのベンチに腰掛ける。ミシッて音がして怖かったけど平気そうだな。
「シュ!」
待ちきれないコガネは頭から飛び降りて膝上に移動した。
「今あげるから――」
インベントリから取り出した瞬間、コガネは俺の手に飛びかかり串焼きを奪い取って頬張った。
コガネが夢中で食べてる近くにそっと紙袋を置いて行く。一本だけ紙袋から取り出して俺も串焼きを食べた。うん、美味しいな。
「濃厚な一日だったなぁ~……」
ヴェルガと仲良くなって、森でコガネと再会してテイムして、それからワイルドボアに追いかけられながら森の中を駆け巡ったな。
あとは白い花が咲き乱れていた丘で謎のボスモンスターに遭遇したっけな。あれはヒヤッとしたけどおかげで装備貰えたし、また会えたらお礼を言おう。
で、モレルさんとダンジョン攻略。濃厚過ぎでしょ。
俺は思い出し笑いをした。
「てか、もう零時回ってた……」
そろそろログアウトしようと思いコガネを見ると三袋目に顔を突っ込んでいた。
「ゲップ……」
満足そうな表情をするコガネの口の周りを綺麗にする。
「食べ過ぎだよコガネ。そんじゃそろそろログアウトするよ。明日もよろしくな」
コガネは返事するのも面倒なのか足で返事した。
「戻れコガネ」
光の粒子になったコガネは武器に吸い込まれていくのを見届けたから俺はログアウトした。