第13話
洞窟の中は薄暗く、壁に張り付いている光る苔みたいなのが唯一の光源。そんな中をモレルさんは進んで行く。
俺はモレルさんから離れないように少し早めに歩いたせいで、なにかに躓いて転んでしまった。
「ハルナ君、大丈夫?」
「あ、はい……大丈夫です」
少しだけ恥ずかしくなった俺は慌てて体を起こした。
「ハルナ君、【暗視】のスキル持ってないの?」
「持ってないです」
「そっか。それなら……これ貸してあげる」
モレルさんはインベントリから淡い光を放つネックレスを取り出し俺は受け取った。
「これで少しは見えると思うけど、どうかな?」
「うん、だいぶ見るようになりました」
「シュ!」
俺が転ぶタイミングで飛び降りたコガネが頭に乗っかってきて足を使って洞窟の先を指す。
すると、足音が聞こえてきてゆっくりと汚い鳴き声を発しながらゴブリンが姿を見せた。
数は全部で三体。レベルは5。俺は小声でモレルさんに言う。
「俺が先に行きます。モレルさんは――」
「ハルナ君両耳塞いで!」
モレルさんは武器を構えると、キュイーンと溜め始めた。
察した俺はすぐに両耳を塞ぎ壁側の方に避けると、ドカーンと激しい砲撃音と爆風が起きた。
俺は恐る恐るゴブリンたちがいた所に視線を向けると、地面は抉れゴブリンたちは跡形もなく消滅していた。
「凄い火力……」
「シュ……」
俺とコガネはその光景を目の当たりにして愕然とする。
「ハルナ君耳大丈夫?」
「え、はい。大丈夫ですけど、砲撃士って凄いんですね」
「ありがとう。ただね、この武器使うとしばらく砲撃使えなくなっちゃうし、あと二発しか使えないんだ」
「そんな制限あるんですね」
そりゃあそうか。無制限で撃ち放題とかだとぶっ壊れ性能になっちゃうから仕方ないか。
「それじゃ先に行こ――」
モレルさんの言葉の直後、洞窟の奥から砂煙を舞い上がらせながら大量のゴブリンたちが向かってきた。
俺とモレルさんは全力で入り口まで走った。
「あれ! どうするんですか!」
「分かんない! 時間稼いでくれればもう一度砲撃撃てるよ!」
「時間を稼いでって言われても……」
良いことを思いついた俺は足を止めてゴブリンたちの方を見る。
「コガネ、帰ったらたらふく串焼き食べさせてあげるから【ねばねばの糸】をばら撒いて欲しいんだ」
「シュ」
コガネは俺の頭から降りると洞窟の床や壁に満遍なく糸を吐いてくれた。
「ありがとうコガネ。後は俺がやるから休んでて。戻れコガネ」
「シュ……」
スキルを使って疲れたコガネを一旦戻すことにした。
やがて、ゴブリンたちが押し寄せてくるもそこら中にばら撒いた【ねばねばの糸】に足を取られて、ゴブリンたちの勢いが止まった。
よし、これで時間は稼げるぞ。
「モレルさん、あとどれくらい掛かります?」
「もう少し待って」
まだ時間は掛かりそうだな。
「グギャ!」
ゴブリンの一体が他のゴブリンを足場にして前に出てくる。だけど、その先にも【ねばねばの糸】があるせいでそのゴブリンの動きは止まる。
「グギャギャ!」
ゴブリンの一体がなんか鳴き声を上げるとゴブリンたちの動きが変わる。他のゴブリンを足場して前に出てきて、動けなくなったゴブリンを他のゴブリンが足場にするのを繰り返して突破してきた。
俺は盾を回転刃に変形させて一体一体斬り倒していく。新しく装備を変えたことで前よりかは楽に感じる。
「モレルさん! まだですか!」
「あと少し持ち堪えて!」
「了解……!」
斬り続けていくにつれ疲れを感じ始めた時、数体のゴブリンに抜けられてしまった。
「邪魔!」
押し寄せるゴブリンを蹴散らして援護しに行こうとしたら、大きく武器を振り回してゴブリンたちをぶっ飛ばしていた。
凄いなモレルさん。俺も頑張らないとな!
無我夢中で斬り続けてようやくモレルさんから合図が来る。
「ハルナ君! お待たせ!」
溜めに入るモレルさんが視界に入り、迫りくるゴブリンを盾で弾き急いで距離を取った。
タイミングよくモレルさんの溜めが終了して、大砲からの砲撃が火を吹く。