第132話
ルーシャさんのお店に着いたけど、プレイヤーカードではまだルーシャさんはログインしていない様子。
モレルさんはログインをしているみたいだけど出かけているのかな?
俺はメッセージを飛ばす。
『あ、ハルナ君! どうかしたの?』
「今、お店の前にいるんですが……」
『本当? ちょっと待ってて!』
しばらくすると店のドアが開き制服姿のモレルさんが出てくる。
「あれ? みんなお揃いでどうしたの?」
俺はモレルさんに経緯を話す。
「今日、ルーシャは仕事で来れないのよね」
「そうですか」
「ごめんね。まぁでも幼虫苦手だから進化してから見せてあげてね」
「はい、そうします」
「そうだ! さっき試作品を作ったからさ、進化させるついでに味見をしていってよ!」
「「試作品!!」」
甘いもの好きのエレナさんとユリーナさんが食いつく。
「そうしましょうハルナ君!」
「え、あ、はい」
「ほら、みんな行くよ!」
エレナさんとユリーナさんはモレルさんの続いて店内に入っていく。
「悪いなハルナ」
「大丈夫ですよグレンさん」
俺とグレンさんとベオルさんも店内に入って奥の部屋に向かった。
テーブルに色々とモレルさんが作った洋菓子が並びそれぞれが手に取り舌鼓を打つ。
その隣で俺は六体のビートルワームを呼び出した。
『『ごはん! ごはん! ごはん!』』
俺を見るなりビートルワームたちは飯をねだって集まってくる。
「静かにしろよな」
インベントリからシロガネ産の瓶に入った蜂蜜の蓋を外して床に置くと、ビートルワームたちは群がった。
周りを見渡すとグレンさんたちは若干……いや、かなり引いていた。
「その量はエグイ……」
「一、二匹ならともかくその数は俺でも無理だ」
「無理無理無理! 気持ち悪い!」
グレンさんとベオルさんとエレナさんの三人は平気そうなユリーナさんとモレルさんの後ろに隠れながら言う。
「……あれぐらいで情けないですよ三人とも。ね? モレル」
「そうよ。イニシャルGよりかは全然マシよ!」
エレナさんは女性だからわかるけど、グレンさんとベオルさんがビビッているのは少し面白い。
「笑わなくてもいいだろうハルナ……」
「すいませんベオルさん。お、進化が出来るようになりました」
ステータスを見ると満足度のゲージが最大になっていた。
俺は食事中のビートルワームたちに近寄りしゃがむ。
「アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュン、ゼクス」
名前を呼ぶと一斉に見上げてくる。
俺はアインを持ち上げた。
「アイン、進化させるよ」
『進化?』
「じっとしててね」
俺は進化と書かれているボタンを押した。
アインの体が光りだし姿がみるみるうちに変わっていく。光が収まるとかなりデカいサイズの図鑑とかでみるカブトムシの姿になった。
手を離すとアインは自分で翅を動かし滞空する。
アインはビートルワームからビートルに進化。
スキルは【飛行】と角に力を溜めて攻撃する【角で突く】の二つだけ。
『これが進化……力が漲ってくる……! 感謝いたします、主!』
「あ、主?」
アインからの呼称に俺は困惑した。
主って……なんか嫌だ。
「ハルナでいいって、アイン」
『なりません。主は我らの王、呼び捨てには出来ません』
「え……もう、それでいいよ……」
言っても意味がないと思い諦めた。
『主、他の者の進化も』
「あ、そうだった」
俺は急いで残りの五体も進化させた。
見た目はアインと一緒でスキルも【飛行】と【角で突く】の二つだけだった。
『『主!』』
「お前らもか……」
五体ももれなく俺のことを主と呼ぶ。
俺は溜息をついた。
「ハ、ハルナ君……さっきから一人でしゃべっているけど大丈夫?」
モレルさんが心配そうに話しかけてくる。
俺がこいつらの言葉わかることを知らないと一人で話しているだけに見えるのか、気をつけよう。
「みんなには言ってなかったけど、こいつらとようやく喋れるようになったんです」
「そうなの! じゃあこの子たちと話していたの?」
「はい」
「スキル……でしょうか?」
ユリーナさんが質問してくる。
「【念話(蟲)】ってスキルです。コガネが二回目の進化時に習得しました。自分がテイムしたモンスターのみ有効ですが」
「初めて聞くスキルだな」
「俺も初めてだ」
モレルさんとエレナさんとユリーナさんもうんうんと頷く。
『主、このー甘い匂いするものは一体……?』
「モレルさん、こいつらにあげてもいいですか?」
「いいわよ」
「アイン、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュン、ゼクス。食べていいけど騒がないように」
『『『承知しました』』』
アインたちは俺の言われた通りに静かに味わっている。嬉しそうに食ってるし気に入ったみたいだな。
これは後で洋菓子を買い足さないといけないな。
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