第134話
「これはな、ダンジョンで手に入れたお宝なんだけどよ。使い方が分からなくて困っていたんだけども、お前さんの存在を知ってこの宝石の価値が分かったんだよ」
ほれとトオルさんは真っ赤な色をした宝石を投げてきた。
トオルさんが投げてきたものは紅玉石。俺が持っている琥珀石と同じように特定のモンスターに使うと進化させることが出来るモノだった。
トオルさんに視線を向けると掌にある青、緑、黄、白、黒色の宝石を見せびらかす。
あれ全部がそうなのか……
「その様子だと相当欲しい代物なんだろう? どうだ? 戦う気なったか?」
「……お金で支払うって言っても断りますよね?」
「くだらねぇことを聞くんじゃねぇ」
トオルさんの答えを聞いて俺は溜息をつく。
「わかりました。楽しませればいいんですよね? 勝ち負け関係なく」
「お前じゃ俺には勝てないかならな」
トオルさんの言葉に内心イラっとくる。
俺は紅玉石をトオルさんに投げ返した。
「その言葉、忘れないでくださいね」
「よし、そうと決まればやろうぜ。ディオガ、そういうことだから口出しすんなよ」
トオルさんは直ぐにルールを決め俺に提示をして承諾した。
「どちらかの体力がなくなったらそこで終了。まぁ頑張ってくれや」
俺とトオルさんを囲うように専用のエリアが生成させる。
「先手は譲るぜ」
「なら……遠慮なく!」
盾を回転刃にして投げる。
トオルさんは体をずらして簡単に躱す。
「ん?」
回転刃につけた糸を引き寄せて回転刃を戻す。
だけど、トオルさんは裏拳で回転刃を弾いた。
「さっさとモンスターを召喚しろよ虫使い」
トオルさんは睨んでくる。
俺はクモガネのスキル【凍てつく鱗粉】と気配遮断で姿をくらます。
「あくまでも呼び出さないつもか? なめてんじゃねーぞっ!」
トオルさんは地面に向けて思いっきり殴り風圧を起こす。
風圧のせいで鱗粉が吹き飛んでしまいトオルさんに居場所がばれてしまった。
「期待外れだ」
一瞬で俺との距離を詰めてトオルさんは殴りかかってくる。
「はぁ?!」
トオルさんの拳は俺の姿を映し模っている氷の壁を殴っていた。
クモガネのスキル【凍てつく壁】には防御手段としての使い方ともう一つ、壁に鏡のように自分の姿を映す使い方がある。それと、映した姿を一定時間保存してくれる効果がある。
まぁ俺が使ってもここまでは出来ないんだけどね。
「召喚しないんじゃねのかよ」
俺の隣でひらひらと飛んでいるクモガネを見ながらトオルさんは呟く。
「呼ばないなんて一言も言ってないんですけどね! クロガネ!」
地面に潜んでいるクロガネに合図を送ると地面が砂に変わってズルズルとトオルさんが沈んで行く。
クロガネのスキル、小範囲の地面を砂に変化させる【砂化】を覚えたことで以前よりも【砂地獄】が使えやすくなった。
「畳み掛けるぞ。アオガネ!」
アオガネは勢いよく水を口から吐き出してトオルさんに当てる。
「コガネ!」
天井に張り付いているコガネからバチバチと音がする次の瞬間轟音と共に雷が放たれた。
俺とクモガネは急いで氷の壁を作り、コガネが放つ電撃を食らわないように防ぐ。
煙が晴れるとトオルさんは黒い大剣を掲げていた。
コガネの攻撃を防いだのか。上手くいったと思っていたけど。
「アハハ! 俺に剣を抜かせるとは面白れぇな!」
トオルさんはピンピンしてらっしゃる。
「ふんっ!」
大剣で砂を叩き、トオルさんは無理やり脱出する。
「それで、これでおしまいか?」
トオルさんは鋭い視線を向けてくる。
「みんな【共鳴】だ」
コガネとクモガネとクロガネが黒い球体に吸い込まれて球体の色が変わる。
「アオガネ、戻れ」
アオガネは紋章に戻っていく。
俺は両手を特殊な革手袋に変え、右腕には特大なドリルを装着して翅を展開した。
「面白れぇ! そうでなくちゃな!」
俺とトオルさんは駆け出す。
「そこまでだ!」
場外からディオガさんの制止する声が響き渡った。
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