第121話
街に戻った俺たちは人目を気にせずにアカガネを呼び出せる場所を探して散策中だ。
「なぁ春名、俺たちの船で進化させた方がいいんじゃね?」
「それが早いよな。あ、あの島行くか」
「家が建ってただけの島?」
「そそ」
「そんじゃ行きますか」
散策をやめて俺たちは海原エリアに行くために転移門に向かう。
転移門を潜るとカイトからメッセージが来た。
『ハルナ! 今何処にいるんだ!』
「今は海原エリアにいるけど?」
『ちょうどいいや! 悪魔の島ってのが出現してるみたいだからハヤトも一緒に居るんだろう? まだ攻略されてないみたいだから俺たちも行こうぜ!」
あれから大分経ってる筈なんだけど未だに攻略されてなかったことに内心驚くも俺は断った。
「やることあるからパス」
『え!?』
カイトとの会話を終わらせて歩き出すと、目の前にカイトが転移してきた。
「マジで行かねぇのか?」
どうしても行きたいと言う眼差しでカイトが見つめてくる。
「春名、俺もやっぱ行きたいかも」
「……」
俺は溜息をついた。
「わかったよ、行きますよ」
諦めてそう言うと颯音とカイトはハイタッチを交わす。
「よっしゃ! そうと決まれば船を借りないとな!」
「船ならあるぞ」
それだけ言って歩き出した。
「え?」
「着いてくればわかるよ」
「置いてくぞー」
颯音とカイトは駆け出して後をついてくる。
道なりに進み、下層にある桟橋に着いて海面にインベントリから取り出した船を浮かべた。
「すっげえな、おい…….」
「突っ立ていないで船内に入れば?」
「お、おう」
後部デッキから船内に入ったカイトはしばらく黙ったまま船内を見渡した。
「設備充実し過ぎじゃね?」
「まぁな。おかげで高くなったよ。それよりもこっちに来てくれ」
俺はカイトを転移結晶の前に連れて行く。
「これは?」
「転移結晶って言って、これに触れて登録すればフィールドに出ても船内でログアウトが出来たり、街と船を行き来が出来るようになる設備」
「へぇーそんなのがあるんだな。触れてもいいのか?」
「勿論」
カイトはゆっくりと転移結晶に触れると淡い光に包まれた。登録完了したようだな。
『春名、島の座標わかったよ』
操縦席に行った颯音からスピーカー越しに知らせがくる。
「了解」
『どっちにいく?』
「人が少ない方がいいけど」
『うーん、どっちも大差ないみたい』
「それなら颯音に任せるわ」
『了解』
颯音との話しを終えるとエンジンが掛かり船が動き出した。
「ちょっと操縦席に行ってくる!」
興奮気味に言ったカイトは颯音がいる操縦席に行く。
今のうちに進化させるか。
俺はビートルワームたち以外を呼び出す。
コガネとシロガネとクロガネは気ままに船内をうろつき、クモガネは俺の側から離れようとしない。
コガネかシロガネに頼もうと思ったけど、クモガネに頼もうかな。
「クモガネ、【共鳴】してもらっていいか?」
「キュゥ」
光りの粒子になってクモガネは紋章から現れた黒い球体に吸い込まれていき、黒から水色に色が変わった。
「クモガネ、アカガネに進化させるよって伝えてもらっていいか?」
『僕でいいの?』
「頼む」
『わかった!』
共鳴を解いたクモガネはアカガネに話しかけた。
伝え終わったのかクモガネとアカガネは俺のことを見上げてくる。
「それじゃ進化させるよ」
俺はアカガネのステータス画面にある進化のボタンを押した。
すると、アカガネは眩い光りを放ちみるみるうちに姿が変わったいく。
光が収まるとそこには全体的に赤い体にサファイア色の瞳に、炎を纏った翅をはためかせているアガガネがいた。
名前もヒートモスからフレイムモスに変わり、新しくスキルを習得した。
一つ目が【炎の鱗粉】。自身の鱗粉を周囲にばら撒き一定時間継続ダメージを与え、低確率で火傷にさせる効果だ。
二つ目は【炎の風】。高熱の風を起こして攻撃するスキル。
三つ目は飛行する為に必要な【飛行】だ。
「よろしくなアカガネ」
「キュン」
頭を撫でてやるとアカガネは嬉しいそうな表情をした。