第12話
兄ちゃんとの食事も終えて、まだ待ち合わせの時間まではあるけど俺は早めにログインした。
まず向かったのは串焼き屋の店だ。コガネと約束したしね。
「いらっしゃい!」
「串焼きください」
「はいよ!」
お金を渡して串焼きが入った袋を受け取る。
「お? 今日はちっこいのはいねぇのか?」
「あ……今は、いないです」
「そうか。またこいよ!」
店主に軽く頭を下げ俺はお店を後にする。店主はコガネの存在を知っていた。
このゲームのNPCはテイムの事を知っているのかな。うーん、まぁそのうち俺以外にもテイムする人が出てくると思うし、そこまで隠さなくてもいいのかもな。
待ち合わせ場所にきた俺は近くに設置されていたベンチに座ってまだしてなかったSP振りをした。
今回は全部【トランス】に割り振った。これで【トランス】は[5]に。
「お、やっと変形回数が増えた。さて、何しようかなぁ~」
コガネは糸も飛ばせるけどどちらかというと近距離攻撃主体だし、俺もそうだから遠距離攻撃出来る奴にしよう。弓とかクロスボウとか……銃とかもいいかも。あ、でも全然経験ないしそれに変形させて使えなかったら元も子もないな。一旦保留にしよう。
まだ待ち合わせ時間まであるな。コガネに串焼きたべさせるかな。
俺はコガネを呼び出した。
「シュ」
コガネを膝の上に乗せてインベントリから串焼きを取り出す。
「はい、コガネ。約束の串焼き」
「シュ!」
コガネは嬉しそうに頬張った。
「ハルナ君~」
遠くからモレルさんが手を振って近づいてくる。俺はコガネを頭に乗せて立ち上がった。
「お待たせ。あれ? ハルナ君装備変えたの?」
「はい。偶然手に入って」
「そうなんだ。かっこいいよ」
恥ずかしくなった俺は無理矢理話題を逸らした。
「そ、それでこれから何処か行くんですか?」
「うん! 前にね、友達とレベル上げしてらたまたまダンジョン見つけて途中まで進んで引き返したの。ハルナ君にはその続きを手伝って欲しいの」
ダンジョンはフィールドにランダムで生成されるもの。生成された場所によって難易度は変わり、高ければ高い程珍しいアイテムや素材が手に入る場所だ。
「俺は良いんですけど、その……友達とやったほうがいいんじゃないですか?」
そう尋ねるとモレルさんはため息をついてから言う。
「今日行く予定だったんだけどね……ちょっと仕事でやらかしちゃってしばらく来れなくなっちゃったんだ。今日行かないと場所変わって行けなくなっちゃうからお願い!」
「わかりました。手伝いますよ」
「本当!? ありがとうハルナ君!」
俺の手を取って嬉しそうに喜ぶモレルさん。
「あの、行く前に紹介したい子がいるんだけど……モレルさんって虫苦手?」
「虫? イニシャルG以外は平気かな」
「イニシャルG? ……あ、ゴキ――」
「その名前は言わないで!」
モレルさんは慌てて俺の口を塞いできた。相当嫌いなんだな。
「平気ならよかったです」
そう言って珍しく頭の上で大人しくしているコガネを持ち上げる。
「紹介したいのはこの子で、スパイダーのコガネって言います。縁あって俺の仲間になったんです」
「シュ」
足を上げて挨拶するコガネ。
「モンスターって仲間に出来るんだ! ハルナ君凄いね! よろしくねコガネちゃん!」
モレルさんはコガネの頭を撫でてくれた。
コガネも嫌がっていないし大丈夫ぽい。とりあえず一安心。
モレルさんとパーティーを組んで俺達はダンジョンに向かった。
モレルさんの後をついて行くと断崖絶壁の岩壁が見えてくる。モレルさんが指さす先に洞窟の入り口があった。
「あそこがダンジョンの入り口?」
「うん。出てくるのはゴブリン系で平均レベルは5ぐらいだよ」
「なるほど。配置どうします? 俺盾士だから前出ますけど」
「私はどちらでもいいよ」
「それじゃあ特に決めずに臨機応変で行きましょうか」
「うん!」
先に進むモレルさんを追って俺とコガネは初のダンジョンに足を踏み入れた。