第135話
「ディオガ!」
トオルさんは怒鳴り散らしながら場外にいるディオガさんに近寄る。
「なんで邪魔をする! これからだって言うのによ!」
「そろそろ時間だからだ」
「時間だ? なんの?」
ディオガさんは溜息をつく。
島に一緒に向かう人たちもやれやれといった表情をしている。
「悪魔の島のことだ」
「あ、忘れてた」
ディオガさんは大きな溜息を吐いた。
「そういうことだからハルナ、この続きは帰ってから頼むわ。あ、それと」
トオルさんは手招きしてくる。
「戦ってくれたお礼だ。この中から一つやる」
「え、一つだけ? 全部じゃないんですか?」
「全部渡したらもう戦ってくれねぇだろ? だから、また戦ってくれるならまたやるよ」
「そうですか……」
石は欲しいけど、トオルさんと戦うのはな……ダンジョンで入手したって言ってたし頑張って探してみよう。
「で、どれにするんだ?」
「んー……それじゃ、黒い奴で」
俺はトオルさんの掌から黒い石――黒曜石を取る。
「ハルナ、話が終わったならこっちに来てくれ」
ディオガさんに呼ばれてトオルさんと一緒に向かう。
専用エリアがなくなり、武器は共鳴していたコガネたちと紋章に戻っていく。
「アレン、気球を出してくれ」
「あいよ!」
紫色の髪にチャラチャラとした格好の人がインベントリから大きい気球を取り出して目の前に置く。
「みんな、乗ってくれ」
ディオガさんの指示でぞろぞろと気球に乗り込んで行く。
俺はアインたちとシロガネとクモガネとアカガネを呼び出した。
隣に来ていたグレンさんが言う。
「見たことない奴も合わせて……十一体? か?」
「はい」
「全員飛べるタイプか」
「これだけいればいけると思うんですけどね。ディオガさん、なんか紐みたいなのありますか?」
ディオガさんは少し考え口を開く。
「ユラン、光の縄を出してくれ」
「はいはい~」
のほほんとした女性が呪文を唱えると沢山の光る縄が生成された。
「これぐらいで大丈夫?」
「ありがとうございます」
縄を受け取り色んなところに括りつける。
アインたちにも縄を持ってもらう。
アインとツヴァイは前方、ドライとフィーアは左右、フュンとゼクスは後方の籠を持つ担当。
シロガネとアカガネは気球部分を持つ担当だ。
「クモガネ、【共鳴】を」
『はーい』
黒い球体にクモガネが吸い込まれて水色に変わり、翅を展開した。
『あ! ずるい! 私も共鳴がしたい!』
俺の周りを飛び回り我儘をいうシロガネの頭を撫でる。
「シロガネ、ごめんな……また今度な?」
『今度っていつ?』
俺は言葉に詰まる。
「あー……これが終わってならいつでもいいぞ」
『……約束だからね?』
「わかった、約束」
シロガネの足を持って指切りみたいなことをする。
納得してくれたシロガネは持ち場に帰っていく。
「ディオガさん、あげてみます」
「わかった」
「みんな! 持ち上げるよ!」
俺も気球のてっぺんに移動して縄を引っ張りあげる。
俺に合わせてシロガネたちも引っ張り気球は無事に上がった。
「問題なさそうーか!」
「大丈夫でーす!」
「よし、一旦下げてくれー!」
ディオガさんの指示で気球を降ろした。
「ディオガさん、問題ないので依頼を受けます」
「わかった。それじゃ、上層に向かうぞ」
ぞろぞろと俺たちはこの街の上層に向かう。
「ねぇ君! 召喚できるモンスターはあれだけなのか?」
黒縁眼鏡が特徴の男性が話しかけてくる。
「まだいますけど、えっと……」
「クルルンだ。そうか、まだいるのか……是非とも見せてもらいたいなぁ~」
「嫌です。手札を全部見せたくないので」
「そっか……残念だなぁ~」
「あっちに行ってろクルルン」
俺の肩に腕を回してトオルさんがクルルンを追い払う。
渋々とクルルンさんは離れていった。
トオルさんの聞きたくもない自慢話を聞き流しならしばらく歩き上層にある広場に着く。
アレンさんが再び気球を取り出して、全員が乗り込んだの確認して、俺たちは配置に着き気球を浮かばせる。気球はどんどんと上昇していき街が遠のいていく。
『ハルナ、気をつけて行って来いよ』
「待っているぞ」
島がある方角に進んでいっているとグレンさんとベオルさんからメッセージが飛んできた。
俺は二人に「行ってきます」と返信をする。
早く送り届けてみんなで旅したいなぁ〜
次回の更新は2/1に予定しております。
2月も少し忙しいのでしばらくはこのままの更新頻度になります。