第141話
「ハルナっちのフレンドっすか?」
「はい、グラルさんとベオルさん。エレナさんとユリーナさんとモレルさんです」
「アレンっす。よろしくっす。で、こっちが――」
「未来の妻、フリッジよ」
「「「妻!?」」」
エレナさんとユリーナさんとモレルさんが声をあげて驚く。
一方、アレンさんは顔に手を当ててた溜息をつく。
「なんでここで言うんすか!」
「秘密にしてないじゃん、結婚のこと」
「そりゃそうっすけど……ここで言わなくても」
「自慢したいの。ほら、そろそろ幌馬車の時間よ?」
「そうっすね。じゃあみなさん俺たちはこれで」
「あ、アレンさん」
お辞儀して立ち去ろうとしているアレンさんを呼び止める。
「なんすか?」
「有料でもいいから気球を貸してください」
「気球を? あー……なるほど、そういうことすか」
エレナさんとユリーナさんとモレルさんは頭を傾げている。
グレンさんとベオルさんは俺が言っている意味を理解して「ああ、その手があったか」と納得する。
「いいっすよ」
「ありがとうございます!」
「ただし、俺たちも連れていくのが貸す条件っすよ」
「もうすぐで幌馬車の時間なのにその条件でいいんですか?」
「いいんすよ。幌馬車だと知らない人と相席になっちゃうし、時間が掛かるんすよ。それだったら、知り合いとワイワイしながらで幌馬車よりも早い方が良いに決まっているっすよ」
「俺たちは構わないぜ」
「分かりました。アレンさんとフリッジさんも一緒に行きましょう」
「そう来なくちゃ! それじゃ早速行くっすよー」
アレンさんとフリッジさんも加わり、一緒に街の外に向かった。
砂岩で出来た道を外れ、人が居ないのを確認してからアレンさんはインベントリから気球を取り出した。
「これに乗って行くのね! おっさき!」
エレナさんが一番最初に籠に乗り込んで、他の人たちも続いて乗り込んでいく。
俺はシロガネとクモガネとアカガネの三体と、アインたち六体を呼び出す。
『また、これを運ぶの……』
「これでラストだからさ。一緒に運んでくれないか?」
『いっや! もう重たいの運びたくない!』
シロガネは体を光の粒子に変えて黒い球体に入っていく。
「シロガネ~」
『……やらないから』
相当やりたくないようだ。前回よりも数は少ないけど行けるかな。
『クモガネ、この暑さは平気?』
『うん、これぐらいだったら大丈夫。ありがとうアカガネ』
クモガネの問題もあったな。
『主! 今度こそ主の期待に応えるよう我らビートル隊は全力でお運びいたします!』
「ビートル隊って……あんま無理すんなよ」
『やるぞ!』
『『『おうー!』』』
やる気満々だな。アインたちはシーガゥの群れ戦で全員レベルが12まで上がっている。
ステータスも上がっているし大丈夫だろう。
アカガネが俺の肩に止まる。
『ハルナ、試したいことがあるの』
「試したいこと?」
そう聞き返すとアカガネは光の粒子になって黒い球体に吸い込まれて行く。
黒かった球体は赤色に変わった。
アカガネもレベルが上がり18になっている。勿論、その時に【共鳴】も覚えた。
「試したいことって【共鳴】のことだったのか。まだやったことないしいいぜ」
『うん、行くよ!』
赤い球体は俺の背中に移動してマントと一つになり、機械な的な翼になった。
風切り部分から勢いよく火が噴射され、その勢いで俺は浮かびあがり、俺は縦横無尽に飛び回った。
「おお、すっげぇ! 早い早い! すっげぇよアカガネ!」
『えへへ』
「おーい! ハルナー!」
気球からグレンさんが叫ぶ。
おっと、つい夢中になってた。
俺は急いで降りた。
「ハルナだけずるい……」
「あはは、すいません。直ぐ準備します」
口を尖らせるエレナさんに謝り、アレンさんから縄を受け取り、気球に括り付ける。
『ハルナ、楽しそう……』
背中にくっつくクモガネが拗ねたように呟く。
「クモガネも【共鳴】をお願いしていいか?」
『僕も?』
「うん、クモガネとアカガネが同時にやったらどうなるか気になってさ」
『うーん、分かったやってみる』
「て、ことだからアカガネ一旦【共鳴】を解除してくれ」
『わかった』
アカガネが【共鳴】を解除してから、二体は同時に【共鳴】を使う。
水色の球体と赤色の球体は背中に移動すると、二つは混ざり合い、背中に薄い円盤が装着された。
展開すると内側に白い色の四枚のひし形の翅、外側に赤い色の四枚のひし形の翅が現れた。自由に動かせるみたいだな。なんかファンネルみたいだ。
『主! 素晴らしいお姿です!』
「あ、ありがとう。みんな、出発するぞ」
アインたちは縄を掴み、俺も気球の方に移動する。
気球はゆっくり浮き始め、ダンジョンのある方に向かった。
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