第120話
兄ちゃんとの夕飯を済ました俺と颯音は部屋に戻ってログインした。
颯音とは海原エリアの街にある組合所前で待ち合わせになっている。今俺は下層にある組合所に向かっている所だ。
「おい、急ぐぞ!」
「おう!」
ゆっくり歩いてると沢山のプレイヤーが慌しく下層に向かっていた。
何かあるんだろうか? まぁいいや、組合所に行こう。
組合所の前で待っていると手を振りながら颯音が走ってきた。
「お待たせ春名」
「おう」
「なんか人が居ないね」
辺りを見ながら颯音が呟くと通りすがりのNPCのおじさんが話しかけてくる。
「お前さんたち知らないのか? 今悪魔の島が二つ同時に出現したんじゃ。それを討伐しに皆船に集まっているのじゃ」
「「悪魔の島?」」
初めて聞く単語に俺と颯音は聞き返した。
「なんじゃお前さんたち知らんのか? いつ出現するか不明の悪魔の島を」
「それって八つあるやつ?」
「なんじゃ知っておるじゃないか。噂じゃと二つも攻略されとるらしいのじゃ。お前さんたちも行くなら気をつけるのじゃぞ」
それだけ言っておじさんは立ち去っていく。
「クラーケンの島だって。俺たちも行く?」
「人多いだろうしパス」
「言うと思ってた。そんじゃ何をするか……」
「俺は船内でビートルワームたちを進化させる予定だけど」
「あー前にテイムしたやつか。まだ進化させてなかんだな」
「色々あってな。あ、そうだ火山エリアにも行かないとだな」
アカガネは水を掛けてないファイアフラワーしか食べない。つまり満足度を上げる為には火口付近に再び行かないといけないのだ。
「え! もう火山エリアに行ったの! 俺も連れて行け!」
「それなら行くか? ビートルワームたちは後でも出来るからな」
「やった! 早く行こうぜ!」
「はいはい」
俺と颯音は早速火山エリアに向かった。
「あっつ!!」
転移門を潜って直ぐに颯音は叫んだ。
「はいはい。そう言うのいいから、さっさと装備投影するぞ」
「俺の扱い雑じゃない?」
颯音をカレンさんに教えてもらった店に案内して耐暑のスキルが付いた装備を投影してもらった。
「おお、暑くない! すっげぇ快適!」
「それはよかったな。そうだ、颯音。ギンは呼び出すなよ」
「なんでだ?」
「前に来た時にクモガネが不調だったんだよ。このエリアだと氷タイプのモンスターは厳しいんだと思うんだ」
「へぇーそうなんだ、わかった。それで何処に行くんだ?」
「火口付近。遠いから早く行くぞ」
「おう!」
街を出て前回採取した所に向かう。
「颯音、いまだ!」
「おう!」
ワイヤーで身動きを封じたフレイムバードを颯音がトドメを刺す。
「めっちゃモンスターいるし、それにレベル高いんだけど春名……」
「そうだな」
モンスターの数が多すぎて火口付近に近づくのに苦戦中だ。
カレンさんがいないだけでここまで苦戦するとはな。
「てか、ヒスイは呼び出さないのか?」
「戦う時は二体一緒で呼び出そうって決めてるから、呼び出さないんだよ」
「ふーん、そうなんだ」
「お、またモンスターが来てるよ」
「逃げるで」
「はいよ」
時間は掛かったけどどうにか火山付近にたどり着けた。
俺はアカガネを呼び出す。
「新しいモンスターだ! このエリアでテイムしたの?」
「昨日な」
「昨日? 用事あるってこのことだったの? それなら俺も誘ってよ」
「フレンドになった人と昨日火山エリアに来たんだよ。その時に偶然見つけたんだ」
「そうなんだ。俺が知らない人?」
「知ら……いや、知ってんな」
颯音は首を傾げる。
「アイスゴーレムをソロで倒してた人覚えてる?」
「え、うん。覚えているけど……え、その人?」
俺は頷いた。
「沼地エリアで知り合ってな。まぁこの話はおいおい話すよ。それよりもファイアフラワーって花を探してくれ」
「どんな見た目?」
「火のような真っ赤な花だ」
「了解」
颯音と手分けしてファイアフラワーを探す。
「春名、あったよー」
颯音の元に駆け寄った。
「これだよね?」
俺が返事する前にアカガネは腕から抜け出してファイアフラワーをむしゃむしゃ食べ始めた。
「すっげぇ食うなぁ。あと、どれくらいいるんだ?」
「まだまだいるな」
アカガネの進化項目にある満足度ゲージを見ながら答えた。
俺と颯音はファイアフラワーを見つけてはアカガネに食べさせていく。
アカガネは見つけたファイアフラワーを全て食べる。おかげで、直ぐに満足度は最大まで溜まった。
「あとは進化させるだけだけど、街に戻ってからだな」
「賛成!」
アカガネを一旦戻して、俺たちはモンスターとの戦闘を極力控えて下山した。