第113話
街の外は草木は一切なく、大きい岩がゴロゴロ転がっている。そして、何よりも凄いのは溶岩の川だ。色んな所の地表から溶岩が溢れて合流したんだろう。落ちたら即死だろうな。試さないけど。
外に出てすぐに俺はカレンさんに伝える。
「カレンさん、コガネたちが動けるか確認したいからちょっと待ってもらってもいいですか? そんな時間は掛からないので」
「わかった」
「ありがとうございます」
カレンさんにお礼を言ってからコガネとシロガネとクモガネとクロガネの四体を呼び出した。
ビートルワームたちはまだ幼虫だから今は呼び出さないけど、進化したら試そう。
「シュ?」
「ビー?」
しばらく観察したけどコガネはなんともないな、シロガネも平気そう。
「キシャ!」
クロガネは元気に穴を掘ってるな。溶岩の所に当たらければいいけど。
「キュゥ……」
クモガネは飛ぶ気力も起きないのか地面にペタリとしている。やっぱりクモガネは無理だったか。
俺はクモガネを抱き上げると嬉しそうに頭をすりすりしてくる。
「ごめんなクモガネ、しばらくこのエリアにいるから戻すな」
「キュゥ……!」
クモガネの体かわ光りの粒子になると、右手の紋章から黒い球体が一個現れ、クモガネが吸い込まれ水色に変わる。
武器をしまった状態で【共鳴】を使うと勝手に黒い球体が出て来る仕様なんだな、初めて知った。
『僕、平気だから一緒にいる!』
「仕方ないな。そのままでもいいけど、俺がいいって言うまで翅は展開するなよ。てか、そん中は平気なのか?」
『うん、暑くないよ』
「そうなんだ」
「シュ!」
「ビー!」
コガネとシロガネも【共鳴】を使い出し、新たに紋章から黒い球体が二個現れ、二体は吸い込まれた。
好き勝手にやりたい放題だな、まったく……
「キシャ?」
戻って来たクロガネはコガネたちのことを探しているのかキョロキョロしだす。
「クロガネも【共鳴】を使っていいからな」
そう聞くとクロガネも【共鳴】を使った。
俺の周りに黄色に白色、水色に黒色の球体が飛び回る。
『この中快適〜暑いの平気だけど、外暑過ぎ……』
『コガネ、コガネ! 重大なことに気付いたんだけど!』
『……なんだよシロガネ』
『この中だと食べ物連れていけないよ!』
『なんだって!?』
コガネとシロガネがどうでもいいことにショックを受けている。
『クモガネ、大丈夫なの?』
『うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうクロガネ』
『なら、いいけど』
クモガネとクロガネの会話は微笑ましいな。
「どうかしたのか?」
「え、あ、なんでもないです。確認も終わったので先を急ぎましょう」
「わかった」
カレンさんの後をついていき目的地の場所に向かった。
しばらく火山エリアを歩くと、小柄で犬に似た頭部を持つ人型モンスターのコボルトの群れに遭遇してしまう。
「カレンさん、俺が気を引き――」
俺が言い終わる前にカレンさんは、俺の横を通りコボルトたちに駆け出した。
平均レベル30ぐらいのコボルトの群れはカレンさんの圧倒的な力により一瞬で消滅した。
強すぎだろうカレンさん……てか、俺なんもやってない。
『ハルナ、なんもしてないねー』
コガネの言葉が胸に突き刺さる。
「言わないでくれよコガネ……」
俺はそこら辺に散っているコボルトの素材の回収した。
そこから何度かモンスターの群れに遭遇するも、全部カレンさんが一人で倒す。俺はただ、素材を回収するだけだった。楽でいいんだけど、俺が攻撃してないからなのか経験値が入ってこないんだよな。もしくは、パワーレベリングが出来ない仕様なのかも。まぁどっちでも良いけど。
大分歩いた俺とカレンさんは見晴らしが良いところで小休止することにした。
俺は座りながら黒い雲が広がっている空を見上げる。
「どうかしたのか? なんか表情が暗いぞ?」
「なんでもないですよカレンさん。それよりも目的地まではまだ距離はある感じで?」
「三十分ぐらい歩けば着くぞ」
「了解です。あ、そう言えば見てもらいたいって言ってたモンスターってどんなのか聞いてなかった」
「そうだったな。サラマンダーと言う火のトカゲみたいなモンスターだ。私はこう見えて爬虫類好きなんだ」
「へぇーそうなんだ。敵対はしてないんですよね?」
「勿論だ、寝ているからな」
「寝ている?」
カレンさんは頷く。
「私が近づいても目覚めないんだ。これは敵対してないに当て嵌まるだろう?」
「うーん、微妙な所な気がするけど」
「とりあえず見て欲しいんだ」
「分かりました。とりあえず、行きましょうか」
立ち上がった俺とカレンさんは 三十分ぐらい歩きサラマンダーの寝床に到着する。
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