第154話
青色になった球体は俺の足元に近づき長靴と一体になり、長靴の姿が変わっていく。
皮だった長靴は機械化し両サイドに青い線の刺繍。両足首の部分に切離し可能な水中用ビットが付き、足裏の踵にはスクリューが取り付けられている。完全に水中特化の【共鳴】だな。
アオガネが進化したことでアオガネも【共鳴】のスキルを覚えたのだ。
スクリューを起動して、水中を高速で動いてみる。水中の移動がすっげぇ快適。
炎の矢が止むと、颯音は器用に水中に漂う氷の塊を足場に移動しだす。
「グラアアアアア!」
リヴァイアサンが雄叫びを上げた瞬間、周囲にいくつも竜巻を生成された。
颯音は足場である氷の塊にしがみつきながら、竜巻に飲まれていく。世話がかかるな。
俺は水中用ビットを切り離し、颯音に飛ばした。
しばらくすると、竜巻の中から水中用ビットに連れられ離れていく。
これで遠慮なく出来るな。先ずは、あの竜巻を消そう。
『クモガネ、アカガネ』
アカガネとクモガネが背中に行き、二体の共鳴した翅を展開。
『【共鳴技・フロストアンドフレイム】』
氷と炎の塊を練り混ぜる。拡大していく塊を圧縮して竜巻に向かって投げた。
俺は投げて直ぐに颯音と海都に伏せるようメッセージで知らせる。
次の瞬間、竜巻の内側から大きな爆発が起き、部屋全体に衝撃がくる。俺は盾を構え、クモガネの氷の壁も展開して衝撃に備えた。
さっきの爆発で竜巻は消え、部屋全体を満たしていた水が吹き飛び、リヴァイアサンの体全てが凍って出来たステージに上がる。
「春名! もう少し早く言えよな!」
水がなくなって水中呼吸機を外した海都が叫ぶ。
海都の体力を見ると半分を切っていた。
「わりぃわりぃ。シロガネ、海都の体力も回復してくんね?」
『仕方ないな』
シロガネは海都の元に行き体力を回復させる。
「春名、次俺!」
颯音の体力も半分切っていた。俺のせいだな、これは。
「グリャアアア!」
リヴァイアサンが吠えると、どこからともなく半魚人が何体も召喚された。
「半魚人は俺がやるから、春名と海都はリヴァイアサンを」
それだけいって体力をあらかた回復した颯音は駆け出し半魚人に突撃していく。
「春名、時間を稼いでくれるか? 大技を決める」
「了解。コガネ、クロガネ。お前たちも【共鳴】だ」
三体もそれぞれ配置に着き装備が変わる。
まずは動きを止める。
「【共鳴技・スパイダースネットボルト】」
両手から電気を帯びているワイヤーを伸ばしてリヴァイアサンを拘束する。
リヴァイアサンは抵抗しようとワイヤーを噛みちぎろうとしたが、ワイヤーを噛んだ瞬間感電し、思わずワイヤーを離した。
その隙に、ワイヤーはどんどん伸びて、リヴァイアサンを拘束し、電撃が襲う。
俺は再び翅を展開して一気に近づく。
「【共鳴技・ブレイカードリル】」
ギュイーンと音を立てドリルが回転しだす。
リヴァイアサンの攻撃を掻い潜り、腹にドリルをぶち当てる。
「グリャアア……!」
悲鳴を上げながら暴れるリヴァイアサン。
動けないうちに俺はドリルでダメージを与えた所に足を置き叫んだ。
「【共鳴技・ハイドロカノン】!」
水中用ビットから圧縮された水の弾丸がリヴァイアサンを貫く。
急所に入ったのかリヴァイアサンの体力が残り二割まで減った。
「春名!」
海都から合図が来て俺は離れる。
「【ラスト・インフェルノ】!」
海都の弓から放たれる漆黒の炎がリヴァイアサンを包む。
海都のスキル【ラスト・インフェルノ】は一日に一度しか使えない制限付きに、最大体力の半分を消費という対価もあるけど、高威力で長時間の継続ダメージがある海都が覚えているスキルの中では最強の技だ。
「グラアアアア……!」
リヴァイアサンは水球を作り出し、黒い炎を消そうとするが消えない。
みるみるうちにリヴァイアサンの体力が減って行く。
残り一割!
「「あっ!」」
リヴァイアサンの顔面の前に颯音がいる事に気がつき、俺と海都は声を上げる。
「うおおお! 【共鳴技・ダイヤモンドダスト】!」
颯音は雄叫び上げながら左拳でリヴァイアサンの顔面をぶん殴ると、リヴァイアサンは殴られたところから凍っていく。しっぽの先まで凍る頃にはリヴァイアサンの体力はなくなった。
崩れ落ちるリヴァイアサンの上に颯音は着地して、俺と海都に満面の笑みを浮かべピースをする。
「一番美味しいところを持って行ったな」
「たく……」
「二人とも! 宝箱が出現したから早く来てくれ!」
俺と海都はとぼとぼ歩き出す。
さて、宝箱には何が入っているかな。