第125話
後部デッキからカイトは手を差し伸べ、俺は掴み船に上がった。
「サンキュー、カイト」
「ハルナ、海に落ちたんだよな? どうやってここまで来たんだよ?」
「アオガネのおかげで助かった」
「アオガネ?」
カイトが頭を傾げる。
「もしかして、あのムカデみたいなモンスターか?」
「そう。さっきテイムした。アオガネ」
俺はアオガネを呼び出すと足元に召喚された。
「シャっ!?」
カイトを見るなり俺の後ろに隠れた。
「見事にカイトのことを怖がってんな。武器を抜くから」
「俺、悪くないんだけど……」
「春名!」
慌てた様子の颯音がやってくる。
「ごめん! 俺の操縦のせいで……」
「平気だよ。アオガネが助けてくれたし」
「アオ、ガネ?」
颯音は俺の後ろにいるアオガネに視線を向ける。
「ようやくテイムしたんだ」
颯音はしゃがんでアオガネに視線を合わせた。
「春名のこと助けてありがとな」
「シャ」
アオガネはゆっくりと頷いた。
「なんでハヤトのことは怖がんないんだよ……」
カイトはボソッとぼやいた。
「まぁまぁ」
颯音はカイトを操縦席に連れて行った。
「アオガネ」
名前を呼ぶとアオガネが見上げてくる。
「さっきはサンキューな。それと仲間になってくれてありがとう。これからよろしくな」
アオガネは小さく頷いた。
船は動きだし、桟橋に着く頃にアオガネを戻す。
全員が船から降りてから回収した。
「な、これからどうする?」
「俺はログアウトするわ。兄ちゃんにまた叱られるの嫌だし」
「え、叱られたの? あの優しい冬真兄に?」
「俺が悪いんだよ。夕飯の時間大分過ぎちゃってね」
「そうなんだ。じゃあ俺もログアウトしよう。俺も冬真兄に叱られたくない」
「あのさ、一つ聞いていいか? お前らって兄弟かなんかなの?」
カイトが予想外な質問してくる。
「違うから」
「俺と春名は幼馴染で同じ高校。今春名の家に泊まってるんだよ」
「ちょっと待って……高校生なの?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いていない」
カイトは頭を横に振った。
「高何?」
「高二だよ」
「同い年かよ!」
「「え!!」」
カイトの思わぬ発言に俺と颯音は声をあげて驚いた。
「同い年だったのかよ。年上かと思ってた」
「俺も」
「ちなみにさ……どこ高?」
「都立月島高校なんだけど」
颯音が答えるとカイトは固まった。
「マジか……俺もそこなんだ……」
「すっげぇ偶然だな」
何かを思いついたのか颯音が口を開く。
「それならさオフ会しない? 学校が近いなら集まれるし、どうかな?」
「俺はどっちでもいいぜ。カイトは?」
「なんか緊張するけど、大丈夫だ」
「よし、じゃあ決まり! 連絡先交換してないからここで決めよ! いつにする?」
「夏休みだからいつでもいいけど」
「俺も予定ないしな」
「それなら明日なんてどうかな?」
「明日? 急だな。うーん、多分大丈夫だと思う」
「春名もそれでいい?」
「おう」
「じゃあ明日昼の一時ぐらいに校門前で待ち合わせで」
颯音のおかげであっという間にオフ会の日時が決まった。
「わかった。それじゃあ……明日な」
そう言ってカイトはログアウトした。
「明日か〜なんか緊張してくるな〜」
「緊張って……颯音がそんなこと言うから緊張が移ったじゃねーか」
「あはは。俺たちもログアウトしよ」
「おう」
現実に戻ってきた俺たちは順番に風呂を済ませて眠り就く。
しばらく経つと颯音が話しかけてきた。
「……春名、まだ起きている?」
「寝れねぇのか?」
「なんか寝れない。いつもならすぐに寝れるのに」
「遠足が楽しみでなかなか寝れない子供かよ」
そう言いながら俺はスマホを弄る。
「何してんの?」
「攻略サイトの掲示板にテイムの仕方を書き込んでいるんだよ」
「え!」
驚いた颯音は体を起こす。
「教えちゃっていいの?」
「別に隠してないしな、教えたところで出来るかどうかはその人次第だから」
「確かに」
納得した颯音は再び横になる。
「よし、終わりっと。ほら、寝るぞ」
「うん。おやすみ」
俺はアラームがちゃんと設定してるか確認してから瞼を閉じる。
大変遅くなりました!
今年最後の更新になります!
次の更新なんですが、1/10まで更新を休止します。
理由としてはリアルが忙しくなると言うだけなんですが……
それに合わせて少しだけ1月中の更新頻度も減ると思います。
2月からは通常通りになると思うのでご迷惑をおかけしますが、気長に待って頂ければなと思います。
それでは、良いお年を。