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第114話

 相変わらずカレンさん無双が続く中、俺たちは火山の頂上付近まで来ていた。

 耐暑効果があるけど流石に暑い。汗が止まらない。


「着いたぞ」


 そう言われ顔を上げると溶岩の湖が広がっていた。

 辺りを見渡してもモンスターの姿は何処にもいない。

 視線をカレンさんに向けると、カレンさんは困った表情をした。


「いつもならあそこの大岩の上で寝てる筈なんだが……」


 カレンさんが指差した大岩の上にはサラマンダーはいなかった。


「すまない、ここまでついて来てもらったのに……」


「大丈夫ですよカレンさん、色々と火山エリアのこと知れたから助かりました」


「そうか。そうだ、今日付き合ってもらったお礼に素材を全てハルナに譲ろう」


 カレンさんの発言に一瞬驚いたけど、俺は断った。


「流石にもらえないですカレンさん。倒したのはカレンさんなんですから、全部カレンさんが受け取ってください」


 メニュー画面を操作して、カレンさんにインベントリにある今回手に入れた素材を全て選び送った。


「私の物ってことなら、私がどうこうしていい訳だよな?」


「そうですけど……」


「なら、全部お前に譲る」


 カレンさんは拒否したのか、俺が送った素材が全て返ってきてインベントリにしまわれた。


「この話は終わりだ。街に戻るぞ」


 有無を言わせずにカレンさんは歩きだした。

 そんな後ろ姿を見ながら俺はため息をつく。


「待ってくださいよカレンさん」


 俺は駆け足で先を歩くカレンさんに追いつく。

 しばらく下山をしているとコガネが吸い込まれた球体が少し離れていくを感じて話しかける。


「どうかしたか? コガネ」


『あっちになんかいるから見てくる!』


「って、おい!」


 俺の制止する声を聞かずにコガネが更に離れたいく。


『私も見に行く!』


 コガネを追いかけてシロガネが吸い込まれた球体も離れていった。相変わらずの自由奔放コンビだな。


「何かあったのか?」


「コガネとシロガネが勝手に離れちゃって……後を追いかけてくるんで先に街に帰っててください」


 そう言って俺はコガネとシロガネの後を追いかけた。

 コガネとシロガネの球体が止まっているのを見つける。後ろからそっと近づいた。


「こら。勝手に離れるなよなコガネ、シロガネ」


『ハルナ、溶岩の近くになんかいる』


「溶岩の近く?」


 近くで流れている溶岩の方に視線を向けると、何かが動いているように見えた。

 モンスターかもと思い白い球体を盾に変形させる。


『大丈夫だから見に行こう、ハルナ!』


「うーん、シロガネがそう言うなら……」


 俺は慎重に距離を縮めていく。大分距離を縮めて観察した。

 それは火を纏っている赤い幼虫だった。

 名前はヒートモス。蛾の幼虫だ。

 移動も遅くて、幼虫だった時のクモガネを思い出すな。

 俺は近くまで行き、しゃがみ手を翳す。熱くないけど、暖かいなこいつ。クモガネと正反対だ。 


『なんか来るよハルナ!』


 コガネの言葉に盾を構える。

 すると、溶岩が盛り上がっていき中から縦長の瞳に鎧の様な真っ赤な鱗、口を開けると鋭い牙が並んでいる体長五メートルはありそうな大トカゲの姿をしたモンスターが現れた。

 名はラヴァルリザード。レベルは40と高めだ。

 ラヴァルリザードは俺を見るなり、体を使って溶岩の波を作り出す。俺は急いで離れた。


『ハルナ! ヒートモスが!』


 クモガネの悲痛な声が聞こえてきて、振り返るとラヴァルリザードはヒートモスを食べようとしていた。


「クモガネ、翅を展開!」


『わかった!』


 水色の球体が背中にくると薄い円盤に変形し、翅が展開されて、上空に逃げて難を逃れる。


「コガネ!」


『仕方ないなあー』


 両手をコガネとの特殊な革手袋に変形させ、ワイヤーを伸ばして、食べられそうになるヒートモスを寸前で捉え手繰り寄せた。

 突然餌が目の前から消えた事に気づいたラヴァルリザードは辺りを見渡している。上空にいるとは思っていないだろうし、今のうちに離れよう。


『ハ、ハルナ……! 力が、出ない……!』


 薄い円盤が背中から離れて水色の球体に戻った。そのせいで翅が消え、俺は叫びながら落下した。

 溶岩に落ちる……!

 思わず恐怖のあまり瞼を閉じた。

 しかし、いくら待っても熱い溶岩に落ちることはなかった。

 不思議に思った俺はゆっくり瞼を開けると、そこにはカレンさんの顔があった。


「カレンさん? どうして……」


「後ろから見守っていたんだ。地上に降りるぞ」


 カレンさんとやたら顔が近いと思っていたら、お姫様抱っこされてる……恥ずかしいんだが……

 思わず両手で顔を隠した。


「何故顔を隠すんだ?」


「……聞かないでください」


「可笑しな奴だ。それよりもその腕の中にいるモンスターは大丈夫なんだろうな?」


 カレンさんはラヴァルリザードに食べられそうになったところを助けたヒートモスのこと指摘する。


「大丈夫です。とりあえず、あいつから離れた所に降ろしてもらえると……」


「わかった」


 俺をお姫様抱っこしながら大岩に着地しては飛びを繰り返してラヴァルリザードからかなり距離が離れた所で降ろしてくれた。



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