第117話
「おかえりなさいカレンさん」
「待たせたな。それよりもどういう状況なのだ?」
ルーシャさんが真っ青な顔をして俺から離れている状況を誤解がないように説明した。
説明を終えるといつの間にかルーシャさんはカレンさんの後ろに隠れていた。
「相当苦手なのだな」
「ムリ、ゼッタイムリ……!」
「片言だなルーシャさん」
この調子だと危険だよな。ヒートモスを置いてけばいいと思うけど、目を離したらどっか行きそうだし。
「私がルーシャを連れて行くから、ハルナは少し離れて着いてきてくれ」
「そうですね、それがいいかも」
そう決まるとカレンさんは片手でひょいとルーシャさんを抱え上げて歩き出す。
俺も少し離れてついて行く。火口に近付くにつれ、段々と暑さが増して行った。
「ルーシャさん、大丈夫ですか?」
「平気。ちゃんと装備投影してる」
「着いたぞ」
ルーシャさんと話しているとカレンさんが火口付近に到着したことを知らせる。
此処のどこかにファイアフラワーがあるのか。見た目分からないから手当たり次第に探すか。
「カレン、もう降ろして」
「わかった」
降ろされたルーシャさんは辺りを見渡すと、何かを見つけたのか歩き出した。
少し歩くとルーシャさんはしゃがんだ。
「二人とも! こっちにきて!」
ルーシャさんに呼ばれて俺とカレンさんは向かう。
呼ばれた先にあったのは火のように真っ赤に咲く花だった。
「これって……ファイアフラワー?」
「うん」
「綺麗なものだな……」
俺たちはファイアフラワーに見惚れてしばらく観察した。
すると、静かに抱えられていたヒートモスが急に動き出し、腕を抜け出してファイアフラワーに飛び付いて花を食べ始めた。
「は、花が……!」
どんどんと花がヒートモスに食べれてルーシャさんはショックを受ける。
俺は急いで引き剥がしたけど花は殆んどなくなっていた。
「花を台無しにしてごめんなさい、ルーシャさん!」
俺は頭を下げて謝罪した。
「ううん、少しだけショックだったけど、花ならまだあるから謝らないで」
「本当にごめんなさい!」
「大丈夫だからねハルナ。ほら、探そう?」
「はい……」
俺とルーシャさんは別れて探すことにした。
「ハルナ、これを渡しておく」
カレンさんから巻物見たいな物を渡された。
「これは?」
「使用回数があるが魔法が使えるスクロールというアイテムだ」
「へぇーそんなアイテムがあるんだ。あ、それを取りに街に戻ったんすね」
「そうだ。遠慮なく使ってくれ」
「カレンさんがそう言うなら使わせていただきます」
スクロールを使うと自分のスキルツリーに【ウォーター】が追加された。
使用回数は十回までみたいだな。よし、試してみよう。
少し離れた所でファイアフラワーを見つけて、水魔法を使った。
ファイアフラワーに水が被ると花弁の色が濃くなった気がする。これで採取が出来るようになったのかな。
試しに花に触れ摘みとったけど何も起きなかった成功のようだ。
早速摘みとった花をヒートモスの前に差し出す。
「あれ? 食べてくれない」
だけど、ヒートモスは食べようとはしなかった。
そのままの状態じゃないと食べないのか?
確かめる為に、もう一本ファイアフラワーを見つけ出してヒートモスに見せると、俺の腕を抜け出してむしゃむしゃと花を食べた。
わざわざスクロールを取りに行ってくれたのに使う必要がなかったなんて予想外だ。
まぁ、水魔法はあと九回使えるし、水分がないところで使えばクモガネとの共鳴技に使えるから残しておこう。
それから、俺はファイアフラワーを見つけてはヒートモスに食べさせた。
「ハルナ。こっちはだいぶ集まったけど、そっちはどうだ?」
ルーシャさんの手伝いをしていたカレンさんが聞いてくる。
「こっちもそろそろいいかなと」
俺の腕の中でたらふくファイアフラワーを食べて満足しているヒートモスの額に手を翳す。
ヒートモスは頭を傾げてくるけど、俺は名前を呟いた。
「アカガネ」
ヒートモスは光りの粒子になって右手にある紋章に吸い込まれた。
テイムに成功したようだな。これで十一体目だ。
育成も頑張ろっと!
次回の更新は12/21に予定しております。