第116話
カレンさんが戻ってくるのを待っているとレベル30の火を纏っているファイアスネークの大群に見つかってしまった。
ヒートモスを一旦地面に置く。
「コガネ、クロガネ」
二体の名を呼び両手をワイヤーの特殊な革手袋にし、右腕に巨大なドリルを装着する。
『ハルナ、僕も……!』
「クモガネは休憩してて」
『で、でも!』
「ダーメ」
ファイアスネークが口から火を吐き、俺は盾を展開して防ぐ。
一瞬止まった隙を見て回転刃に変形させ投げる。回転刃は一直線に飛び何体かのファイアスネークの頭を跳ね飛ばした。
数が多い、一気に決める。
「シロガネ」
シロガネを呼び寄せ、左手を機械の開閉口がついた特殊な革手袋に変えて両手を合わせた。
「【共鳴技・ブレードワイヤーボム】」
ひし形の爆弾を上限数まで一気に作り大群のファイアスネークの真上に全部投げる。
「バースト!」
起動キーワードを叫ぶと全ての爆弾から暴れ狂うワイヤーが展開した。
ファイアスネークは逃げ惑うも次々に倒され数を減らして行く。俺が放った爆弾が消える頃には片手で数え切れる数まで減った。
残りを倒し切り、辺りにモンスターがいないのを確認してから散らばっている素材を回収した。
素材を拾い終わりるとクモガネが話しかけてくる。
『ハルナ、ここじゃ僕は役に立たないから戻して欲しい』
「……わかった」
クモガネが共鳴を解除すると地面にへたりと降りた。
俺はクモガネを抱き上げる。
「ごめんな、こんなところで呼び出しちゃって……」
「キュゥ」
クモガネは首を横に振った気がする。
「今度海原で空を飛ぼうな」
「キュゥ!」
クモガネの頭を撫でてから紋章に戻した。
「念の為に聞くけど、お前らは平気なんだよな?」
『平気だよー』
『私も平気!』
『平気よ』
「キツかったら言えよー」
『そんなことよりヒートモスは?』
クロガネに言われヒートモスを探すと、少し離れた大岩に張り付いていた。
俺はヒートモスに近づいて大岩から引き剥がす。
すると、ルーシャさんからメッセージが来た。
『ハルナ、今平気?』
「問題ないですけど、なにか用で?」
『特にない。バイトの子から聞いた。私に用があったみたいって』
「あー……それか。用っていうか沼地エリアに行くってことを伝えたかっただけなんで、気にしなくて大丈夫です」
『今沼地エリア?』
「今は火山エリアですね」
『火山エリア!! そっち向かうから待ってて!』
「えっ?!」
ルーシャさんから一方的にメッセージが終わる。
『大声出してどうしたの? ハルナ』
シロガネが尋ねてくる。
「え、なんか……ルーシャさんがこっち来るみたい」
『ルーシャって誰?』
シロガネの言葉を聞いて目が点になる?
「マジで聞いてんの?」
『シロガネ、甘いお菓子を作る人だよー』
『あ、あの人か!』
コガネのフォローでシロガネはルーシャさんのことをわかってくれた。
てか、そう言う認識をしていることを初めて知ったな。
「それじゃあ皆の顔を覚えていないってこと?」
『顔が似てるからよくわかんない』
「へぇーそうなんだ」
『あ、ハルナのことはわかるよ! なんか甘い匂いがするんだ!』
シロガネに言われて自分の匂いを嗅ぐ。うーん、自分んじゃわかんないや。
『蜜より甘い匂い……』
「え、そんな甘い匂いすんの俺!」
『『『うん』』』
三体が同時に返事をした。
「そっか」
「お待たせ!」
そんな会話をしていると目の前にルーシャさんが現れた。
本当に来たんだ……
辺りを見渡しているルーシャさんに尋ねた。
「なんで急に来たんです?」
「ここで採りたいのあったからちょうど良かった」
「あ、そうなんですね」
「街に帰るところ?」
「火口に向かうところですけど」
「なら、一緒に行く。早く行こう」
ルーシャさんは俺の手を引いて歩き出そうとする。
「ル、ルーシャさん! 知り合いが戻ってくるんで少し待ってください!」
「わかった。その人が来る……まで……」
ルーシャさんの顔色がみるみる内に青くなって、俺から離れて行く。
どうしたんだろうと思っていると、ルーシャさんはぷるぷると震える指で俺をさす。
あ。そう言えば、ルーシャさん幼虫が苦手だったな。
ヒートモスを指差すとルーシャさんは頷く。やっぱりか。
でも、どうしようもないしなぁ〜
「戻ったぞ」
そうこうしている内にカレンさんが戻ってきた。