第129話
「シロガネ、蜜を集めてくれないか?」
『いいけど……ハルナも出来るよね? みんなのスキルを使えるんだから』
「え、まぁ……出来るけど……俺がやると味とか落ちちゃうからシロガネに任せたい」
『そうなんだ。わかった、任せて!』
シロガネは花の元へ飛んでいく。
シロガネにはああ言ったけど俺が蜜集めてる光景がなんか嫌だったからやんわり断っただけなんてシロガネには言わない。
俺はシロガネが蜜を集めているのを座って眺める。
他のみんなは各々自由に行動し始めた。
『ハルナ、ちょっと遠くに行ってるよー』
『私も』
「あんま遠くには行くなよ」
コガネは樹海の奥に、クロガネは地中に潜っていく。
『シロガネ、何してるの?』
『蜜を集めてるの』
『そうなんだ』
アカガネがシロガネに近付いて蜜集めをしている所を観察して、見様見真似でアカガネも蜜を集めようとしてる。
『こうやるんだよ』
『うんうん』
シロガネが丁寧にアカガネに教えている。お姉ちゃんみたいだな。
そうすると長男はコガネ、次男はクモガネかな。
シロガネが長女、クロガネが次女で、アカガネは……あれ? アカガネの性別ってどっちなんだろう。
俺は隣にいるクモガネに尋ねた。
「クモガネ、アカガネって雄? 雌?」
『アカガネは雌だよ』
「そうなんだ」
『ぼ、僕は雄だよ……?』
ボソッと呟いたアオガネの頭を優しく撫でる。
『ハルナ、なんでそんなことを聞くの?』
「え、うーん、コガネたちで想像してたんだよ」
『『想像?』』
「そう。コガネが長男、クモガネが次男。シロガネが長女、クロガネが次女、アカガネが三女、アオガネが三男って感じで想像していたんだよ」
『うーん、よくわかんない』
『ご、ごめんなさい……』
クモガネとアオガネはよくわかってないようだ。
まぁ自然界の虫には兄弟関係なんてないからわからなくても仕方ないか。
「大丈夫だよ」
クモガネとアオガネの頭を撫でてから立ち上がり、シロガネとアカガネの所に向かう。
「シロガネ、大分集まったか?」
『うん! 結構集まったよ!』
シロガネから蜂蜜を受け取りインベントリにしまった。
『ハルナ、私も私も!』
「お、おう」
アカガネも蜂蜜を収穫したようで、普通の蜜よりかは赤い色をしていた。
スキルを見てみると、アカガネは【蜜集】を覚えていた。
スキルってこんな方法でも習得するんだな。
「ん?」
足元の地面が盛り上がりクロガネが姿を見せる。
「おかえりクロガネ。あとはコガネだけか……あ、コガ、ネ……」
戻ってきたコガネの上にはあの女性型のボスモンスターが座っていた。
『ハルナ! 連れてきたよ!』
コガネは器用に足を振る。
連れてきたって……
俺のところまで来るとコガネから優雅に降りる。
『久シイノ人ノ子』
「お、お久しぶりです……」
『見ナイ間ニ、随分ト賑ヤカニナッタノ』
「はい、おかげさまで沢山仲間が出来ました。ありがとうございます」
『フフ、ソウカ』
女性は優しく微笑んだ。
「あの、俺に何か用でも……?」
『オ、ソウダ。オ主ニ問イタダソウト思ウテナ』
「な、なんでしょう?」
『オ主、我ノ事ヲ他ノ者ニ教エタダロウ? 群レヲナシテ我ノ所マデ来タゾ。皆蹴散ラシタガ』
「あはは……ごめんなさい、それ俺が原因です」
俺は女性に事情説明した。
『ソウカ』
「本当にすいませんでした」
俺は頭を下げると、女性は俺の頭に手を置いた。
『マァ良イ。ソウイウ事ナラ我ハシバラク姿ヲ隠ソウ』
「すいません……」
女性と話していると颯音から早く来いと催促のメッセージが飛んできた。
これ以上待たせる訳にはいかないけど。
「すいません、俺そろそろ行かないと……」
『オオ、ソウカ。マタ、来ルンダゾ』
「はい。みんな行くよ」
コガネとシロガネ、クモガネとクロガネは共鳴を使う。
アカガネとアオガネが体にくっ付く。
女性に一礼してから俺は急いで街に戻る。
全員を戻してから街に入り、颯音と海都がいる火山エリアに向かった。
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