第148話
島に着いた俺は海から上がり、浜辺で装備を乾かす。
「相変わらず泳ぐの早いなアオガネ」
『う、うん。泳ぐの好きだから……少し、泳いでていい?』
「おう。あんま遠くには行くなよ」
アオガネはこくりと頷き、海に飛び込んで行く。
本当に泳ぐのが好きなんだな。
俺は島の中心にあるボロボロの家がある方に歩きだす。
ちょうど家に辿り着く頃に船が浜辺に着いた。
俺はみんなが来るのを家の壁を背にして座って待つことにした。
「ん?」
船先のデッキにコガネとクロガネが姿を見せて、クロガネがコガネの背中に乗る。
コガネは口から糸を出しヤシの木に絡めて一気に海の上を飛び陸地に着地した。
コガネの背中から降りたクロガネと一緒に猛ダッシュで俺のところに来る。
『なんで置いていくんだよ!』
明らかに怒っているよ様子のコガネが迫ってくる。
「え、ご、ごめん……痛っ!」
俺の足をクロガネが強く挟んできた。
「強く挟むなよクロガネ……」
『ふん』
一発挟み直ぐに離してそっぽを向くクロガネ。
「なんだよコガネもクロガネも……あれか? 置いてかれて寂しかったのか?」
『ち、違う! 寂しくない! ハルナが居なくても平気だし!』
『そ、そうよ!』
コガネとクロガネは動揺しだす。
寂しいと思ってくれていたのか。二体には悪いけどすっげぇ嬉しい。思わず顔がニヤけるな。
俺は立ち上がって二体の頭を撫でた。
「ごめん、置いてっちゃって……もう置いてかないよ」
『仕方ないな~』
『そうね』
俺は二体を抱きしめる。
本当最高だなこいつらは。
『あれ? アオガネは?』
キョロキョロと周りをみるクロガネが聞いてくる。
「アオガネなら泳いでるよ。コガネとクロガネも泳いでいくか?」
『海、しょっぱいから嫌い。甘いもんまだある?』
「あるよ。あ、ここなら全員呼び出せるからちょっと待って」
俺は残りのメンバーを呼び出した。
『『『主!』』』
ビートル隊のアインたちが声を揃えて主と呼び周りを囲む。
『見ない間に増えている……』
『誰この子たち?』
「あ、そうか。コガネとクロガネは見るのは初めてか。前にクロガネが見つけてくれたビートルワームたちが進化したんだよ。アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュン、ゼクスだ。仲良くするんだぞー」
コガネとクロガネはアインたちと和気あいあいとしている。
問題無さそうだな。
俺は全員に洋菓子をあげた。
もう洋菓子の在庫なくなったか。今度買いに行かないとな。
「春名ー!」
手を振りながら颯音が走ってくる。その後ろから海都が歩いてくる。
「おせぇぞ、二人とも」
「お待たせ。もう鍵は……その様子だとまだしていないんだね」
「おう。俺が鍵を纏めて鍵穴に挿さないといけないからな。マニュアルに書いてあった」
「そうなんだ。はい、鍵」
俺は颯音から鍵を受け取る。
インベントリに仕舞っている鍵を取り出して、鍵を重ねると一本の鍵になった。
ドアの前に行き、鍵穴に鍵を挿し込む。
右に回すとガチャっと音が鳴りドアがゆっくり開く。
俺と颯音は慎重にドアから中の様子を確認した。
「中は狭いし、なんもないね」
「そうだな」
俺と颯音はゆっくり中に入る。
埃っぽく感じた俺は換気するために窓を開けた。
「おお? 意外と狭くない?」
遅れて海都も入ってくる。
「ここから必要な素材を集めて自分たちで改造するか、お金を払って組合所に依頼するかで改造が出来るって」
「へぇー、面白いなそれ」
「組合所で依頼するよりも自分たちで改造していこうよ! どうかな? 春名、海都」
「俺はどっちでもいいぜ」
「金に余裕があれば依頼するのもいいと思うぞ」
「まぁ気長にやろうよ。あ、そうだ。名前が付けれるみたいだけど、なんかつける?」
そう聞くとすぐ思いついたのか颯音が言う。
「モンスターの楽園!」
「却下。ダサすぎ」
「颯音、それは流石にないわ」
「じゃあ二人も考えてよ!」
「別になくてもいいんじゃね? あとからでもいいんだしさ」
「えぇーなんかつけようよ!」
「そんなことより、内装を決めようぜ!」
颯音と海都がどんな内装にしようか話しあっているのを聞きながら、俺は窓から見える自由に遊んでいるコガネたちを眺めていた。
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