第122話
進化したアカガネを見にコガネとシロガネとクロガネが集まって来る。
「シュ!」
「ビー!」
「キシャ」
「キュン!」
コガネたちがアカガネに挨拶すると、アカガネはそれぞれ頭をすりすりする。甘えているのかな?
コガネたちもなんだか嬉しそうにみえるな。
「キュン!」
「キ、キュゥ……!」
クモガネにも頭をすりすりしようとしたがクモガネは何故か飛んで逃げだした。
「キュン!」
逃げるクモガネをアカガネが追いかける。
飛ぶのに疲れたクモガネは体を光の粒子に変えて黒い球体に入っていく。
クモガネが【共鳴】を使って逃げた。そんなに嫌なのか?
「キュン?」
アカガネはキョロキョロと突然姿が消えたクモガネを探しだす。
「クモガネ、なんで逃げたのか聞いていい?」
『……アカガネ、熱いんだもん……』
クモガネはボソッと言う。
クモガネは氷タイプだから、炎を纏っているアカガネとの相性は悪い。追いかけられたらそりゃ逃げるか。
「キュン……」
クモガネが見つからず少し落ち込んだアカガネが俺の下に戻ってきた。
「シュ、シュ」
「ビー」
「キュン?」
コガネとシロガネが何かを伝えたのかアカガネが俺を見上げてくる。
「クモガネ、通訳を求む」
『コガネとシロガネが僕の居場所を伝えたんだよ……』
「なるほど……」
俺はコガネとシロガネに視線を向けると、二体同時に顔を逸らした。
『クモガネ、正直に伝えたら?』
いつの間にかクロガネも【共鳴】を使っていたようで、クモガネに話し掛ける。
「俺もそれがいいと思うぞ。なんかあっても俺たちがフォローするからさ」
『……うん』
クモガネは【共鳴】を解いて、アカガネの前に姿を見させる。
アカガネは嬉しいそうにクモガネに近づこうとするが、俺が間に入って止める。
「キュン!」
アカガネは怒ったように鳴く。
「キュゥ」
「キュン?」
クモガネが飛び立つと、後を追うようにアカガネも付いていった。
二体はソファーの上に移動して話し始めた。
少しするとクモガネは申し訳なさそうな表情を浮かべて、アカガネはどこか悲しそうに見えるけどクモガネには笑みを向けてる気がする。
アカガネはクモガネを連れて俺の前に飛んできてぺこって頭を下げた。
「キュン……」
「えっと……クロガネ通訳」
クロガネに助けを求めたら溜息をつかれた。
『……怒鳴ったこと謝ってるの』
「そうなんだ。気にしてないよアカガネ」
そう言いながら俺はクモガネとアカガネの頭を優しく撫でた。
「シュ!」
「おわっ!」
コガネが頭の上に乗っかってくる。
「ビー、ビー!」
シロガネは俺の周りをぐるぐると飛び回りだした。
「キシャ」
「痛いんだけどクロガネ……」
【共鳴】を解いたクロガネはガシガシと右足を齧ってくる。どうしたんだこいつら……
「キュゥ」
「キュン」
「あ、お前らまで!」
クモガネとアカガネも参加して、シロガネと一緒に飛び回りだした。
「すっげえカオスな状況だな、これは」
操縦席に行ってカイトが戻ってきた。
「アカガネ、進化させたの」
操縦しているはずの颯音も戻ってきてた。
「今さっきな。てか、お前ら静かにしろ」
そう言うと、蜘蛛の子を散らすように俺から離れて行った。
「仲良いよね春名たち。まぁ、俺とヒスイとギンの方が仲が良いけどね」
「張り合う所じゃねーよ颯音、たく……俺たちの方が仲良いし」
「お前も張り合ってんじゃねーかよ!」
ボソッと言うとカイトがツッコミをしてくる。
「それよりも、そろそろ島が見えてくるぞ」
島に近くにつれ、徐々に海の上で停止している船が増えていく光景が船内の窓からわかる。
「俺たちも船を止めていく?」
「止められる場所ないし、船は回収して行こう」
「春名は飛べるし、俺は海面を凍らせば移動出来るもんね」
「俺はどうすればいい?」
カイトが困った様子で聞いてくる。
「俺に掴まって飛ぶか、颯音のあとを追うか」
「前者で!」
カイトは即答した。
「答えるのが早いな。じゃあ船の回収は颯音がやってくれ」
「了解」
「みんな、島に行くぞー」
コガネたちを呼び、各々が【共鳴】を使い黒い球体と一体になる。
「キュン?」
「アカガネは俺に掴まっててくれ」
指差して肩に掴まるように指示をする。
しっかりアカガネが掴まっているのを確認して翅を展開。後部デッキから外に出て、カイトの両手を掴み持ち上げた。
次に海面を凍らせて、海の上に立った颯音は船を回収する。そして、俺たちは島に向かった。
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